韓日ビジネスのトラブルを耳にするたびに思うことは、日本人が問題だと指摘することのなかには、いわゆる「韓国側の一方的な甘え」が実に多い、ということである。
たとえば、日本側が三、韓国側が七の出資比率で合弁会社をつくったとする。この比率は当然、経営上のさまざまな権利を規制する。それは、合弁会社の運営にとっては、言うまでもない常識に属する問題である。しかし、韓国の企業家たちは必ずしもそうは考えていないのである。
次の事例は、そのへんをよく物語ってくれている。
ある日本の大手企業と韓国の財閥系企業がほぼ対等出資の合弁会社を計画した。日本側の企業が造るいくつかの製品を販売することが目的である。販売する製品が決定されて会社がいよいよスタートとなったとき、韓国側から提案があった。販売品目のなかに、ある製品を入れて欲しいというのである。
その製品とは、日本側企業独自の技術で開発された、全世界に巨大なシェアーを持つ商品で、いわば、放っておいても売れるドル箱的な存在であった。
日本側の企業が、当然のように、とんでもないことと突っぱねると、韓国側はなぜかと不思議な面持ちで、次のようなことを言った。
「どうしてですか? 私たちの力で売ってみせますよ。まかせて下さい。どんどん売れれば会社が儲かるし、そうすればお互いにいいじゃないですか。なぜダメだと言うんですか?」
日本側はこの発言に唖《あ》然《ぜん》として、しばらく声も出なかったという。まさか、大企業の経営者の口から、これほど常識を無視した一方的な要求が上がるとは、思ってもみなかったのである。
そこで日本側は仕方なく、どうしても売りたいというのなら、出資比率を日本七対韓国三、あるいは日本八対韓国二にしなくてはならないと主張した。すると、それに韓国側は猛反発したのである。
「なぜそんなことを言うんですか。私たちは半々を出している兄弟じゃないですか。こちらは、あなたたちの製品を売ってあげて、あなたたちに儲けさせてあげようと言っているんですよ。それなのに、あなたたちは出資比率を自分たちに有利にして、自分たちだけがたくさん儲けようとする。そんな道理のない話はないじゃないですか」
これでは話のしようがないと、日本側の誰もが思ったことだろう。日本側がいくら説明しても韓国側が納得しないので、結局、この合弁は流れてしまったのである。