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水平線ストーリー04

时间: 2020-08-01    进入日语论坛
核心提示:若いビールにはかなわないその11月、僕はまたハワイにいた。コマーシャルの撮影のためだ。たそがれ近いカピオラニ通りを走ってい
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若いビールにはかなわない

その11月、僕はまたハワイにいた。コマーシャルの撮影のためだ。
たそがれ近いカピオラニ通りを走っていた。
      □
「いいシャツが見つかって、よかったわね」
現地コーディネーターのクリスが言った。
「ああ」
僕は微笑《わら》いながら言った。
クリスが運転するHONDA《ホンダ》は、カピオラニ|通り《ブルヴアード》を東へ走っていた。
撮影がはじまって2日目だった。
スタイリストが日本から持ってきた男性モデル用のアロハ・シャツが、いまひとつ、CFコンテのイメージに合っていない。
僕はどうしても、自分のイメージに合ったアロハをモデルに着せて撮りたかった。
撮影を一時中止。その午後、僕は1枚のアロハを捜してホノルル中を走り回ることになった。
クルマを運転してサポートしてくれたのは、クリス。現地スタッフのひとり。なじみの仕事仲間だ。
彼女は20代の終わり頃。ホノルル生まれの白人だ。
少し麦わら色がかった金髪を、後ろに束ねて、青いバンダナを結んでいた。その年齢の白人にしては、肌はピンとはっていた。
左の耳だけに、ふたつ、ピアスの穴を開けていた。小さめのダイヤがふたつ、ハワイの陽《ひ》ざしに光っていた。
よく灼《や》けた肌に、白いタンクトップ、薄いピンクのショートパンツ。エイヴィアのテニスシューズでHONDAのアクセルをふんでいた。
      □
 昼から約5時間。僕らは、ホノルル中の店を走り回った。
そして、夕方近く、やっと気に入ったシャツを見つけることができた。アンティックではない。けれど、渋く美しい色調のアロハ・シャツだった。
「じゃ、とりあえず乾杯しよう」
僕は言った。ノドが乾いていた。クリスもうなずく。ステアリングを左に切った。
      □
 クリスは、Sホテルのパーキングにクルマを入れた。
僕らはホテル1階のロビーを通り抜けていく。海に面したガーデン・バーに歩いていく。
ガーデン・バーは、プールサイドの端にあった。すぐ前の砂浜からも入れるようになっている屋外のバーだ。
丸いカウンター。テーブル席も10個ぐらい。
夕方の一杯を飲む客たちが、パラパラと坐っていた。
僕らは、並んでカウンターに坐った。
「よお、クリス」
と初老のバーテンダー。笑顔を彼女に向けた。クリスとは、かなり親しいらしかった。
「とにかくビール」
僕は言った。クリスは、うなずく。
カウンターの中のバーテンダーに向かって、
「ねえ、ダグ、今日は何ビールがおいしいの?」
と、きいた。バーテンダーは、ビール類の入っているクーラーを開ける。のぞき込む。しばらくビールのビンを調べて、
「入ったばかりのクアーズがあるね」
と、クリスに言った。クリスは、
「じゃ、それを2本」
と言った。バーテンダーは、うなずく。僕らの前に、クアーズのビンとグラスを置いた。
僕は、自分でクアーズを注ぎながら、胸の中でうなずいていた。
いま、クリスがバーテンダーにきいたことの意味がよくわかる。
簡単に言うと、こうだ。ビールの味を決めるのは、とにかく新鮮さなのだ。製造されてから何日たっているかが味を決める。
ハワイのオリジナル・ビールとされているプリモだって、実はカリフォルニアでつくられているのだ。あとは鮮度だけだ。バドワイザーでも、ミラーでも、サッポロでも、とにかく、新しいビールがおいしいビールなのだ。
「じゃ、あのアロハ・シャツに乾杯」
僕とクリスは、軽くグラスを合わせた。
「それと、第二の独身生活に」
僕は、つけ加えた。クリスが先月離婚したことを、僕は本人の口からきいたばかりだ。クルマを運転しながら、明るい口調で彼女は話してくれた。
やはり同じ撮影関係の仕事をしていた夫に、19歳の恋人ができた。子どもはいなかった。離婚は簡単だった。そして、クリスはまた、仕事に完全に復帰した。
海風が涼しくなってきはじめていた。僕らはのんびりとビールを飲んでいた。グラスのクアーズをながめて、クリスがふと、
「やっぱり、新鮮なものにはかなわないわねェ……」
と、つぶやいた。かすかに苦笑いを浮かべた。耳のダイヤが、たそがれの陽《ひ》ざしに淡く光った。
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