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ガダルカナル27

时间: 2020-07-30    进入日语论坛
核心提示:27 川口支隊長は「樹のない一寸した高地の反対斜面に司令部を」置いて、各部隊の状況把握に努めていたが、九月十四日午前十一時
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 川口支隊長は「樹のない一寸した高地の反対斜面に司令部を」置いて、各部隊の状況把握に努めていたが、九月十四日午前十一時前には夜襲の失敗を認めざるを得なくなった。
敵から一時離脱してルンガ川左岸(南西地区)に兵力を集結整頓し、後図を策する決心をしたのが午前十一時五分であって、第十七軍司令部に攻撃失敗の経緯と支隊長の決心を打電したというが、何処の無線の経路に依ったか明らかでない。というのは、既述の通り、支隊配属の軍無線は米軍の砲撃によって不通となっており、その後は旅団無線でマタニカウ左岸の海軍ガダルカナル守備隊を中継して十七軍に辛うじて連絡していたが、海軍守備隊とラバウルの間も十二日から不通となり、川口支隊と軍司令部との間の通信は全く絶えてしまっていたのである。
通信杜絶のためラバウルでは十五日まで確実なことがわからなかったが、川口支隊の十二日、十三日と二夜をかけた夜襲は、既述の経過で失敗に終り、それと同時に川口支隊には飢餓の危険が迫りはじめていた。元々、タイボ岬付近を出発するときから、九月の十三日、十四日以後は飛行場を奪取してルーズヴェルト給与をあてにしていたのであった。川口支隊に限ったことではないが、日本軍においては|屡々《しばしば》、用意周到は臆病と思われがちであり、軽率な不用意があまりに屡々勇敢と錯覚されていたのである。
こののち、後述するように、一木支隊の生き残りは勿論のこと、川口支隊の残兵も、飢餓に迫られ、急速に体力衰弱し、戦力を減耗することになる。ガダルカナルにおいては、ニューギニアにおいてもそうだが、兵士の戦いは、敵との戦いであるよりも、飢餓との戦いであり、大量の餓死を見るに至るのである。
 ガダルカナル─ラバウル間の通信が絶えてから、九月十三日、午前四時十五分、神川丸水上戦闘機が、ガダルカナル飛行場滑走路の南方端に、間隔約五〇メートルの篝火二個を認めたことと、敵の戦闘機三機が上空に在ったほかは飛行場に敵機を見ず、付近に戦火も認められない、と報告してきた。(山田日記)
海軍側はこの篝火を飛行場占領の合図ではないかと希望的に判断した。海軍部隊としては、川口支隊との間に、ガ島占領の場合、無電通信のほか、次の手段で連絡する約束をしてあったからである。
敵飛行場を使用不能に陥らしめた場合は、大松明をもって上空に対し連続円を描く。飛行場を完全占領した場合には、松明信号二個を五〇メートル間隔で同時に行なう、というのである。
十三日午前四時三十分、海軍二式陸偵二機に戦闘機九機の護衛をつけて、ラバウルを出発させた。この二機は別々に行動する飛行計画で飛び、二号機には十七軍の航空主任田中参謀が搭乗していた。田中参謀は、ガ島飛行場付近の状況が許せば、着陸して川口支隊と連絡をとることになっていたという。
午前八時四十五分、陸偵二号機(田中参謀搭乗)から「敵飛行場ニ大型小型共ニ四〇機味方戦闘機空戦中」と連絡が入り、午前十時十五分、今度は陸偵一号機から「敵ハ飛行場ヲ使用セズ」と入った。右の二つの入電は明らかに矛盾している。つづいて十時二十分、二号機から「敵機約四〇機着陸不能帰途ニ就ク」と報告して来た。
二つの偵察機からの報告が予盾しているので、十一航艦では判断に苦しんだらしいが、大体占領したものと判断して、午前十一時八分、十一航艦参謀長名で次のような電報を発したというから、それこそ判断に苦しむところである。
「川口支隊長ヨリ報告ナキモ陸偵並ニ水偵(先に篝火を報告した)ノ偵察ヲ綜合シ飛行場占領セルコト概ネ確実ト認ム(以下略)」
希望的判断の典型というより、類型化したものといえよう。田中参謀搭乗機から着陸不能帰途に就く、と報告して来ても、敢て無視しようというのである。
第八艦隊も午前十一時四十五分、「一〇三〇ガダルカナル飛行場ヲ占領セリ」と発信した。(以上各電『山田日記』)
「然るに一四〇〇偵察隊帰着し直接其の報告を聞くに」
と、連合艦隊宇垣参謀長の『戦藻録』に記されている。
「敵戦闘機と空戦あり、敵機の儼存疑の余地無く茲に於て先電を取消し未だ占領しあらざるものと通告す。(中略)
川口支隊は十一日の電を最後とし梨の|礫《つぶて》なり、恐らくジャングル内の進出意の如くならず、攻撃開始を延期せるものと認む。(以下略)」(九月十三日の項)
希望的観測は泡沫の如く消えたのである。
十七軍司令部では、二見参謀長も、右の宇垣連合艦隊参謀長同様に、川口支隊はジャングル内の進出が予定通りに捗らず、攻撃を十三日夜に延期したものと判断して、大本営の参謀次長宛てに報告した。
九月十四日零時、第十九駆逐隊司令から次の報告が入った。
