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風に吹かれて32

时间: 2020-07-29    进入日语论坛
核心提示:古新聞の片隅《かたすみ》から 物置を整理していたら、古い新聞が出て来た。例によって退屈まぎれに、庭の日《ひ》溜《だま》り
(单词翻译:双击或拖选)
古新聞の片隅《かたすみ》から

 物置を整理していたら、古い新聞が出て来た。
例によって退屈まぎれに、庭の日《ひ》溜《だま》りに椅子を持ち出して腰をすえ、読みはじめる。
めずらしく晴れた初冬の午後で、怠《なま》けるにはもってこいの日和《ひより》である。原稿の締切りが、数日後に迫っているのだが、こういうギリギリの瀬戸《せと》際《ぎわ》に半ば破滅的な気持で怠けるのは、得もいわれぬ快楽なのだ。ひょっとしたら出来上らないのではないか、そうなったらどう責任をとればいいか、すでに表紙に題名を刷り込んだと編集部は言っていたが、もし原稿が上らなければ雑誌社はどうするだろう、などと考えたあげく、世界の終末を祈りながら全然必要のない雑用に手をつけたりするのが、困った私のくせなのだ。
新聞は変色した地方紙である。題字の下に日付がある。
〈紀元二千五百六十八年 火曜日 明治四十一年一月二十八日〉
かなり古い、古新聞もここまで来ると貫禄ものだ。日付の横に定価、〈一枚金二銭。一ケ月分前金四十銭〉とある。
発行所は、〈石川県金沢市南町三十番地〉
一面は〈言論〉〈雑報〉〈漫録〉〈新刊紹介〉、それから下段に絵入りの〈講談〉がはいっている。
〈一立斎《いちりゅうさい》文車講演・朝《あさ》比奈《ひな》三郎・第六十五席〉
二面に〈東京電報〉の見出しが並ぶ。
○西国皇帝訪問
○御陪食の延期
○英領印度騒擾《インドそうじょう》
○米回航艦隊
○欧州財界と日債
○東京大相撲
〈東京大相撲本日(九日目)の勝負如左《さのごとし》。(中略)太刀《たち》山《やま》預《・》朝風 荒岩分《・》浪《なみ》の音《おと》 梅ケ谷分《・》錦洋《にしきなだ》緑島よりきり《・・・・》両国〉
 天気予報は〈金沢地方、少雪のち曇り〉とそっけないが、下につけ加えて曰《いわ》く、
〈午後六時より向二十四時間有効〉
向う二十四時間有効、などというあたり大変信頼感がある。当る当らないより、明治人の断《だん》乎《こ》たる自信のほどがうかがえるような気がするではないか。
その下に、
〈絶交広告〉などというのがあり、何町の何次郎は不徳の行為があるので絶交するという広告が出ている。
三、四面には検事のスキャンダルが大々的に報ぜられ、六面には、〈海賊横行〉の記事が目に付く。
〈——海賊三百余名の為《ため》に停船を命ぜられたり、是《これ》等《ら》の海賊は五十余隻のぼーとを有し旅客を乗せたる小蒸気船見ゆるや先づ発砲して停船を命じ旅客の手荷物其《そ》の他の貨物を掠奪《りゃくだつ》し去れり、云云《うんぬん》〉
この面のハイライトは、
〈姦通《かんつう》中将恐喝《きょうかつ》事件〉だろう。
伊東中将と藤井げんの姦通に端を発するおどしのレポートである。これは女房の不義の相手、陸軍中将に女の夫とその友人が二万五千円を請求して事件になったものらしい。
その友人の弁護士の弁論の模様を記事はこう結んでいる。
〈——彼は決して私欲によらず、一片稜々《りょうりょう》たる侠骨《きょうこつ》友人の不遇に同情してたまたま恐喝に問われしなりと、両者の無罪を主張せり〉
小見出しでは〈陸軍軍楽生徒募集〉の記事が見える。体格が良く歯並びのいい青年を求めているのだが、身長四尺九寸以上、という条件がついている。
〈——軍楽生徒は陸軍戸山学校条令にもとづき華士族平民中志願の者にして優等の者より順次採用す〉
六面が広告面。
〈——治《なお》セザレバ�イラズ〉
