日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 作品合集 » 正文

風に吹かれて01

时间: 2020-07-29    进入日语论坛
核心提示:赤線の街のニンフたち ある作家から、「きみはセンチュウ派か、センゴ派か」と、きかれた。ピンときたので、「センチュウ派です
(单词翻译:双击或拖选)
赤線の街のニンフたち

 ある作家から、
「きみはセンチュウ派か、センゴ派か」
と、きかれた。
ピンときたので、
「センチュウ派です」
と、答えた。
その作家は目《め》尻《じり》にしわをよせてかすかに笑うと、それは良かった、と言った。
良かった、と言うべきではないかも知れない。だが、私には、その作家の言葉にならない部分のニュアンスが、良くわかった。
おくればせながらも、センチュウ派の末尾に位置し得たのは、良かったと思う。だが、良かったから元へもどせ、などとは言いたくない。滅んだものは、もうそれでおしまいだ。どんなに呼んでみたところで、ふたたび返ってきはしない。
後はただ白浪《しらなみ》ばかりなり——。何の文句だったろうか。終ったお祭り。紀元節。失われた祝祭を復活させようとするのは、空《むな》しいことだ。私は、そう思う。
良かった、というのは、過去の記憶を飾るささやかなリボンにすぎない。センゼン派は皆、それぞれのリボンを頭に結んでいる。私のそれは、短くて貧弱だ。だが、風が吹くたびに、そいつが揺れるのを私は感じる。そのことを少し書こう。いわゆる赤線廃止のまえに、その巷《ちまた》に一瞬の光陰を過した〈線中派〉の感傷である。
そのころ私は、池袋の近くに住んでいた。立教大学の前を通りすぎて、もっと先だ。
十畳ほどの二階の部屋に、十人ほどのアルバイト学生が住み込んでいた。私もその一人だった。
呆《あき》れるほど金のない連中ばかりで、何だかいつも腹をすかしていたように思う。
仕事は専門紙の配達である。業界紙とは言わずに、専門紙と言っていた。世の中に、これほど様々な新聞がある事を、私はその職場ではじめて知った。有名なものもあり、そうでないのもあった。
株式新聞、重工業新聞、日本教育新聞などが有名なところだった。ほかに数十種の専門紙があった。
毎朝、まだ暗い東京の街を、私たちは青い自転車を飛ばして出動した。目白を通り、飯田橋を抜け、日本橋の一角まで、十数台の自転車を連ねて全力疾走する。
事務所で各自の新聞を揃《そろ》え、配達にかかるのだが、その地区たるやべらぼうな広さだった。
そのため私は今でも、月島や、佃島《つくだじま》のあたりの露路を頭の中に思いうかべる事ができるし、町屋や、葛《か》西橋《さいばし》あたりの地理もくわしい。
「ついに一ドル相場実現……」
という証券新聞の大見出しを憶《おぼ》えているから、たぶん世間は景気が良かったのだろう。
だが、私たちは、少しも、良くなかった。配達を終えて、また自転車を池袋方面へ走らせる時には、うんざりしていた。金もなかったし、ひどく疲れていた。
そんな中でも、やはり時には女のいる街へ出かけた。どこをどう工面したのか、記憶にはない。今おぼえているのは、ファジェーエフとか、カターエフとか、オストロフスキイとか、その度《たび》に古本屋へ持って行った作家たちの名前だけだ。
新宿二丁目あたりは問題にならなかった。あんな所はブルジョア階級が豪遊する場所だと思いこんでいた。一度だけ、配達用の青自転車で駆け抜けた事かある。豪華さと、美人が多いのに驚嘆した。少なくとも、当時の私には、そう思われた。
私が時たま出かけるのは、北千住《きたせんじゅ》の街だった。立石《たていし》や、鐘《かね》ヶ淵《ふち》の方面へは、近くの採血会社の帰りに寄ったりした。
新宿の街は、その辺といろんな面で違うように観察された。だいいち、名前が高級だった。英語や、フランス語や、ドイツ語の名前の店が、そこにはある。
私の知っている北千住の店は、〈正直楼〉といった。女の子の名前が、マツという。それにくらべると、新宿には、アンヌとかエリカなどという女がいそうな気がした。
視線が会うと、すっと伏目になって半身を扉《とびら》の陰に引くようにする。新宿の客は知的なので、こんなソフィスティケイションが有効だったのかも知れない。
私は新宿に感心したが、自転車からは降りなかった。私の行くのは、お化け煙突の街だった。
月のなかばに、週末をさけ、出来れば雨降りの夜をえらんで三河島の駅から歩いた。夜半を過ぎると、四百円位で泊れる事もあった。
だからといって、待遇が悪いという事はなかったように思う。女の足音を待ちながら、雨の夜明けに戦前の〈家の光〉などを読んでいると、そのまま眠ってしまう事があった。朝、五時から自転車を走らせているのだから、無理もなかった。
冬の終り頃だったろうか。女が金を帳場に持っていった間に、そのまま、眠り込んでしまったらしい。目を覚《さ》ますと、五時だった。女は私の隣りで寝ていた。
「なぜ起さなかったんだ」
「だって、兄ちゃんが、あんまりぐっすり寝込んでるもんだから——」
東北から出て来て六ヵ月という女の子は、しんそこ恐縮しているように見えた。自分が帳場に行ってもどってきた何分かの間に、あんたはもう眠っていた、よほど疲れているに違いないと思って起さなかったのだ、と彼女は言った。
「帰る」
と私は言って服を着た。配達の時間がせまっていた。
「まだ暗いよ」
「配達の仕事があるんだ」
彼女は、玄関で私の靴をそろえ、
「ごめんなさいね」
と、訛《なま》りの強い言葉で囁《ささや》いた。「そこまで送っていく」
私は、その日に限って青自転車て来ていた。車のスタンドを靴先でバタンとはねて、私は走りだした。
「ちょっと待って」
と、女が後ろから叫んだ。彼女は着物の前を片手で押えて玄関に駆け込んだ。何か果物でも持って出てくるのだろうか、と私は想像した。女が出てきた。
「ほら。後ろのタイヤが抜けてる」
と、彼女は手に下げてきた空気ポンプを差し出して言った。私は、がっかりしたが、自転車を立て、空気ポンプを受け取った。
「あたしがやってあげる」
女はたくましい腕を見せて、空気ポンプを押した。ギュッ、ギュッと音を立て、タイヤが固くなった。
女はポンプをはずすと、手でタイヤをにぎり、
「固くなった」
と、言って、一瞬、照れたように笑った。
「これで大丈夫」
「うん」
「あんまり来ないほうがいいよ、こんなところ」
「眠るだけなら家でも眠れるからな」
皮肉を言って私は走り出した。暗い空に、巨大なお化け煙突の影が見えた。みち足りた睡眠と、不満な欲望とが入りまじって、妙な具合だった。風が冷たかった。日本橋への道は遠かった。
「固くなった」
と、言って照れた女の顔を思い出すと、私は何となく、良かった、と思う事がある。
だが、それはすでに滅びてしまった祭りの笛太鼓だ。それを復活させようとは思わない。失われたものは、二度と返ってこない。それが本当なのだ。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%