「一三日二二三〇ルンガ沖ニ進入敵艦艇及飛行機ヲ認メズ、陸岸ニ接|艦《ママ》シ陸戦情況ヲ偵察セルニ飛行場東方約三Kmノ線上ニ於テ盛ニ照明弾ヲ利用シツヽ交戦中ナルヲ認ム、海岸線砲火ヲ認メズ、二四〇〇帰途ニツク」
この電報を、十四日朝、十七軍司令部では検討したが、「交戦中」という字句から味方砲兵隊が活動しているという判断が得られるほかには、楽観材料は見出せなかった。支隊主力が「飛行場東方」で交戦しているはずがないのである。
この日、十一航艦では、朝の七時から会報が開かれたが、ラバウルに出張して来ていた連合艦隊参謀長宇垣少将も列席した。席上十一航艦長官の塚原中将は、青葉支隊(第三大隊)は昨日十三日ガダルカナルの西方から岡部隊に合同したはずであるから、東西同時攻撃を企図して夜襲を今夜に延期したにちがいない、と主張した。
それに対して、宇垣少将は「それは希望的に然らん、然れ共予定の期日を経過する事已に二日なり。青葉支隊と川口支隊との連繋とれありとは認められず。従つてジャングル内にては思はざる災厄に際会せるか又は我移動を探知せられ背面敵の警戒防禦厳重なるものに衝突し不成功に終れるものと判断す。楽観を止め速に失敗の場合に応ず対策を講ずべしとなす。
本件陸軍にも通ぜしめたるも両者共希望に捕はれて頭に映ぜず。」(宇垣前掲書)
この日、昼過ぎ、先に歩四第三大隊とガダルカナルヘ同行した十七軍松本参謀から次の電報が入った。これは十二日から不通になっていた海軍ガ島守備隊の無線機を経由して入電したのである。
[#ここから改行天付き、折り返して2字下げ]
一、川口支隊ハ十四日概ネ左ノ態勢ニ在ルモノゝ如シ
[#ここから改行天付き、折り返して3字下げ]
(1)支隊主力飛行場南方ノジャングル内
(2)岡部隊飛行場南方??草原内ノ高サ二三〇m高地南方ジャングル内
(3)佐々木大隊(青葉第三大隊──引用者)ハ南方密林内
(4)海軍陸戦隊、岡、佐々木部隊ノ中間ナル如キモ不明
[#ここから改行天付き、折り返して2字下げ]
二、川口支隊攻撃開始ハジャングル内前進意ノ如クナラザル為一二日ヲ一三日ニ、一三日ヲ一四日ニ延期ノ止ムナキニ至レリ
一四日ハ二〇〇〇攻撃前進ノ予定
(以下略)──(山田日記)
[#ここで字下げ終わり]
発信者は川口支隊主力の動向をほとんど把握し得ていなかったのである。十三日夜から十四日朝へかけて、川口支隊全五個大隊のうち、少くとも旧一木支隊(熊大隊)と田村大隊(青葉大隊)と歩一二四の第一大隊は突入を敢行したのだが、青葉支隊佐々木大隊と行を共にしていた松本参謀には、その戦況も全くわかっていなかったのである。
松本参謀電によれば、川口支隊はまだ失敗していないのだ。(事実は、松本電がラバウルに届く前に、川口支隊長は改撃失敗を確認し、ルンガ川西方に兵力を集結し後図を策する決心をしている。)
ラバウルでは十四日夜の攻撃成功を祈っていた。十一航艦参謀長は午後一時十五分、次のような電報を打っている。
「第一七軍司令部ヨリ川口支隊ハ今夜敵陣ニ突入ノ算アルニ付今夜ノルンガ砲撃ハ取止メラレ度旨申入レアリタルニ付可然取計ハレタク但タイボ砲撃ハ差支ナシ」(山田日記)
事実経過を知ってしまえば、希望的観測は歯痒いばかりだが、元々希望的観測とはそうしたものであろう。
十五日朝、ラバウルの希望的観測は微塵に粉砕された。川口支隊長から決定的な電報が十七軍司令部に入ったのである。
「十二日夕刻東方陣地ノ砲兵隊ハ予定ノ如ク攻撃ヲ開始セルモ 主力ハジャングルノ進出意ノ如クナラス 十三日二二〇〇攻撃ヲ行ヒタルモ|敵ノ抵抗意外ニ大ニシテ《ヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽ》 大隊長以下多数ノ損害ヲ蒙リ 已ムナク大川(ルンガ川──引用者)左岸ニ兵力ラ集結 後図ヲ策セントス
将兵ノ健闘ニ拘ラス不明ノ致ス処 失敗申訳ナシ」(傍点引用者)
敵の抵抗意外に大にして、というのはほとんど何の説明にもなっていないと思われる。意外というからには、夜襲には火力の抵抗はほとんどないか、あっても微弱でしかないと独善的に予想していたことになる。敵の火力と戦意の旺盛は一木支隊の失敗に徴しても明らかなはずであった。白兵を拒止する陣地の構築と火線の構成は、ノモンハンの教訓に明らかなはずであった。米軍がソ連軍より劣ると判断し得る根拠を、日本軍は持っていないはずであった。
 第十七軍百武司令官は、九月十五日朝、川口支隊の失敗を知り、爾後の指針として次の命令を下した。
「|マタニカウ河河盂《ヽヽヽヽヽヽヽヽ》(含ム)|以西ニ於テ成ルヘク敵飛行場ニ近ク攻勢ノ拠点ヲ占領シ《ヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽ》敵情ヲ捜索スルト共ニ為シ得ル限リ敵航空勢力ノ活動ヲ妨害スルニ努メ 又カミンボ湾附近ニ上陸拠点ヲ占領シ 同拠点ト支隊主力間ノ交通ヲ確保ス」(傍点引用者)
これから、後述するように、川口支隊の飢餓の彷徨がはじまるのである。
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