などという薬の広告が見える。紙面の左下に、山中大聖寺《だいしょうじ》間の馬車時間表が出ている。金沢・松任《まっとう》間が馬車鉄道となっているのは、レールの上を馬車が走ったものであろうか。
〈社頭松進詠《しんえい》歌《か》の批評〉などというのがあり、どことなくとぼけていて面白い。
〈中島晶子の批評左の如し
○高崎正風氏作
かぎりなく生いそふ松を男山
神ぞ守らむ 我君のため
一寸《ちょっと》拝見しますると又例のめでたし��の歌で、調子も宜《よろ》しいようですが二度拝見すると、さて解《わか》らなく成ります。年毎《ごと》に生いそふ松の木を、なぜ我君の御為に男山の神様が御番を遊ばすのでしょうか。神様の松を人が御番いたすのであれば聞えますけど、神様が松の御番は変に伺われます。其《そ》れが大君《おおきみ》の御為めであるとは、いよいよ変に存じます。(後略)
○西三条実美氏作
いつの世に根ざしそめけむ千木《ちぎ》よりも
高くそびゆる 松のむら立《たち》
(前略)新派の目で見ると又やはり歌では無い、私共のもっとも嫌《きら》う座談平語です。いや、常識のある人は、小児でもかような事は座談にも出しませぬ。今の旧派の作者は、なぜ此通《このとお》り詩人らしい空想を欠いて居らるるのでしょう〉
どうやらこの日はニュースが足りずに紙面にアキが出来たらしく、雑文があちこちに目立っていて、編集者の所へ来た友人からの絵葉書について書いたこんな雑文で埋めている。
〈北ドイツ、ワーレンスタインの片《かた》田舎《いなか》なる少女等が、露国より帰れる日本俘《ふ》虜搭載《りょとうさい》の火《か》車《しゃ》、今にもここを過ぐるとて、皆手に手に小布を持ち、万歳ならぬハラーハラーを連呼する其様《そのさま》を見て、日本俘虜はいかが感ずるであろう。処《ところ》は異なれど小児の情は、いずこも同じである〉
こういった記事を読むには、声を出して読むに限る。
郷里の田舎の老人たちが昔やっていたように、御詠歌の調子で読みあげていると、良い気持だ。私たちは、最近、新聞を読む、というより見るという感じで眺《なが》めることが多いように思う。いつの間にかそうなってしまったらしい。
印刷された活字の行間から、その書き手の顔つきや歩き方までが何となく想像できるような記事など、もう考えられないことなのだろうか。そのうちに電波新聞などという代物《しろもの》が、各家庭に電送されるようになるという。配達の面倒がなくなるのはいいことだ。
しかし、それらの記事がどんなものになるのか、私には見当がつかぬ。現代という時代は、すべてについて〈関係〉の確かな手ごたえが希薄になった時代ではないかと思う。人と人との関係、読者と記事との関係、物と使い手との関係、国家と民衆との関係、あらゆる〈関係〉が、一方的になり、相互の平等な関係というものが失われているのではあるまいか。
電送機械から音もなく滑《すべ》り出てくる電波新聞のイメージが、私にはなぜか怖《おそ》ろしいもののように感じられる。その記事を書いたのはコンピューターではないか、という気がするにちがいない。それは何となく淋《さび》しいことだ。
しかし、いずれそうなるだろうという予感はある。それが現代なのだ。すでに翻訳を機械が引き受ける時代が近づいているらしい。
このまま人類は、どこまで歩いて行くのだろうか。進歩の果てにある世界は、いったいどのような風景なのか。そこにも、いま目の前に揺れている痩《や》せたコスモスの花は咲くのだろうか。
ぼんやり考えていると、電話のベルがけたたましい音で鳴り出した。東京の編集者からの追求にちがいない。
私は古新聞を椅子におき、頭をうなだれて電話の場所へ行く。
この時ばかりは小説を一瞬にして書きあげ、雑誌社へ送るコンピューターが欲しいと思うのだ。
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