いま、日本で働く韓国人ホステスの数はある飽和点を越えているように思える。愛人獲得競争の激しさには目に余るものがあり、愛人をとった、とられたのトラブルはこのところ日常茶飯事となっている。限られたパイの分け合いを考えざるを得ない時代がやって来ているのだが、ホステスたちの間にそんな自覚は生まれていない。
日本人が韓国人ホステスに慣れて来たために、また彼女たちの数が増えて来たために、もはや彼女たちが稀《き》少《しよう》な「貴姫」でいることができなくなっているのだ。したがって、ことさら彼女たちに大金を注《つ》ぎ込む日本人も少なくなった。そのため、一人の愛人に囲われての生活が難しくなり、最近では四、五人の男たちの間をうまく立ち回らなくては、彼女たちの常識とするマンションでの贅《ぜい》沢《たく》な生活がおぼつかなくなっている。
そうしたこととともに、店のノルマが厳しくなっている。女たちには月六回の同伴出勤が強いられ、達成できなければ給料から相応分を差し引くことがあたりまえになってきてもいる。
すでに述べたように、韓国人ホステスは一夜限りの売春をしないところに誇りもあったし、またそれをステイタスとして自らを高く売ることができていた。しかし、店から要求される厳しいノルマを達成するために、仕方なく身体を男にあずけ、同伴出勤に協力してもらうという事態が出現するようになってしまった。一人の男につくす律儀な韓国の女のイメージが崩壊しかかっている。
これは、「まあ聞いてよ」と聞かされたあるホステスのボヤキである。
「売春婦じゃないんだから、ホテルに行くのは嫌なの。だから私の部屋でデートするんだけど、一つの部屋で五人の男と代わる代わるでしょ、そこでカチ合わないようにするのが大変なの。そう言えばこの前ね、曜日を間違えて夜中に花束を抱えて来た男がいるの。だって私と別の男とのデートの真っ最中のところへ来たのよ。これにはびっくりして、私も覚悟を決めたんだけど、日本の男の人ってどうしてなのかな、喧《けん》嘩《か》とか決闘とかってことにはならないのね。またあとで殴《なぐ》られたり怒られたりすることもないの。その人はね、別の男がいると知って、驚いて帰っちゃって、それっきり連絡してこないのよ。ま、また新しい恋人を見つけなくちゃね」
決して売春婦ではないというプライドが彼女を支えている。が、現実はだれが見ても売春行為そのものである。それでもなお、彼女たちはいまだにあどけなくも明るい。
日本人が韓国人ホステスに慣れて来たために、また彼女たちの数が増えて来たために、もはや彼女たちが稀《き》少《しよう》な「貴姫」でいることができなくなっているのだ。したがって、ことさら彼女たちに大金を注《つ》ぎ込む日本人も少なくなった。そのため、一人の愛人に囲われての生活が難しくなり、最近では四、五人の男たちの間をうまく立ち回らなくては、彼女たちの常識とするマンションでの贅《ぜい》沢《たく》な生活がおぼつかなくなっている。
そうしたこととともに、店のノルマが厳しくなっている。女たちには月六回の同伴出勤が強いられ、達成できなければ給料から相応分を差し引くことがあたりまえになってきてもいる。
すでに述べたように、韓国人ホステスは一夜限りの売春をしないところに誇りもあったし、またそれをステイタスとして自らを高く売ることができていた。しかし、店から要求される厳しいノルマを達成するために、仕方なく身体を男にあずけ、同伴出勤に協力してもらうという事態が出現するようになってしまった。一人の男につくす律儀な韓国の女のイメージが崩壊しかかっている。
これは、「まあ聞いてよ」と聞かされたあるホステスのボヤキである。
「売春婦じゃないんだから、ホテルに行くのは嫌なの。だから私の部屋でデートするんだけど、一つの部屋で五人の男と代わる代わるでしょ、そこでカチ合わないようにするのが大変なの。そう言えばこの前ね、曜日を間違えて夜中に花束を抱えて来た男がいるの。だって私と別の男とのデートの真っ最中のところへ来たのよ。これにはびっくりして、私も覚悟を決めたんだけど、日本の男の人ってどうしてなのかな、喧《けん》嘩《か》とか決闘とかってことにはならないのね。またあとで殴《なぐ》られたり怒られたりすることもないの。その人はね、別の男がいると知って、驚いて帰っちゃって、それっきり連絡してこないのよ。ま、また新しい恋人を見つけなくちゃね」
決して売春婦ではないというプライドが彼女を支えている。が、現実はだれが見ても売春行為そのものである。それでもなお、彼女たちはいまだにあどけなくも明るい。