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風に吹かれて44

时间: 2020-07-29    进入日语论坛
核心提示:あわて者の末期の目 昨年から今年にかけて、面白い本が次々と出た。形《けい》而下《じか》的な意味で本が好きな私にとっては、
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あわて者の末期の目

 昨年から今年にかけて、面白い本が次々と出た。形《けい》而下《じか》的な意味で本が好きな私にとっては、有難い季節だったと思う。
ロープシンの〈蒼《あお》ざめた馬〉の翻訳が、二つの出版社からほぼ同時に刊行されたのも、最近である。
——今ぞよみがえる幻の名著!
と、版元の広告コピーにも迫力があった。書評紙からの注文で、短い文章を書くために両方を通読したが、こなれた良い訳で感心した。
ソ連文学関係では、かつての粛清作家たちの作品が体系的に紹介されたのが目立った傾向だった。お蔭《かげ》で、バーベリやヤセンスキイなど、これまでのソ連ではタブーとされていた幻の作家の作品にも、お目にかかる事ができた。
雑誌に載った時から注目していた松永伍《ご》一《いち》氏の〈荘厳なる詩祭——影の詩史のニンフたち——〉も、また幻の詩人たちの復権の書といえるだろう。私はこの本で、はじめて九州の影の詩人たち、藤田文江、淵上毛銭《ふちがみもうせん》などという人々の名前を知った。
私は元来、非常な怠《なま》け者で、最近はことにその傾向がひどい。足もとに六百ワットの電気ストーブを置き、コール天のズボンにナイロンの厚いヤッケという完全武装で原稿用紙に向うのだが、仲々すぐに仕事がはじまらないのである。
一字も書いていない原稿用紙を前に、鉛筆を二、三十本もけずってみたり、手足の爪《つめ》を全部切ってみたり、最近急に増《ふ》えて来た白髪を数えたり、鼻毛を抜いて猫の鼻に植えてみたりして貴重な時間を浪費し、ようやく原稿に取りかかる頃には殆《ほとん》ど精力を使い果してしまっている始末だ。
そんな時には、書くのを一時中止して、読む側に回る事にしている。他人の書いた本を目の前において、締切りを気にしながら拾い読みをする。そんな時、読書は一種の快楽となる。
締切りは数時間後に迫っている。小松空港から航空貨物でフレンドシップ機に乗せるためには、一時間前にタクシーに託さねばならない。そんな時に、仕事と全く関係のない本を読み出すというのは、一体いかなる心理のメカニズムであろうか。
残された時間は、後わずか三時間。編集者の厳《きび》しい顔が目にうかぶ。活字を追う視線は、すでにして極限的な切迫感に満ち満ちている。これこそ〈末期の目〉というものであろう。目前の活字は生きものの如《ごと》く起《た》ち上り、文章は岩《いわ》清水《しみず》のように脳《のう》味噌《みそ》にしみ渡る。
これが私の読書のスタイルてある。困ったものだが仕方がない。私はこれまでに、こうして何冊かの貴重な本とめぐり合った。人々はそれぞれの個性にもとづく読書法があるものである。
〈末期の目〉に写った自然、または人間とは、どんなものだろう。
私はまだ死を決してどこかへおもむいた経験がないので判《わか》らない。だが、それらしき緊迫した状況の中で事物を見た記憶はある。
私たちが敗戦後の北鮮から、ソ連軍のトラックを買収して三十八度線へ脱出をはかった夜がそうだった。日本人難民を乗せた大型トラックは、深夜の街道を、平壌《へいじょう》から開城《かいじょう》の方角へ轟々《ごうごう》と唸《うな》りながら突っ走っていた。途中の検問所の前まで来ると、さも停止するかのようにスピードを落し、ぐるぐる回される懐中電灯の信号の直前で、突然、エンジンを全開してダッシュするのである。背後で自動小銃の発射音が響き、車体をかすめる弾丸がオレンジ色の火花を散らした。
