現代で最もヤンバンらしい男は会社の社長である。彼らは、部下に指示を与えるだけで、仕事の現場のようすについては報告だけを受ける。そして、一番遅く出勤し一番早く退社する。多くの日本企業の社長のように、社員よりも早く出勤したり社員よりも遅く退社したり、あるいは現場へ指示を与えに行ったりするような社長は、韓国では上にいただくにはふさわしくない軽い人物とみなされる。
韓国の社長はヤンバンたるべきことを旨としているから、具体的な仕事にはいっさい手をつけることがない。いったん出勤すれば、ほとんど一日中社長室から出ることもなく、ただただ社長の椅《い》子《す》に座り続け威厳を保っていなければならない。しかし、この「仕事」はかなり辛《つら》いものには違いない。何しろすることがないのだから、日本や欧米の社長のように、社長室でゴルフのパターを振るようなこともしなければ、ビジネス誌に目を通すようなこともない。もっとも、韓国にはビジネス誌もほとんどないのだが。
部下が報告に来ても、ほんのひとこと「そうか」という程度の形式的なもので、そこでいちいち細かい指示をすることもない。実際的な検討は重役なり部長なりにやらせて、彼らからまた報告を受けるのが通例である。彼らがみずからの手でやることと言えば、取引を決めることくらいのものだ。韓国のある著名な実業家が、私の知るある日本人ビジネスマンに、「ほんとうに退屈で仕方がない」とこぼしたと聞いた。
韓国の社長たちは早々と退社すると、社用の高級乗用車を専用の運転手に操らせて、一般人は出入りのできない特別の料亭へと向かう。そこは、かつてはキーセンたちがヤンバンの相手をした格調の高い料亭である。ここで事業家たちの相手をするのが、歌手や俳優などの芸能人たちである。
いまは芸能人はかつてのキーセンに匹敵する格をもって、現代のヤンバンの相手をするのだ。これらの芸能人たちは、昼はテレビに出演し、夜は特別の料亭で、これは秘密の料亭と言われているが、事業家や政治家の相手をする。もちろん、多くの芸能人が彼らをパトロンとし、また妾《めかけ》になっている者も多い。
事業家たちは、ここで商談したり政治家との取引をすることになるので、会社の実情は会社の重役や部長たちよりも、この料亭に出るキーセンたちの方がよく知っているというのは、韓国での常識である。実際、韓国では社長でなければもはや経営に口出しすることはできず、重役と言えども雇われ人と同じで、会社の詳しい内情を知らされることはない。
韓国の社長はヤンバンたるべきことを旨としているから、具体的な仕事にはいっさい手をつけることがない。いったん出勤すれば、ほとんど一日中社長室から出ることもなく、ただただ社長の椅《い》子《す》に座り続け威厳を保っていなければならない。しかし、この「仕事」はかなり辛《つら》いものには違いない。何しろすることがないのだから、日本や欧米の社長のように、社長室でゴルフのパターを振るようなこともしなければ、ビジネス誌に目を通すようなこともない。もっとも、韓国にはビジネス誌もほとんどないのだが。
部下が報告に来ても、ほんのひとこと「そうか」という程度の形式的なもので、そこでいちいち細かい指示をすることもない。実際的な検討は重役なり部長なりにやらせて、彼らからまた報告を受けるのが通例である。彼らがみずからの手でやることと言えば、取引を決めることくらいのものだ。韓国のある著名な実業家が、私の知るある日本人ビジネスマンに、「ほんとうに退屈で仕方がない」とこぼしたと聞いた。
韓国の社長たちは早々と退社すると、社用の高級乗用車を専用の運転手に操らせて、一般人は出入りのできない特別の料亭へと向かう。そこは、かつてはキーセンたちがヤンバンの相手をした格調の高い料亭である。ここで事業家たちの相手をするのが、歌手や俳優などの芸能人たちである。
いまは芸能人はかつてのキーセンに匹敵する格をもって、現代のヤンバンの相手をするのだ。これらの芸能人たちは、昼はテレビに出演し、夜は特別の料亭で、これは秘密の料亭と言われているが、事業家や政治家の相手をする。もちろん、多くの芸能人が彼らをパトロンとし、また妾《めかけ》になっている者も多い。
事業家たちは、ここで商談したり政治家との取引をすることになるので、会社の実情は会社の重役や部長たちよりも、この料亭に出るキーセンたちの方がよく知っているというのは、韓国での常識である。実際、韓国では社長でなければもはや経営に口出しすることはできず、重役と言えども雇われ人と同じで、会社の詳しい内情を知らされることはない。