ともかく韓国では、女の価値と言えば外見。女と言えば身体。そこで、四十代、五十代の女たちは、身体の美容にはそれこそ血《ち》道《みち》をあげると言えるほどの熱心さを見せる。
最近では、韓国でもずいぶんエアロビクスが流行しているが、なんと言ってもマッサージの人気が高い。もちろん、日本のように健康が目的ではなく、あくまで肉体の美容(性的な魅力)のために、である。
ソウルのサウナは、まるで中年の女たちの集会場のようだ。おばさんたちが身体中にオリーブ油を塗ってはマッサージを受けている。サウナで情報を交換しあい、男が酒場をハシゴするように、あちこちと「美容にいい」と言われるマッサージ施設を求めて歩き回るのである。
韓国人は銭湯が好きだが、いまの銭湯の施設はとてもよくできていて、どこでもサウナを設けている。この近代的な銭湯が、少し暇のできた主婦たちには、格好の遊び場所となっている。夫と子どもを送り出してから、誘い合って銭湯へとくり出し、サウナに入り、マッサージを受け、おしゃべりに、花札にと熱中する。
ある程度経済的な余裕が出てきて、それまで家に閉じこもることの多かった主婦たちが外へ出られるようになったのである。しかし、彼女たちの余《よ》暇《か》活動の中心はいまなお美容である。日本の主婦たちのように、小さな勉強会をやってみたり、料理やお花の講習会に出てみたり、カルチャーセンターの受講をしたり、また消費者活動や福祉活動に足を向けるような動きはきわめて少ない。
また、時間の余裕をパートなどの仕事に向ける主婦たちも日本には多い。韓国では共稼ぎをすることはみじめなことであり、「服が破れるほど貧乏でなければ共稼ぎはするな」と言われるほどである。余裕があって美容に生きることができる女は、とても幸せな女だと言われる。