韓国人は内面の心意的な変化は容易に好まないが、時の流れに素早く乗って行くことで起きる変化はいとわない。それは、しばしば外国人に指摘されるように、韓国人の性格がきわめて性急だと言われるところにあるのかもしれない。
韓国には「シザギバニダ(始作は半分である)」つまり、「始めることは半分である」という言い方がある。どうしようかと考えるより、まず行動せよという格言である。何はともあれ行動してしまえば、少なくとも半分までは処理することができるということだが、よく言えば、思いついたときにやらなくては、できることもできなくなってしまう、という意味になる。
「急《せ》いては事をし損じる」「急がば回れ」「石橋を叩《たた》いて渡る」など、慎重にゆっくり事を運ぶことをよしとする日本人には、あまり響かない言葉かもしれないが、今日は今日、明日は明日だという韓国人の性格をよく表わす言葉である。
日本人が買物をしているとき、買おうか買うまいかと迷っている姿をよく見かける。店員もお客につきまとって買うことをすすめようとはしない。そればかりか、お客と一緒に何がよいかと迷っている。
韓国ではそうした光景はまず見られない。お客本人が、時間がもったいないからと、早く買物を決めようとすることもある。しかしそれ以上に、買うのに迷っていれば、店員があれがいいこれがいいとつきまとってはすすめるし、また、「なんで早く買わないのか」と、聞こえよがしにコソコソ悪口を言われるからである。さらに、店に入って見るだけ見て買わないで出ようものなら、背中に罵《ば》声《せい》を浴びせかけられることすらある。
とにかく韓国では、ゆっくり考えている人は好ましくない人である。これはビジネスでも同じことだ。「そうですねえ、少し考えさせて下さい」といった、日本人なら当たり前のような言い方をする人も、韓国ではビジネスマン失格である。「さあ、やってみましょう」とすぐ行動に移す人こそ、韓国のビジネスマンにはふさわしい。
朴大統領の時代に、プサンとソウルを結ぶ高速道路がつくられた。この高速道路は、長い間、韓国の大動脈として最も重要な位置を占めていたものだが、とにかくないよりはましだと、それこそ突貫工事で応急的につくられたものである。
最近は別に高速道路を敷《ふ》設《せつ》して、この道路を一般国道にする計画があるらしいが、この二十数年もの間、高速道路でありながら、一般道路と同じ高さで防壁のないところが多いため、車の目の前に犬が飛び出て来たりするような状態のままなのだ。
また、道路をまっすぐに敷くために山にトンネルを掘ったり、川に橋を掛けたりすることをいとわない日本人とは違って、できるだけ早くつくってしまおうということから、それら障害物を避けてくねくねと曲がる道路となってしまった。そのため、本来なら十分で行けるところをぐるっと大回りをして三十分もかかることになってしまう。
もちろん、交通事情の悪かった当時にあっては、ともかくも高速道路としての便利さには、それだけで感謝すべきものはあった。しかし、いったんつくられてしまった道路を全面改修するには、新しくつくる以上の費用がかかると言われる。長い目で見たとき、やはり性急であったのではないかと思わざるを得ない。