いつか、韓国人の友だちの母親が日本に来た折り、私はずいぶんと説教をされたことがある。彼女は「女はなんといってもよい男にめぐり遇《あ》い、子供を産んで暮らすのが一番幸福なのよ。それなのにあなたは……」と言うのである。もちろん、この言い方は韓国だけに特有なことではない。しかし、彼女の言う「よい男」とは、明らかに権力かお金のある男性を意味しているのである。
また彼女は、「男も大事だけど、子供にはかなわないわ、子供はつくらなくちゃ」とも言う。私が半分冗談に、「日本に来て毎日が忙しくて子供をつくっている暇《ひま》なんかないですよ」と言うと、「あなた、呪《のろ》われたわね」と言う。そして、「女が三十を過ぎれば、子供がいて当然じゃない、見ればお金もなさそうだし……」と言う。そのとおり、私には残せるものが何もない。
この「残せるものがない」ために、私が韓国に帰れないのも事実だ。この三年ほど、私は韓国に行くことがあっても実家には帰ったことがない。家族に対して私は親孝行のできない罪人であるし、帰れば「三十歳を過ぎて結婚もせずに子供もいないなんて、どこかおかしいんじゃないか」と、周囲の人から私も家族も白い目で見られることになる。そのため、とても帰る気分になれないのだ。たぶん、私がわが子を抱いて韓国の土を踏むときでなければ、決して実家に帰ることはないだろう。甥《おい》や姪《めい》の可愛《かわい》い姿を見たいものの、私はやはり実家には帰れないでいる。
他の女たちがお金を儲《もう》けたり子供を産んだりする間、私は勉強をしたのである。そうである以上、勉強をした何かを残したいと思う。が、たとえ私がたくさんの知識を残したとしても、故郷韓国では、子供とお金を残すことにはどうしてもかなうことができないのである。私は、一日一日を忙しく暮らす人生に大きな不満もないのに、故郷では人生の大きな失敗者になっているのだ。
また彼女は、「男も大事だけど、子供にはかなわないわ、子供はつくらなくちゃ」とも言う。私が半分冗談に、「日本に来て毎日が忙しくて子供をつくっている暇《ひま》なんかないですよ」と言うと、「あなた、呪《のろ》われたわね」と言う。そして、「女が三十を過ぎれば、子供がいて当然じゃない、見ればお金もなさそうだし……」と言う。そのとおり、私には残せるものが何もない。
この「残せるものがない」ために、私が韓国に帰れないのも事実だ。この三年ほど、私は韓国に行くことがあっても実家には帰ったことがない。家族に対して私は親孝行のできない罪人であるし、帰れば「三十歳を過ぎて結婚もせずに子供もいないなんて、どこかおかしいんじゃないか」と、周囲の人から私も家族も白い目で見られることになる。そのため、とても帰る気分になれないのだ。たぶん、私がわが子を抱いて韓国の土を踏むときでなければ、決して実家に帰ることはないだろう。甥《おい》や姪《めい》の可愛《かわい》い姿を見たいものの、私はやはり実家には帰れないでいる。
他の女たちがお金を儲《もう》けたり子供を産んだりする間、私は勉強をしたのである。そうである以上、勉強をした何かを残したいと思う。が、たとえ私がたくさんの知識を残したとしても、故郷韓国では、子供とお金を残すことにはどうしてもかなうことができないのである。私は、一日一日を忙しく暮らす人生に大きな不満もないのに、故郷では人生の大きな失敗者になっているのだ。