ただ、最近の韓国の十代の女のなかには、確かに「新人類」が登場して来ている。「お母さんのようには絶対なりたくない」と考える女たちが、わずかながら顔を見せはじめている。しかし、韓国の社会にはいまだにそうした女たちを受け入れる器、つまり女が経済的に自立できるだけの基盤が育っていない。そのため、せっかく育った彼女たちの「母親のようには……」の考え方の延長に、ホステスや売春婦への道が待ち構えるしかないことにもなるのである。
韓国に多い「ネンネ」な少女を売春行為に引き込むには、すでにその道に入っている女たちに、自分の後輩や友だちを、ブティックや美容院の店員にならないかと勧めさせる方法がある。それらの店は、裏で酒場や売春宿とつながっている。店員にさせてから「落とす」までのすべてを女たちに任せるのである。
私はある日、日本からやって来た友だちと二人で、ソウルで服を買おうとあちこちの店を物色して歩いていた。ひととおり見てからまた最初のブティックにもどったとき、私は店の雰囲気がさっきとはまるで違っていることに気がついた。小さい店にしてはずいぶんたくさんの店員がいたのだが、それが中年の女一人だけになっているのだ。
奥からチラチラもれ聞こえてくる韓国語から、私はその理由を察した。
「急がなきゃだめよ、日本からの団体客はもうホテルに着いてるんだから……」
「だって私、今日は出られないわ、あの人が来る日だからここで待ってなきゃ……」
ざわざわとした数人の女たちのおしゃべりのなかに、あわただしげな口調で言い争う声が聞こえている。
明らかに、この店は裏で女たちに春を売らせているのだ。まだプロの売春婦になることを躊《ちゆう》躇《ちよ》している店の売り子たちが、アルバイトに出かけるところだったのである。
何も知らない日本人の友だちは、盛んにブラウスやスカーフを身体にあてては鏡をのぞきこんでいる。その間、店の奥からさっきとはうって変わった厚化粧をした女が出てきて、店の中年女に何事か耳打ちをし、さっと奥へともどる。やがて彼女たちは裏から出かけて行ったようだったが、私はなにやら恥ずかしくて友だちにそのことは黙っていた。彼女が韓国語を知らなくてよかったと思った。
さまざまな経路があるにせよ、彼女たちの行き着く先は酒場のホステスか、あるいは「ママさんハウス」と呼ばれる外国人専門の売春宿である。同じように男に身体を売ってお金を稼ぐには違いないのだが、ホステスたちは決してそうは思わず、自分たちは売春婦とは明らかに違うのだという誇りをもっている。
いずれにしても、たとえば日本人の男が相手ならば、一晩三万円が相場というところ。ママさんハウスならば、そこから二万円ほどを宿に納めなければならないが、残った一万円にチップをあわせれば、たった一日で、少なくとも工場での一カ月分の給料相当のお金を、優に手にすることができるのだ。
韓国に多い「ネンネ」な少女を売春行為に引き込むには、すでにその道に入っている女たちに、自分の後輩や友だちを、ブティックや美容院の店員にならないかと勧めさせる方法がある。それらの店は、裏で酒場や売春宿とつながっている。店員にさせてから「落とす」までのすべてを女たちに任せるのである。
私はある日、日本からやって来た友だちと二人で、ソウルで服を買おうとあちこちの店を物色して歩いていた。ひととおり見てからまた最初のブティックにもどったとき、私は店の雰囲気がさっきとはまるで違っていることに気がついた。小さい店にしてはずいぶんたくさんの店員がいたのだが、それが中年の女一人だけになっているのだ。
奥からチラチラもれ聞こえてくる韓国語から、私はその理由を察した。
「急がなきゃだめよ、日本からの団体客はもうホテルに着いてるんだから……」
「だって私、今日は出られないわ、あの人が来る日だからここで待ってなきゃ……」
ざわざわとした数人の女たちのおしゃべりのなかに、あわただしげな口調で言い争う声が聞こえている。
明らかに、この店は裏で女たちに春を売らせているのだ。まだプロの売春婦になることを躊《ちゆう》躇《ちよ》している店の売り子たちが、アルバイトに出かけるところだったのである。
何も知らない日本人の友だちは、盛んにブラウスやスカーフを身体にあてては鏡をのぞきこんでいる。その間、店の奥からさっきとはうって変わった厚化粧をした女が出てきて、店の中年女に何事か耳打ちをし、さっと奥へともどる。やがて彼女たちは裏から出かけて行ったようだったが、私はなにやら恥ずかしくて友だちにそのことは黙っていた。彼女が韓国語を知らなくてよかったと思った。
さまざまな経路があるにせよ、彼女たちの行き着く先は酒場のホステスか、あるいは「ママさんハウス」と呼ばれる外国人専門の売春宿である。同じように男に身体を売ってお金を稼ぐには違いないのだが、ホステスたちは決してそうは思わず、自分たちは売春婦とは明らかに違うのだという誇りをもっている。
いずれにしても、たとえば日本人の男が相手ならば、一晩三万円が相場というところ。ママさんハウスならば、そこから二万円ほどを宿に納めなければならないが、残った一万円にチップをあわせれば、たった一日で、少なくとも工場での一カ月分の給料相当のお金を、優に手にすることができるのだ。