韓国の社会では、いまだに女性の処女性がことのほか重んじられている。それはまた一方で、家の観念が固く守られていることでもある。したがって、いわゆる「戸籍の汚れ」は致命的な問題となってくる。こうした問題は、階層が上でも下でも、職業が大企業のOLだろうがホステスだろうが変わるものではない。たとえば、離婚歴のある若い女性が同世代の若い男性と再婚できる見込みはほとんどないと言ってよいだろう。
こうしたことがあるため、学生ビザで来日してホステスとして働く女たちのなかには、帰国後の体面を考えて偽装結婚には持ち込まず、できるだけ長期滞在が可能な学生ビザを手に入れて来日する者も多い。かなり入手が困難ではあるが、それでも、と考える女たちもいる。
一方、一刻も早く来日して、てっとり早く長期滞在に持ち込むことを第一に考える女たちは多い。そうした要求に対しては、観光ビザに偽装結婚の斡《あつ》旋《せん》とその後の結婚ビザ取得がパックされたコースがある。戸籍よりは実利を優先する女たちのコースであり、ほとんど帰国の意志を持たない女たちのためのコースでもある。
このコースでは、一人のブローカーがすべてを手配する場合と、渡航の処理と偽装結婚の処理とを別々のブローカーが分担する場合がある。いずれにしても、このコースが最近の最もメジャーな日本滞在への道となっている。この市場獲得のため、多くのブローカーにセミプロのブローカーが加わり、激しい闘いが繰り広げられている。
このコースの相場は日本円で約二五〇万円から二七〇万円ほど。セミプロの業者だとこれが一六〇万円くらいになる。ただ、セミプロの業者は安いかわりに偽装結婚の成功率は低いと言われる。
偽装結婚に応じる日本の男性は、離婚経験のある中年以上の、お金に困っている人がほとんどだ。しかし彼らのなかには、必要書類(在職証明書や納税証明書など)をそろえる能力がなかったり、入国管理局の質問に口裏を合わせることができなかったり、また途中で投げ出してしまうなどの、信頼度の低い者がきわめて多い。しかも、成功しなかった場合でもセミプロのブローカーは、何らの責任を負わずにお金だけはそのまま手にするのである。もちろん、アフター・ケアの義務もない。
私はいろいろな女たちから体験談を聞いているが、ここでは、セミプロと知りながらあるブローカーに一六〇万円で結婚相手の斡《あつ》旋《せん》を依頼した女性の話をご紹介しておこう。彼女の相手の男性は、運が悪いことに必要な書類を用意できない人物だった。そのために、結婚ビザの手続きが一向に進まず日が経《た》ってしまっていた。彼女はそこで、別のブローカーにさらにお金を払って書類の偽造を依頼した。そして、観光ビザが切れるギリギリのところでようやく手続きを終え、結婚ビザをものにしたのである。
彼女は結婚ビザを手にした日に私のところへ電話をしてきた。そのときの彼女のはしゃぎぶり、笑い声。やはり私は「よかったわね」と言うしかなかった。
彼女の結婚ビザ入手の顛《てん》末《まつ》を聞いて、あるホステスが言った。
「大事なことでお金を出し惜しむから苦労することになるのよ」
プロのブローカーの場合では成功率は高いが金額も張る。相場は先に述べたように二五〇万円から二七〇万円ほどだが、最初の契約の時点で五〇万円を支払い、結婚ビザが入手できた時点でさらに五〇万円を、そして残りを月々五万円ずつ支払うという方式だ。また、途中で相手の男性との関係がこじれるなどして入籍がうまくいかなければ、契約は無効となるので、こうむる損害はセミプロのそれと比較すれば小さいのだ。
ブローカーは結婚相手の男性には七〇万円を支払い、それで三年間の婚姻関係の保障をとりつける。したがって、彼女たちはその間にほんとうの恋人を見つけるための努力にいそしむことになる。結婚ビザはだいたい六カ月単位で更新される。そのときどきの査問にひっかからなければ更新が進み、五年が過ぎれば永住権を手に入れることができるのである。
こうしたことがあるため、学生ビザで来日してホステスとして働く女たちのなかには、帰国後の体面を考えて偽装結婚には持ち込まず、できるだけ長期滞在が可能な学生ビザを手に入れて来日する者も多い。かなり入手が困難ではあるが、それでも、と考える女たちもいる。
一方、一刻も早く来日して、てっとり早く長期滞在に持ち込むことを第一に考える女たちは多い。そうした要求に対しては、観光ビザに偽装結婚の斡《あつ》旋《せん》とその後の結婚ビザ取得がパックされたコースがある。戸籍よりは実利を優先する女たちのコースであり、ほとんど帰国の意志を持たない女たちのためのコースでもある。
このコースでは、一人のブローカーがすべてを手配する場合と、渡航の処理と偽装結婚の処理とを別々のブローカーが分担する場合がある。いずれにしても、このコースが最近の最もメジャーな日本滞在への道となっている。この市場獲得のため、多くのブローカーにセミプロのブローカーが加わり、激しい闘いが繰り広げられている。
このコースの相場は日本円で約二五〇万円から二七〇万円ほど。セミプロの業者だとこれが一六〇万円くらいになる。ただ、セミプロの業者は安いかわりに偽装結婚の成功率は低いと言われる。
偽装結婚に応じる日本の男性は、離婚経験のある中年以上の、お金に困っている人がほとんどだ。しかし彼らのなかには、必要書類(在職証明書や納税証明書など)をそろえる能力がなかったり、入国管理局の質問に口裏を合わせることができなかったり、また途中で投げ出してしまうなどの、信頼度の低い者がきわめて多い。しかも、成功しなかった場合でもセミプロのブローカーは、何らの責任を負わずにお金だけはそのまま手にするのである。もちろん、アフター・ケアの義務もない。
私はいろいろな女たちから体験談を聞いているが、ここでは、セミプロと知りながらあるブローカーに一六〇万円で結婚相手の斡《あつ》旋《せん》を依頼した女性の話をご紹介しておこう。彼女の相手の男性は、運が悪いことに必要な書類を用意できない人物だった。そのために、結婚ビザの手続きが一向に進まず日が経《た》ってしまっていた。彼女はそこで、別のブローカーにさらにお金を払って書類の偽造を依頼した。そして、観光ビザが切れるギリギリのところでようやく手続きを終え、結婚ビザをものにしたのである。
彼女は結婚ビザを手にした日に私のところへ電話をしてきた。そのときの彼女のはしゃぎぶり、笑い声。やはり私は「よかったわね」と言うしかなかった。
彼女の結婚ビザ入手の顛《てん》末《まつ》を聞いて、あるホステスが言った。
「大事なことでお金を出し惜しむから苦労することになるのよ」
プロのブローカーの場合では成功率は高いが金額も張る。相場は先に述べたように二五〇万円から二七〇万円ほどだが、最初の契約の時点で五〇万円を支払い、結婚ビザが入手できた時点でさらに五〇万円を、そして残りを月々五万円ずつ支払うという方式だ。また、途中で相手の男性との関係がこじれるなどして入籍がうまくいかなければ、契約は無効となるので、こうむる損害はセミプロのそれと比較すれば小さいのだ。
ブローカーは結婚相手の男性には七〇万円を支払い、それで三年間の婚姻関係の保障をとりつける。したがって、彼女たちはその間にほんとうの恋人を見つけるための努力にいそしむことになる。結婚ビザはだいたい六カ月単位で更新される。そのときどきの査問にひっかからなければ更新が進み、五年が過ぎれば永住権を手に入れることができるのである。