あるとき私は、会合で何回か顔を合わせたことのある日本のビジネスマンから「お茶を……」と誘われた。私は初めての人だからと、「ちょっと忙しいので」と日本的なやんわりとした断わり方をした。しかし、その男性が二度と誘ってくれないので、なぜなのかと悲観していた。
道を歩いていても、日本の男は、二言三言話しかけ、ちょっと断わるとまずあきらめてしまう。なぜ? とがっかりする。私も年で魅力がなくなってしまったのかと思うのだ。また、韓国で女が一人でコーヒーショップに行けば、まず男が声をかけてくる。日本ではほとんどそうしたことがない。私はつくづく「なんてもてない女なのか」と、すっかり気を落としていた。
しかし韓国に帰ってみると、私でもけっこう声をかけられる。安心してまだもてるつもりになった私は、なぜ日本の男たちは気軽に声をかけることをせず、またちょっと断わると二度と誘わなくなるのだろうかを、ゆっくりと考えてみたのである。
日本の男は常に女の側からの反応を見ようとしているのだ。最初、それが弱々しく感じられ、また人の顔色をうかがうようで嫌だったのだが、やがて、こちらの気分を知って、そこに合わせようとしていることに気がついた。以後、こちらの気分を尊重してつき合ってもらえることが、どれほど女の心に余裕を与えてくれるものかを知ることになり、すっかり日本の男性ファンになってしまった。
韓国人の男は、こちらの気分がほんとうに嫌でも、かまわずに口説いてくる。また、デートでなくとも、こちらの気分はそっちのけ、よく言えばリードしてくれるのだが、自分勝手に自分がいいと思うところに強引に引っ張ってゆく。こちらが相手の気分に無理に合わせなくてはならないので、とても疲れるのである。
日本でも韓国でも、プロポーズは男の方からするのが一般的である。しかし、日本の女は相手のプロポーズを誘うようなことを積極的にする。一方、韓国の女はそうではなく、男が積極的に近づいてくるような形をつくる。
つまり、いくら気に入っていてもプロポーズに対してはまず断わるのである。突っぱねれば、男はよけいに近づいて来るからだ。まるで、伸びきったゴムが勢いよく戻って来るように、男がさらに近づいてくることを、女はよく知っている。突っぱねが強いほど、男が自分に懸命になることも。
これはデートの誘いと同じことである。
また、韓国の男は、女の方からのアプローチを受け入れることは、とてもみっともないことだと感じる。女に対して受け身になることは、男ではないのだ。その逆が女だから、韓国の女は、「私はあの人が好き」とは口に出さない。必ず「あの人が私を好いた」と言う。
そんな具合だから、実際、韓国の女は日本の男との恋愛にはよく失敗している。自分が相手を好きでも「好きだ」とは言えない。また、相手がいい寄ってくれば、ここぞと自分を魅力的に見せるため、ものすごく嫌な顔をしてみせる。これで相手の気が引けると思ってしまうのだ。