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スカートの風19

时间: 2020-07-26    进入日语论坛
核心提示:この女たちは韓国では暮らしていけない? とにかく酷《むご》い話なのである。そしてとても悲しい話だ。しかし、彼女たちと話を
(单词翻译:双击或拖选)
この女たちは韓国では暮らしていけない?

 とにかく酷《むご》い話なのである。そしてとても悲しい話だ。しかし、彼女たちと話をすることによって、悲しみはさらに私の心の底に深いしこりを形づくった。それは、当の女たちが口々にブローカーへの感謝の言葉を述べたてるからだった。
はじめてそういう話を聞いたときの私のショックは大きかった。
「一銭のお金もないのにちゃんと日本に来れるようにしてくれたのよ。魔法みたいでしょう? 面倒な手続きはいらないし、働くお店まで用意してくれるんだから」
あまりにも明るい顔。その顔を見ているうちにだんだん目頭が熱くなってくる。そんな感情を振り切りたかったからだろうか、私は思わず大きな声で叫んでいた。
「だって、給料の半分以上がブローカーの方へいっちゃうのよ!」
「給料? そんなの最初からあてにしてなかったのよ。最低限のものがあればと思っていたわ。それにしてはけっこう貰えてるし。とにかく、店のお客さんのなかからお金持ちの男の人をつかまえてね、うまくやっていくわ」
ブローカーたちが韓国女性の心理にいかに精通しているかを、またそれを最大限に利用しているだろうことを知らされて、私は問題の深さにたじろがざるを得なかった。
この、私にはじめに話を聞かせてくれた女性は、来日三カ月後にブローカーが検挙されて不法就労で摘発される危険が迫ったため、泣く泣く韓国へ戻って行った。が、彼女の初心はなまやさしいものではなかったのだろう。彼女は観光ビザで再び来日し、日本のブローカーの斡《あつ》旋《せん》で結婚ビザを手に入れ、いまも日本にとどまっている。
彼女もそうだったが、これら韓国の女たちの日本渡航の動機は、いまでは一家の生活を支えるなど、貧困からくるものではなくなっている。日本でずっと生活すること、それを目指して来る女たちがほとんどなのだ。
あるとき、私は知人を介して韓国人のブローカーに会うチャンスを得た。その男は長いあいだ、韓国と日本を往復しては女たちの上前をはねて来たベテランである。すでに韓国にビルや土地などの財産を所有する成功者なのだが、まだまだこの仕事は続けていくと言う。
落ち着いた風情を見せる老紳士。こんな人がと思うと、怒りが私のなかでぎゅっと凝縮して言葉となった。
「もう充分でしょう? そんなに儲《もう》けて。それなのになぜ、まだ飽きずに女たちを日本へ送りこもうとするんですか」
男の目つきが一瞬変わった。細めた目で私を睨《にら》みかえし、すぐに緊張を解いて笑みをたたえ、ゆっくりと口を開く。
「いいですか、私がこの仕事をやめても、ほかのだれかがとって代わるだけでね、この仕事そのものがなくなることはない。私がいるからあの女たちがいるんじゃないんだ。あの女たちがいるから私がいるんですよ。女たちが私を必要としているんですよ。とくに私のようなベテランは彼女たちにとってはなくてはならない存在でね、私がいなくてあの女たちはどうやって暮らしていけると思いますか?」
そして彼は最後にきっぱりとこう言った。韓国ではこの女たちは暮らしていけない——と。
私は認めるつもりはまったくないにせよ、彼の言葉の意味はよくわかっていた。そして、それを日本人にわかるように伝えることがそう簡単ではないことも。そもそも、このことをきちんと日本人に伝えたいというのが、この本を書いた動機の一つでもある。
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