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スカートの風50

时间: 2020-07-26    进入日语论坛
核心提示:チョンノサムガでの再会 チョンノサムガで聞き回り、やっとのことでヨンスギのいるママさんハウスの所在をつきとめた。そこも、
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チョンノサムガでの再会

 チョンノサムガで聞き回り、やっとのことでヨンスギのいるママさんハウスの所在をつきとめた。そこも、他のママさんハウスと同じように、最近では珍しい瓦《かわら》葺《ぶ》きの家ながらも、ごく一般の平穏な家庭を装っていた。家をのぞくと、入り口近くの部屋に五、六人の女たちが集まって花札をやっており、そのなかにヨンスギがいた。
ヨンスギは私の呼ぶ声で顔をあげると、びっくりした顔で立ち上がり、私の方に飛んで来るや、私を抱きしめてワアワアと声を出して泣きはじめた。私も同じように声をあげて泣いた。しばらくそうして泣いたあと、私たちはヨンスギの部屋に入り、これまでの五年ほどの間のことを互いに話しあった。
不幸のはじまりは彼女の夫の会社が火災にあい、それがきっかけで倒産してしまったことだった。韓国の会社のほとんどが、しっかりした財政的な基盤を持っていないため、たとえ有数の大手会社であっても、ちょっとしたきっかけで簡単に倒産することは珍しくない。そう言えば、男の会社の倒産もまた、女たちの運命を大きく左右する動力のひとつだった。
彼女の夫は失業したまま、なかなか次の仕事が見つからなかった。そのためにヤケクソになった男に、お決まりの酒とバクチの日々がはじまる。気もあらくなり経済的に逼《ひつ》迫《ぱく》する家計を顧みようとすらしない夫に、彼女ははじめて男の弱さを見た。そのときに感じた男への絶望感が、すぐさま彼女に離婚を決意させたのだという。
子供を連れて実家へ帰ったものの、すでに父親を亡くしており、母親も年老いていた。彼女に聞いてはじめて知ったのだが、彼女の母親はムーダン(巫《み》女《こ》)という、いわば占いのようなことをやって生計をたてていた。日本で言う「街の拝み屋さん」と言ったらいいだろうか。この仕事にはかなりのエネルギーがいる。年をとった母親には、もはや思うようにできる仕事ではなかった。
彼女は仕事を探した。大学を出ているため、掃除婦や家政婦などの仕事に就きたくはなかった。一般会社の事務職をと探して、ようやく人の紹介で小さな会社の経理の仕事に就くことができた。しかし給料はネズミの尻《しつ》尾《ぽ》(日本で言う雀の涙)。いつまでたっても生活が楽にはならないことも、子供が大きくなったら辞めなくてはならないこともはっきりしていた。
ここでそれ以上にどんな心の葛《かつ》藤《とう》があったかは私にはわからない。いずれにしても彼女はまもなく勤めをやめ、ママさんハウスで働く女へと転身したのである。
「だって、この仕事は子供が大きくなったらできないもの。子供自身が恥ずかしく感じるし、またみんなにいじめられるわ。だから、一年前からここに来て仕事してるの。韓国人の知り合いに出会う心配もないしね」
大学出の観光キーセンがこうして誕生した。
「みんな日本人を相手にするのはいいけど、他の外国人は嫌だっていうのよ。だけど私は英語ができるでしょ? だから日本人以外の外国人が来るときは、いつも私が呼ばれるの。日本人みたいにお金は使わないけど、だいたいがビジネス関係で来る人たちだから、清潔で紳士的な人が多いわ。最初からキーセン目当てで来る日本人とはその点が違うの。それに、なかには日本人以上にお金を使う人もいるのよ」
ヨンスギはそう言って、最近は大変なお金持ちのクウェート人に気に入られ、彼がちょくちょく韓国に来てくれるのだと話す。
「その人が言うにはね、クウェートでは結婚するときに、男はたくさんのお金を払って女を買う習慣があるんだって。それで、私にもビルをひとつ買ってくれるって言うのよ。だからお母さんの名前で買おうと思って、このごろは不動産屋を回っているのよ」
このチャンスを生かして不動産投機でもやってみたいという彼女は、今度は私に質問をしてきた。
「あなたは日本に行ってたくさんお金を儲《もう》けたの? 日本に一年もいれば、だいたい三〇平方メートルのマンションくらいは楽に買えるんでしょ? あなたは頭がいいからね、何か買ったでしょう」
女が日本へ行く理由はお金儲け以外にはない、この常識を私にもあてはめ、ヨンスギはフフッと微笑をもらしながら水を向けた。
「そう、私ね、勉強だけしているから……」
そう口ごもると、「勉強はいつまでするの?」と聞いてくる。私が「ずっと」と答えると、ヨンスギはいかにも呆《あき》れたというそぶりを見せて、たたみかけるように言葉を継いだ。
「勉強したことなんて、ひとつも必要なかったよ。お金しかないのよ、お金しか。日本での勉強って、いったい何の勉強なの?」
かつて、聡《そう》明《めい》さと純粋さこそ価値だと言い、私とロマンを語ることを楽しみとしたヨンスギ。が、このときの顔にはほんとうに殺気が走っていた。ヨンスギは私に何が言いたいのだろう。そう思ったときには、ヨンスギはもとの優しい顔にもどっていた。
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