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スカートの風129

时间: 2020-07-26    进入日语论坛
核心提示:文庫版あとがき私が最初に書いた本『スカートの風』が出版されてから七年が経つ。世界で最もたくさんの書物が出版されている国、
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文庫版あとがき

私が最初に書いた本『スカートの風』が出版されてから七年が経つ。
世界で最もたくさんの書物が出版されている国、世界で最大規模の読者人口を抱えた国、その日本で本を出すことができる、自分の考えを訴えることができる……それは私にとっては夢のようなことだった。それだけで心が躍った。しかしその時の私は、まったく無名の一韓国人女子留学生にすぎない。どれだけの人が読んでくれるのかと考えると大きな不安に包まれ、このまま時間が止まってくれたほうがいいとすら思った。
わずかな部数刷られた『スカートの風』は、書店の棚の奥の方に、一冊か二冊、密かに差し込まれるような姿でデビューした。その様子を見て私は、すさまじい書物の洪水に飲み込まれ、その所在すら知られぬうちに消え去っていく数々の書物の運命を知らされた思いがした。この一冊を、誰かがわざわざ引き抜いて買うなど、どんな場合にあり得ることなのか、とうてい想像がつかなかったのである。
ところが、初版は発売後一週間でなくなり、出版社には連日注文が殺到した。あの膨大な量の書物を陳列した書店の棚から、あれほど目立たない形で置かれた本が、あっという間に売り切れてしまった。この事実は以後の私に大きな影響を与えた。
書棚の隅々にまで目を光らせ、自分の読みたい本を丹念に探そうとする一群の読者がいる。私の本はその出発点で何よりまず、この人々に大きく支えられ、そのおかげで他の多くの人々にも知られるようになったのであるに違いない。この素晴らしい出来事をけっして忘れてはならない。これからも本を出すことができるならば、そこに物を書く私の原点を置こうと思った。
新聞や雑誌に次々と好意的な書評が出るようになって売れ行きは加速した。読者カードが出版社の机上にあふれ、読者からの手紙が私の狭い部屋の片隅に山積みとなった。マスコミからインタビューの申し込みが続いた。原稿の注文が、新しい本の企画が、次から次へとやってきた。どう応対したらいいのかとまどいながらのやり取りに忙殺される中、韓国人からのほとんど恫《どう》喝《かつ》・脅迫ともいえる抗議に悩まされ続けた。私を取り巻く世界が一夜のうちに一変してしまったのである。『スカートの風』の出版は、私の人生にとって最大の事件であった。
 この本が出てからわずか数年の間に、日本の社会も韓国の社会も大きく変化した。第一に日本のバブル経済の崩壊である。これは新宿や赤坂などで働く韓国人ホステスたちに大きな打撃を与えた。最大の上客であった不動産関連業者たちの支えを失ったからである。
かつての、高額の前金を支払っての韓国人ホステス獲得競争は消え去り、ホステスの方から頭を下げて、自分を雇ってくれないかと店々を回らなくてはならないようになった。美人でさえあれば、数千万円のマンションを買い与えてくれ、毎月数十万円の手当てを支給してくれるパトロンがざらにいたことは、いまから思えばまるで夢のような話である。接待業者としての実力など身につける必要もなく、ただ鼻を高くしてパトロン選びをしていればよかった天国のような生活が終わったのである。
毎月の給料に頼るしかなくなった彼女たちは、ようやくプロの接客業者への道を歩みはじめた。そしていま、彼女たちの接客サービスは当時とは比較にならないほどよくなっている。
また、毎月の収入が給料でしかなくなったため、私の知り合いの韓国人ホステスたちの多くが、これまでに貯めたお金で、自ら店をもつ道を選んでいる。そればかりではない、来日して二、三年も働けば、借金をしてでも自分の店をもとうとする者たちが増えてきている。小さくても、数名のホステスを雇ってママとなること、それを夢として働くものたちが多くなっているのである。
新宿・歌舞伎町を歩いてみると、毎月のように新しい店の看板が目に入る。また新旧の看板の入れ代わりが激しく、店の寿命がとても短くなってきていることがわかる。経験の浅いホステスが店を開いてはママとなり、あっという間につぶれていく。二年以上もつ店はわずかしかない。
半年ほど前に、私が日本語を教えていたある韓国人ホステスから、店をオープンしたから利用して欲しいと連絡があり、数名の日本人ビジネスマンに声をかけてその店へとくりだし、御《ご》馳《ち》走《そう》になったことがあった。それから三カ月経って、どこかいい店があったら紹介して欲しいと言われたのでその店に連絡をしてみると、すでにつぶれて経営者は他の韓国人ホステスに代わっていた。
このような交代が日常茶飯事に起きている。事業に失敗したホステスは、それまで稼いだお金を一気に吹き飛ばされ、借金地獄へと落ちていく。そして、その苦しみから逃れるために、お酒やギャンブルに走る。そんな女たちの話を頻繁に聞くようになっている。
そこで、危険性の比較的少ない商売が最近は目立つようになっている。カラオケ居酒屋や韓国家庭料理店などである。こうした店ならば、従業員は二、三人で足りる。人件費の節約になるし、ホステス間の人間的なトラブルで悩むこともなくなる。それが大きな理由だという。
こうして、彼女たちが働く飲食店の多様化がはじまった。第一が大型クラブで、そこでは三〇—四〇名のホステスをようして、生バンドの演奏が行われる。第二がカラオケスナックで五、六名のホステスが働く。第三がカラオケ居酒屋で二、三人の女性を置く。第四が韓国家庭料理店。しだいにホステス業から遠ざかることになるが、韓国家庭料理店となると、もはやホステスは存在せず、結婚して夫婦二人で経営するといったケースが多い。従来の、焼肉屋というイメージを破った、新しい形の韓国式レストランといってよいだろう。
昨年、韓国の一人当たりのGNPが一万ドルを越えた。経済規模では世界一一位、日本に次ぐアジアで二番目のOECD加盟国ともなった。この本を書いた当時からするとほとんど二倍の成長ぶりである。それにつれて韓国の国民生活の水準が飛躍的に高まったのはいうまでもない。
にもかかわらず、日本の韓国酒場で働くために来日する韓国人女性は増える一方なのだ。新宿・歌舞伎町を例にとっても、七年前に三〇〇〇人ほどだった韓国人ホステスの数が、いまでは一万人を越えているといわれる。韓国の人件費は年々高くなり、しだいに日本の水準へと近づこうとしている。日本ではホステス業は、かつてとは比較にならないほどの厳しさがある。濡れ手に粟の儲《もう》けなど望むべくもないのだ。
それでも彼女たちは、昔以上に日本にやってくる。そこに、彼女たちの来日目的が、単に出稼ぎだけにあるのではないことが見えているのではないだろうか。
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