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スカートの風23

时间: 2020-07-26    进入日语论坛
核心提示:不法就労摘発の現場から 何人かのホステスたちと雑談をしているとき、一人のホステスが一九八九年に受けた不法就労摘発の体験を
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不法就労摘発の現場から

 何人かのホステスたちと雑談をしているとき、一人のホステスが一九八九年に受けた不法就労摘発の体験を話しはじめた。他のホステスたちはなんべんも聞かされているのだが、また聞きたいと身を乗り出してくる。
彼女が赤坂のある店に勤めていたときに、入管の局員が不法就労の抜き打ち摘発を行なったのだ。店のホステス三四人に対して局員は二四人。彼らは店に入るやすぐに要所を固めて彼女たちに向かう。女たちは厨《ちゆう》房《ぼう》へトイレへ、はたまた天井裏へと隠れ場所を求めて散り、あるいは客をたてにしてでも逃れようとしたのだが、間もなく軒並みの連行となってしまった。その騒乱のさなか、話をしている当の彼女はトイレに逃げ込んでいた。やがて局員たちが化粧室にやって来るや、トイレのドアを一枚一枚開けはじめた。すぐに彼女の潜むトイレのドアに手がかかり、乱暴に開かれる寸前、彼女はさっとドアの後ろ側にまわりこむや、そのまま微動だにせずじっと息をこらした。
こうして、その店でただ一人、彼女だけが見つかることなく難を逃れることができたのだという。
黙って聞いていたホステスたちは、話が終わるや私の方を向いて「奇《き》蹟《せき》的よねー」「すごいでしょう」と、彼女の体験がいかにまれなことかを強調するのだった。
「ほんとに一瞬のことだったの。でも、ものすごく長い時間がたったような気がするのね、ああいうときって。このたった一枚のドアのあっちに入管の人がいる、すぐに見つけられちゃうだろう、ああ、これで私の人生も終わりなんだって思った。ほんの何秒かだったんだけど、その間に家族の顔や友達の顔が次から次へと浮かんでくるの。私、あのときはじめて神さまにお祈りしたわ。心のなかで、そっとね」
ここでやっと皆の緊張の糸が切れてまた雑談がはじまる。私も思わずフッとため息をついていた。この人ごとではないドラマは、あたかも伝承説話であるかのように、機会あるごとに彼女たちの間で話されているようである。
入管による不法就労摘発の多くが、韓国人クラブに出入りする者の告発によっている。この話の場合も、以前に解雇されたホステスが腹いせでやった告発に端を発したものだったという。
韓国人はしばしば闘争的だと言われる。確かに激しい気性をもっているのはそのとおりだが、その反面では、力のある者や目上の者に対してきわめて従順な心を示すところがある。権力に服従することは恥《ち》辱《じよく》ではなく美徳だという教育を素直に受け入れる素地が、伝統的な生活倫理によって出来上がっているのである。
したがって、韓国人は他の外国人のように、観光ビザが切れてもそのまま不法に居座って滞在しようとはまず考えない。お金とエネルギーを駆使してでも、なんとか合法的な滞在の条件を得ようとするのだ。そこにブローカーがつけいるのである。
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