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水平線ストーリー08

时间: 2020-08-01    进入日语论坛
核心提示:カラカウア・アベニューの通り雨雨粒が、ひとつ、ふたつ、ショートパンツから出ている僕の足に当たった。陽《ひ》に灼《や》けた
(单词翻译:双击或拖选)
カラカウア・アベニューの通り雨

雨粒が、ひとつ、ふたつ、ショートパンツから出ている僕の足に当たった。陽《ひ》に灼《や》けた足に、雨粒の冷たさが気持ち良かった。
僕はレストランの出口で立ち止まる。空を見上げた。となりでパメラが、
「|通り雨《シヤワー》ね……」
と、つぶやいた。昼下がりのホノルル。カラカウア|通り《アベニユー》に、キラキラと光る天気雨《シヤワー》が降り注いでいた。
僕はまた、ハワイにきていた。CFの撮影《ロケ》だった。現地モデルを使い、泊まっているホテルのプールサイドで撮影する予定だった。
きょう、プロデューサーのJは、モデル・オーディションの打合わせにいっている。ディレクターの僕は、プールの撮影について打合わせをする必要があった。いつ、どんな角度からプールを撮影するのか、ホテル側と打合わせをすることになっていた。
ホテルのオーナーは、ミスター・ハワード。白人の資産家で、ハワイ銀行の役員でもあった。が、ホテルの実質的な切り回しは、夫人のパメラに任されていた。
パメラは、ハワイ育ちの白人だった。資産家の夫人らしく、上品で知的だった。けれど、いかにもハワイ育ちらしく昼間はいつも、ポロシャツにショートパンツで、ホテルの中を動き回っていた。
僕が撮影の打合わせにいくと、
「お昼を食べながら話をしましょう」
とパメラ。気さくに微笑《ほほえ》んだ。僕を、カラカウア|通り《アベニユー》の日本食レストランに連れていった。僕に気を使ったのではなく、ハワイ育ちの人はみな、日本食が好きなのだ。
僕らは、プリモ・ビアーを飲み、巻き《ロール》寿司を食べながら、撮影の打合わせをした。大きな問題点は何もなかった。
僕らがレストランを出ようとしたときだった。通り雨が降りはじめていたのだ。
「行こう。濡《ぬ》れて困るスタイルじゃないし」
僕は言った。僕もパメラも、ショートパンツにスニーカーだった。僕らは、ゆっくりと歩きはじめた。僕らと同じように、地元の人はみな、光る雨粒の中を平気で歩いていた。雨やどりしているのは、だいたい日本人観光客だった。それを見て、
「国民性なんだな」
僕は、苦笑まじりに言った。
「でも……ああいう日本人が、うらやましいと思ったこともあるわ」
とパメラ。微笑《ほほえ》みながら言った。
「うらやましい?」
ときき返す僕に、パメラはしばらく無言。僕と並んで歩く。やがて、ぽつりと、
「私が、まだ、ハワイ大学の1年生の頃だったわ……。恋をしたの……」と言った。
「恋?」
「そう。相手は、仕事も持ってないハワイアンのサーファーでね。好きだったけど、まだ子供だった私はそれを告白できなくて……。最後に会ったのは、カラカウアのハンバーガー屋だった。告白できないままハンバーガーを食べ終わって、店を出ようとしたら、いまみたいにシャワーが降ってきたの。でも、二人ともハワイ育ちだから、ごく自然に歩き出すしかなくて……。もしこれが日本人だったら、そこで雨やどりして……もしかしたら、その間に告白できたかもしれないなんて、ふと思ったこともあったわ……」
「……もし、告白できてたら?」
「さあ……。どうなってたか……」
とパメラ。淡く苦笑い。空を見上げた。
通り雨のように過ぎていった日のことを思い出しているのだろうか。僕には、わからない。昼下がりのカラカウア通り。ヤシの葉に、ホテルの白い建物に、天気雨は降りそそぐ。僕とパメラは、そのシャワーの中を、ホテルに向かってゆっくりと歩いていった。
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