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水平線ストーリー26

时间: 2020-08-01    进入日语论坛
核心提示:ジョンとメリーたそがれのホノルル。アラ・モアナ|通り《ブルヴアード》を、鮮かな色の熱帯魚が泳いでいた。僕は、「ストップ」
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ジョンとメリー

たそがれのホノルル。
アラ・モアナ|通り《ブルヴアード》を、鮮かな色の熱帯魚が泳いでいた。
僕は、
「ストップ」
と思わず言った。クルマのステアリングを握っていたケンが、ブレーキをふんだ。
FORDのヴァンは、つんのめるように駐《と》まった。
      □
 僕とケンは、駐めたヴァンからおりる。歩道を、そのショー・ウインドウに向かって歩いていく。
ビルの1階。小ぎれいな店のショー・ウインドウに、その熱帯魚はいた。
正確に言うと、熱帯魚の形のネオンサインは飾られていた。
熱帯魚だけではない。さまざまな形のネオンサインが飾られていた。
ヤシの樹。パイナップル。星。そして、ひときわ赤く、〈ROMEO《ロミオ・》 &《アンド・》 JULIET《ジユリエツト》〉をハート型が囲んだネオンサインが輝いていた。
どうやら、ネオンサインの店らしい。
「面白そうだね」
ケンが言った。僕もうなずく。
「のぞいてみるか」
と言った。きょうのロケハンは、もう終わった。あとは、シャワーを浴びて夕食にいくだけだ。時間は、たっぷりとある。
僕とケンは、その店の入口に歩きはじめた。
      □
 ポスターと雑誌広告の撮影《ロケ》だった。
新発売される缶ジュースのキャンペーンだ。ポスターはとにかく、雑誌広告のカット数が多い。ホノルルを中心に、あちこちで撮影する必要があった。長いロケになりそうだった。
ロケ場所さがしに、アート・ディレクターのMとカメラマンの僕が、まずハワイにやってきた。僕は、現地コーディネーターで親友のケンと、Mはケンの事務所のスタッフと、2組に分かれてオアフ島をロケハンしていた。
ロケハンも4日目。ロケ場所のめやすも、かなりつきはじめていた。気分が楽になってきたところだった。
僕とケンは、店のドアを押す。中に入った。
中年の白人男がいた。太って眼鏡をかけていた。テーブルに足をのせて〈ホノルル・アドバタイザー〉を読んでいた。
僕らを見ると、白人男は読んでいた新聞をたたむ。
「やあ」
と白い歯を見せた。どうやら、この店の人間らしかった。
「オーダーかい?」
と、僕らにきいた。
「オーダーでネオンをつくってくれるのか?」
僕は、きいた。男の太い首が、うなずいた。
「もちろん。なんでもつくるよ。あそこにあるのは、ほんの見本さ」
と白人男。ショー・ウインドウに並んだネオンを指さした。
僕は、ショー・ウインドウのネオンたちをながめた。それぞれに、値段がついていた。
白人男は僕の視線に気づくと、
「見本用につくったんだけど、欲しい客には売るんだ」
と言った。
「けど、やっぱり、オーダーがいい」
と白人男。自分のすぐ横にあるネオンを指さすと、
「こいつなんかも、3日前にできたオーダー品でね」
と言った。それは、ショー・ウインドウの〈ロミオとジュリエット〉と同じデザインだった。ハート型の中に〈JOHN《ジヨン・》 &《アンド・》 MARY《メリー》〉の文字。赤く輝いている。
〈ジョンとメリー〉……。確か、かなり以前にヒットした小説のタイトルだ。ダスティン・ホフマンの主演で映画化もされた。パーティーで出会った男と女が一緒に暮らしはじめるストーリーだった。
「オーダーした二人の名前なんだ」
白人男が言った。つけくわえて、
「なんでも、もうすぐ結婚する二人で、自分の家の窓にこいつを飾るらしい」
僕は、うなずいた。ジョン。メリー。平凡な、どこにでもある名前だ。
      □
 ロケハンが終わって、ロケの本隊がやってきた。スタッフたちと、忙しく駆け回りはじめた。
そんなロケの2週間目。
僕らは、たまたま、あのネオンサイン屋の前を通った。
〈ロミオとジュリエット〉のとなりに、〈ジョンとメリー〉のネオンも並んでいた。
僕はクルマを駐《と》めさせる。店に入った。白人男が、ビッグ・マックをかじっていた。
「あいつは、売り物になったのかい?」
僕は〈ジョンとメリー〉のネオンを指さした。ウインドウにある〈ジョンとメリー〉には、値段もついている。
「ああ、いつまでたってもとりにこないし、何回電話しても出ないんでね」
と白人男。
「結婚が何かでぶちこわしにでもなったんじゃないのか」
と言った。やれやれという表情で、肩をすくめた。
      □
 さらに5日後。ロケの最終日。たそがれ。
僕らのヴァンは、また、ネオンサイン屋の前を通った。僕は、クルマを駐めさせる。助手席から、ショー・ウインドウをながめた。
〈ジョンとメリー〉のネオンサインは、姿を消していた……。
物好きな誰かが買っていったのか。オーダーした本人たちがやっととりにきたのか。
クルマをおりようとして、僕は、やめた。本人たちがとりにきた。そう思うことにした……。
助手席の窓ガラスをおろす。僕は、キャノンF—1をとり出した。フィルムはまだ何枚か残っている。
望遠レンズを、店のショー・ウインドウに向けた。〈ロミオとジュリエット〉をフレームいっぱいに入れる。
たそがれのアラ・モアナ|通り《ブルヴアード》。涼しく乾いた海風が吹いていく。
F5.6。8分の1秒。僕は、息をとめ、そっとシャッターを切った。
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