韓国では、他人の家に行ったときに、その家に子どもがいればお金をあげるのが習慣になっている。もちろん隣人などは別だが、たまに行く友だちや親《しん》戚《せき》の家では、中学生や高校生くらいまでならお金をあげるのが普通である。
私のように外国にいて国へ帰る場合は、その額はさらに大きいのが常識とされる。通常では、小学生には一千ウォン(二百円)ほど、中学生には一万ウォン(二千円)ほどが相場だが、外国帰りとなると、小学生でも一万ウォン、中学・高校生なら十万ウォン(二万円)以上ともなる。また大学生、年寄りにあげることも珍しくない。
私はあなたの家族のことをそれだけ思っている、気にしているということを、韓国人はお金で示す。「物質のあるところに気持ちがある」と考えるからである。一方、お金(物質)でまごころが計れるかと日本人は思う。このすれ違いのなかで、韓国人は日本人に、「すべてをお金で解決しようとしている人たち」と思われてしまう。
韓国人が国に帰るには、そういうお金も必要だし、また高級なお土産も必要となる。そこで、お金のない韓国人、たとえば私のような者は、交通費だけで韓国に帰れるなら帰りたいとは思っても、お金のことを考えると、とても帰れないのである。
もちろん、知らん顔をしてお金もあげずにいようと思えばできる。しかし、そうすると「なんて子どもに冷たい人か」とみなされる。知り合いに会わなければいいではないかといっても、それは、人を無視する冷たい行為となるため、もっと大変なことになる。そのため、お金もなしに帰国するには、韓国社会と縁を切る覚悟が必要となってしまう。