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水平線ストーリー15

时间: 2020-08-01    进入日语论坛
核心提示:パイナップルが歩くときレニーが描いたパイナップルやバナナと出会ったのは、もう、3、4年前のことになる。ホノルルだった。よ
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パイナップルが歩くとき

レニーが描いたパイナップルやバナナと出会ったのは、もう、3、4年前のことになる。
ホノルルだった。よく晴れた日だった。僕は、ひとり、ユニバーシティ|通り《アベニユー》を歩いていた。
ふと、1軒の店の前で足をとめた。〈Gallery《ギヤラリー》〉と木の看板が出ていた。ハワイらしく、カジュアルなつくりの店だった。僕は、ぶらりと中に入った。
床は板張り。狭いギャラリーだった。壁に何点かの絵がかけてあった。僕は何気なく1枚の絵の前に立った。
不思議な絵だった。パイナップルが青で描《か》いてあった。それでいて、変な感じはしない。
「それ気に入ったの?」
と声がした。ふり向く。店員らしい女の子が立っていた。日系ハワイアンらしい。ポチャッと、可愛《かわ》いらしい顔立ちだった。
「その絵、気に入ったら安くしておくわよ。私が描《か》いたものだから」
彼女は微笑《ほほえ》みながら言った。
「君が?」
「そう。もっとあるわよ。見る?」
と彼女。奥から6、7点の絵を持ってきた。どれもパイナップルやバナナだったが、青とか銀とか不思議な色調で描かれていた。それなのに、なぜかトロピカルでほのぼのとした雰囲気が漂っている。
彼女はレニーと名のった。絵描きの卵で、このギャラリーでバイトしているのだと言った。絵は売れるかときく僕に、これから売れるはずよ、とレニーは言った。
そのとき絵は買わなかったけれど、ホノルルにくるたびに、そのギャラリーに立ち寄るようになった。レニーはいつも店番をしていた。
絵は売れたか、ときく僕に、レニーはいつも、これからよ、と答える。彼女の絵の売れゆきはあまり良くないらしい。けれど、そこはのんびりしたハワイ育ちだ。いつも、ニコニコしながら、たぶんそのうち売れるわよ、とレニーは言うのだった。
最初にレニーの絵と出会ってから、2年ぐらいたった夏。僕はまたホノルルにきた。そのギャラリーに寄ってみた。
あい変わらず、レニーは店番のバイトをしていた。けれど、彼女が着ている服を見て、僕は思わず、
「え?……それ……」
とつぶやいた。レニーが着ているアロハ・シャツの柄は、彼女の絵そのものだった。青いパイナップルの柄だった。
「売れたのよ、絵が。シャツの会社に」
「アロハ・シャツの会社?」
「そう。そこの社長が気に入ってくれて、私の絵をプリントしたアロハが、何種類か、今月から街で売られているの」
レニーは、嬉《うれ》しそうに言った。
「そりゃ良かった……」
僕は言った。レニーの描いた絵がプリントされて、街でみんなが着ているところを想像してみた。
「ホノルルの街全体を会場にして個展をやっているようなものだな」
「そういうことね」
ニコニコしてレニーは言った。
「それに、私が描いたパイナップルにしても、絵の中におさまってるより、街中を歩き回される方が楽しいに決まってるものね」
「歩き回るパイナップルか……」
「そう。いいでしょう」
とレニー。店の外を指さして、
「ねえ、見て。絵が売れたおかげで買いかえられたの」
と言った。店の前に、ホンダの新車が駐《と》めてあった。
「バイトが終わったら、あれでチャイナ・タウンにいって乾杯しましょう」
心の底から嬉しそうに、レニーは言った。
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