多くの韓国人が、外国へ行くときには、お土産として高《こう》麗《らい》人参をたくさん持ってゆく。高価であるため、誰もそうそう簡単に手に入れられるものではない。ところが、外国人の多くが高麗人参を煎《せん》じて飲むなど面倒くさいと思っているし、またその強い臭いを嫌う人が多い。それでも、韓国人はせっせと高麗人参をお土産にと、外国へ持ってゆく。
高麗人参は、韓国人にとって価値があるものであり、韓国人にとって高級なものである。だからこそ、外国人へのお土産にするのだ。韓国人は一般的に、相手が何を喜ぶかではなく、自分が価値のあると思えるものをお土産にする。
高麗人参をもらったという日本人はたくさんいるものの、多くの日本人には「ブタに真珠」のようなことになってしまっている。「せっかくもらったんだけど、どうして飲めばいいかわからないし、また何かくさくて腐らせちゃったよ」という人が多い。
ある日、私の事務所に顔を出した韓国人ビジネスマンが、高麗人参を見せながら、「これからこの人参を日本人へのお土産で持って行くところだ」と言う。私は、
「そんなに高いものをお土産にしなくてもいいんじゃないですか。それに好きな日本人も少ないし」
と親切のつもりで言ったのだったが、彼は「私がしたいからいいでしょ」と、まるで気にしていない。相手のことを考えるよりも、自分がいかに相手を大事に考えているかを、自分の価値観で表わすことができればいいのだ。価値観が通じるかどうかにはまるで関心が向いていない。