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水平線ストーリー05

时间: 2020-08-01    进入日语论坛
核心提示:64歳バーには、古いジューク・ボックスがあった。アンティックと呼べるほど、風格のあるものではない。けれど、ジューク・ボック
(单词翻译:双击或拖选)
64歳

バーには、古いジューク・ボックスがあった。
アンティックと呼べるほど、風格のあるものではない。
けれど、ジューク・ボックスを置いてあるバーは、ホノルルの街でも少ない。
好きな曲を聴きながら、たそがれの一杯を飲むのが、僕は好きだ。
滞在しているホテルから近いこともあって、僕はよくその店にいった。
その日の撮影《ロケ》が終わった日没の頃、ぶらりと1人で飲みにいった。
古いジューク・ボックスには、やはり、お似合いの古い曲が入っていた。
60年代、70年代の曲が多かった。まだ僕が10代だった頃の曲……。
少しくたびれたスピーカーから流れてくるそんな思い出のフレーズに耳をかたむけながら、グラスを口に運ぶのは、悪くなかった。
その老人と出会ったのも、そのバーだった。
      □
 金曜日だったせいもあって、バーはかなり混んでいた。
5つあるテーブルも満席。カウンターのスツールは、僕のとなりの1つしか空《あ》いていなかった。
その老人が入ってきたのは、そんな時だった。
白人。60代だろう。太りぎみの体をアロハ・シャツに包んでいた。
アロハの柄からして、地元の人間ではない。ごく普通の観光客だろう。
老人は、僕のとなりに歩いてきた。スツールを指さすと、
「空いているかい?」
と言った。僕はうなずく。そのスツールに置いてあった自分のトレーナーをどけた。
「ありがとう」
老人は僕に微笑《わら》いかける。どっしりとした体を、スツールにのせた。バーテンダーに、COORS《クアーズ》を注文した。
やがて出てきたCOORSを、グイとひと息。グラスの半分ぐらいが空になる。
老人は席を立つ。ジューク・ボックスに歩いていく。
|25セント玉《クオーター》を入れる。スイッチを押す。
流れはじめたのは、ビートルズの曲だった。
席に戻ってきた老人は、僕の表情を見ると、
「何か不思議かい?」
と、きいた。
「その年齢《とし》でビートルズとは……」
微笑《わら》いながら言いかけた僕に、
「特にビートルズが好きというわけじゃないんだ。あの曲名が気に入っててね」
老人は、微笑い返しながら言った。
「そうか……」
曲は〈ウェン・アイム・シクスティー・フォー〉だった。
「もしかして、あなた自身が64歳?」
ときく僕に、老人は、うなずく。
「そう……私も妻《ワイフ》もね」
と言った。
「奥さんも? ということは、学生時代に知り合ったとか?」
老人は、うなずく。
「アラバマ州の小さな町の小さな高校でね」
「そのまま、結婚?」
「私が大学を卒業して、会社に勤めてからだがね」
と老人。大手の食品会社の名前を言った。
「じゃ……いまは、会社をリタイアして、優雅にハワイ旅行?」
老人は、軽くうなずくと、
「新婚旅行《ハネムーン》が、このハワイだったんだ」
と言った。
「それ以来、毎年、いまの時期になると、ハワイにやってくるわけさ」
と言った。
僕は、うなずく。
「奥さんには、ひと目|惚《ぼ》れ?」
と、きいた。老人は半分苦笑い。ゆっくりと、うなずきながら、
「ギンガム・チェックのワンピースが似合う、かわいい少女だった……」
と、つぶやいた。
「あなたは?」
「ニキビだらけのフットボール選手だった」
と老人。白い歯を見せると、
「よく2人でバスケットを持ってピクニックにいったもんだった……」
と、つぶやいた。遠くを見た。
「で? その奥さんは、いま?」
「ああ、ちょっとカゼぎみで部屋にいるよ」
と老人。話題を変えると、
「ところで、君は観光に?」
「いや。広告写真の撮影にきていて……」
と僕は話しはじめた。たそがれの陽《ひ》が、グラスのふちに光っていた。
      □
 翌日も、老人は1人でバーにやってきた。
僕のとなりに坐ると、とりとめのない話をした。
翌々日も、同じだった。
さらにつぎの日。カラカウア|通り《アベニユー》で老人を見かけた。1人で、少し淋《さび》しそうに歩いていた。
僕は、ふと思った。老人の妻は、もう、いないのではないか。妻と毎年きていたハワイに、思い出を求めて老人はやってきたのではないか……。
1人で歩いている老人の姿をクルマの窓から見て、僕は思った。
2日後。撮影は、タレントのつごうで|休み《オフ》。
遅い午後。僕は、部屋のベランダでパパイヤを食べていた。
ホテルのとなりに広がっている公園。その芝生で、老夫婦がピクニックをしているのが見えた。
あの老人だった。やはり太りぎみの妻と並んで、陽ざしを浴びていた。
僕は望遠のズーム・レンズをカメラに装着して、見た。
老人は、あい変わらずビール。妻は、白ワインを飲んでいた。プラスチックのコップのビールと白ワインに、昼下がりの陽ざしが揺れていた。
いつか僕が64歳になったとき……。
あんなふうに、陽ざしの中でおだやかに微笑《わら》っていられるのだろうか。
そんなことを思いながら、僕はレンズをズーム・バック。芝生をめいっぱい広くフレームに入れて、シャッターを切った。
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