検問所は何カ所もある。次のチェック・ポイントにさしかかるまでの行程は、エンジン音と車体の風を切る音だけが単調に続く。タイヤを射《う》ち抜かれれば、それまでだった。保安隊に捕えられた脱出者たちを待っている運命が何かを、私たちは知っていた。
車の両側を、黒いポプラ並木の影が飛び去って行く。空は青黒く冴《さ》え、満天の星は金属質に輝きわたっている。
後続車のへッドライトと、押し殺した幼児の泣き声。
それらの全《すべ》ては、その時の私にとって、ひどく抒情《じょじょう》的なみずみずしさに満ちていたように思う。そこには、一種の爽《さわ》やかな、硬《かた》い存在の感覚があった。私はその時、内ポケットに刃物を隠した十五歳の少年だった。
二十代の終り頃の事だろうか。私は新宿駅の近くを歩いていて、異常な音響を頭上に聞いた。その瞬間、私は三メートルあたり横っ飛びに飛んで地上に伏せていた。その私の数十センチ横に、巨大な鉄骨が地面深く突き立ったのだった。
それは建設中のビルの九階から落下した、七、八メートルはあろうという巨大な鉄骨で、アスファルトの道路を、まるで柔らかいパンの表面ででもあるかのように突き刺しているのである。
私は起き上って、急ぎ足でその場を離れた。あの瞬間、無意識のうちに飛び離れたのは、私たち戦時中に少年期を過した人間の習性だろう。
「今日、あぶなく死にそこねたぜ」
などと会社に出て喋《しゃべ》っているうちは何ともなかったが、その日、家へ帰って寝床の中へ入ってしばらく後に、不意に震えが来た。死に直面することの恐怖とはそんなものかも知れない。翌日、私はわずかばかり残っていたボーナスの貯金を全額おろして、一夜のうちに消費してしまった。人間、いつ死ぬかわからないと思うと、一銭でも残して死ぬのが惜しくなったためである。その発想は、永く私の生活を支配して、建設的な生活設計を不可能にした。
〈人間、いつ死ぬか判ったもんじゃない〉
そう呟《つぶや》くと、不意に周囲の風景の遠近法がぐにゃぐにゃと歪《ゆが》んでしまうのだった。
私はかつて池上線の沿線に住んでいた事がある。いつも電車で都心に通っていた。
その電車のパンタグラフが突然火を噴《ふ》いた事があった。当然、車内は大混乱におちいった。だが誰も悲鳴をあげて逃げまどうばかりで、非常ドアさえ開けようとしないのだ。私は靴の踵《かかと》で窓ガラスを叩《たた》き破るや、ひらりと車外に身を投じ、線路の上に飛び降りた。その瞬間、左足に鈍いショックを感じたが、ともかく、脱出に成功して車中の乗客に「早く出ろ!」と呼びかけた。だが、窓ガラスの破片の中から飛び出してくる乗客は一人もいず、ただ悲鳴をあげて煙の中を走り回るばかりだった。
その事故は、幸い大事にいたらずに収拾された。やがて車掌がドアのコックを開け、乗客たちは、青ざめた顔でぞろぞろ降りて来た。
私は痛む足を引きずりながら、或《あ》る種の得意さを押える事が出来なかった。危機に際しての動物的な防御本能は、死線をくぐった少年の感覚が未《いま》だに体内に流れている事を示しているように思えたからである。もし、送電が停止されず、車内が火の海となったならば、私以外の乗客は全員焼死したかも知れなかった。私は左足をくじいただけだった。
翌日の新聞を、私は目を輝かせて開いた。私の迅速な行動について、なぜか当然、新聞が賞讃《しょうさん》の記事を書くにちがいないような気がしていたからである。
池上線の事故の記事は、社会面の左隅《ひだりすみ》に小さい見出しで出ていた。
「あわてた乗客 飛び降りてケガ」
と、いうのがその見出しの文句だった。あわてた乗客とは、私の事だった。
それ以来、私は主観と客観の落差について常にペシミスティックな判断をくだすようになった。自分だけいい気になっていても、世の中というものは、どんな事を言い出すかわからない。何らかの行動に移ろうとする時に、私の頭によみがえって来るのは、いつもその非情なフレイズだった。
「あわてた乗客 飛び降りてケガ」
新聞とは意地の悪いものである。
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