韓国人ホステスは決してキーセンではない。しかし、キーセンの伝統を知らなければ、韓国人ホステスたちがなぜ続々と日本へやって来るのかも、また彼女たちの多くがなぜ日本に永住したいと願っているのかも、ついにわかってもらえないだろう。が、問題はさらに複雑である。なぜなら、多くの日本人がキーセンをまったく誤解しているからにほかならない。
それにしても、キーセンをめぐる問題は、深く韓国の女たちの現在に、さらには韓国文化そのもののあり方にかかわってくる。そのため、後の章で詳しく論じようと思う。
この章では、まずは日本で働く韓国人ホステスの生き方、考え方、心情などについて、私なりの見聞をご紹介し、それを通して、韓国の女性の抱える切実な問題とは何か、だれも語ろうとしない韓国の憂うべき問題とは何かをお伝えしていこうと思う。そこではとくに、日本が韓国を映し、韓国が日本を映すという、合わせ鏡の関係から見えてくるものを大切にしていきたい。
さて、アジア諸国の女たちが働く代表的な酒場が、新宿歌《か》舞《ぶ》伎《き》町《ちよう》や赤坂の韓国クラブであり、台湾クラブである。が、同じアジアの女が働く職場でも、両者の性格はかなり異なっている。
たとえば、台湾クラブでは、台湾女性だけではなく他の東南アジアの女たちがたくさん働いているが、給料にそれほどの差はない。韓国クラブでも、韓国人ホステスが足りなければフィリピン人ホステスを雇うことがあるけれども、彼女たちの給料は韓国人ホステスの半分以下が普通だ。韓国人ホステスの給料は一日一万八〇〇〇円から三万円、フィリピン人ホステスは一万円が相場といったところ。こうした差をつけるところにも、韓国女性特有の性格がのぞいている。
また韓国人ホステスたちは、台湾クラブの女たちは誘われればすぐにホテルに行くけれども、韓国クラブの女はそうではない、そこに自分たちの価値があると強調する。そして、東南アジアのホステスたちは「自分を安売りする、まるで考えのない人たち」と無視するのが常だ。つまり、他の東南アジアのホステスたちは、同業者ではあってもなんら競合し合うライバルではないというポーズをとるのである。ようするに、一段も二段もランクが違うと言いたいわけなのだ。
女に必要なことは自分を高く見せること——。これが韓国人ホステスたちのモットーである。そのために格づけにこだわり、投資をおしむことなく、ミンクのコートを着、高級マンションに住まう。電車やバスは庶民の乗り物と決めてかかり、無理をしてでもタクシーに乗る。もし彼女たちの店で定期券でも見せようものなら、それだけで軽《けい》蔑《べつ》の対象になるかもしれない。韓国で高級酒場に来るような人は、電車の乗り方など知らぬ人ばかりなのだ。
そういうわけで、どうやらお金のない客は、韓国クラブに行く資格がないということになりそうだ。実際、韓国クラブの常連にはお金持ちが多いし、お金持ちでなくては韓国人ホステスを愛人にすることができないのも事実だ。
また、一、二回くどかれたくらいでは男について行くなというのが、彼女らの鉄則である。くどくのが難しいというイメージを与えることで、自分たちの価値を高めようとするのだろうが、そこに韓国クラブの人気があるとも言われている。日本人男性には、そうした彼女たちの優越性保持の性情が、かえって上品なふるまいと映るところがあるのかもしれない。
それにしても、キーセンをめぐる問題は、深く韓国の女たちの現在に、さらには韓国文化そのもののあり方にかかわってくる。そのため、後の章で詳しく論じようと思う。
この章では、まずは日本で働く韓国人ホステスの生き方、考え方、心情などについて、私なりの見聞をご紹介し、それを通して、韓国の女性の抱える切実な問題とは何か、だれも語ろうとしない韓国の憂うべき問題とは何かをお伝えしていこうと思う。そこではとくに、日本が韓国を映し、韓国が日本を映すという、合わせ鏡の関係から見えてくるものを大切にしていきたい。
さて、アジア諸国の女たちが働く代表的な酒場が、新宿歌《か》舞《ぶ》伎《き》町《ちよう》や赤坂の韓国クラブであり、台湾クラブである。が、同じアジアの女が働く職場でも、両者の性格はかなり異なっている。
たとえば、台湾クラブでは、台湾女性だけではなく他の東南アジアの女たちがたくさん働いているが、給料にそれほどの差はない。韓国クラブでも、韓国人ホステスが足りなければフィリピン人ホステスを雇うことがあるけれども、彼女たちの給料は韓国人ホステスの半分以下が普通だ。韓国人ホステスの給料は一日一万八〇〇〇円から三万円、フィリピン人ホステスは一万円が相場といったところ。こうした差をつけるところにも、韓国女性特有の性格がのぞいている。
また韓国人ホステスたちは、台湾クラブの女たちは誘われればすぐにホテルに行くけれども、韓国クラブの女はそうではない、そこに自分たちの価値があると強調する。そして、東南アジアのホステスたちは「自分を安売りする、まるで考えのない人たち」と無視するのが常だ。つまり、他の東南アジアのホステスたちは、同業者ではあってもなんら競合し合うライバルではないというポーズをとるのである。ようするに、一段も二段もランクが違うと言いたいわけなのだ。
女に必要なことは自分を高く見せること——。これが韓国人ホステスたちのモットーである。そのために格づけにこだわり、投資をおしむことなく、ミンクのコートを着、高級マンションに住まう。電車やバスは庶民の乗り物と決めてかかり、無理をしてでもタクシーに乗る。もし彼女たちの店で定期券でも見せようものなら、それだけで軽《けい》蔑《べつ》の対象になるかもしれない。韓国で高級酒場に来るような人は、電車の乗り方など知らぬ人ばかりなのだ。
そういうわけで、どうやらお金のない客は、韓国クラブに行く資格がないということになりそうだ。実際、韓国クラブの常連にはお金持ちが多いし、お金持ちでなくては韓国人ホステスを愛人にすることができないのも事実だ。
また、一、二回くどかれたくらいでは男について行くなというのが、彼女らの鉄則である。くどくのが難しいというイメージを与えることで、自分たちの価値を高めようとするのだろうが、そこに韓国クラブの人気があるとも言われている。日本人男性には、そうした彼女たちの優越性保持の性情が、かえって上品なふるまいと映るところがあるのかもしれない。