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水平線ストーリー30

时间: 2020-08-01    进入日语论坛
核心提示:カリフォルニアで寄り道ロス・アンゼルス。午後2時。サラサラとした、パウダーのような陽射《ひざ》しが、南カリフォルニアの空
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カリフォルニアで寄り道

ロス・アンゼルス。午後2時。
サラサラとした、パウダーのような陽射《ひざ》しが、南カリフォルニアの空から降り注いでいた。気温は夏なのだけれど、陽射しも風もサラリと乾いて、歩いている僕らは、汗ひとつかかなかった。
僕とエミーは、ロスの中の学生街、ウエスト・ウッドを歩いていた。エミーは、日本の撮影《ロケ》チームのガイドだった。専門用語では、コーディネイターと言う。
CFディレクターの僕とエミーは、撮影に使うジョギング・シューズを探していた。ウエスト・ウッドはU・C・L・Aのある学生街だから、スポーツ用品の店も多い。目的のジョギング・シューズは、すぐに見つかった。
スポーツ用品店を出た僕とエミーは、ひと息つくために、カフェに入った。イエスタデイズ。過ぎた日々という名の店だ。僕らは、2階のベランダにある席に坐った。僕はフローズン・マルガリータ。エミーはワイン・クーラーを注文した。ウエスト・ウッドの通りをながめながら、ゆっくりと飲みはじめた。
エミーは日系三世だった。顔は、100パーセント、日本人。英語と日本語を自由に話せる。年齢《とし》は、僕より少し下。27歳か28歳というところだろうか。
カリフォルニアの人らしく、よく陽灼《ひや》けしていた。笑うと歯が白い。そして、よく笑う。コットンのサマー・ドレスを着て、白いテニスシューズをはいていた。
エミーはウエスト・ウッドにくわしかった。僕がそのことをきくと、大学がU・C・L・Aだからと答えて、校門の方を指さした。
「U・C・L・Aを卒業したのか」
僕がそうきくと、
「まだ卒業はしていないの」
微笑《ほほえ》みながら、エミーは答えた。
U・C・L・Aには、美術史の勉強のために入った。けれど、2年までいって、学費がたりなくなってしまった。親に頼るのは嫌なので、学費を自分で稼ぐことにした。大学は休学。撮影のコーディネイターとして働きはじめた。そんなことを、エミーはぽつりぽつりと話しはじめた。アルバイトのつもりではじめたいまの仕事が、とても気に入ってしまい、もう8年になるという。
「もう大学へは戻らないのかい?」
僕がきくと、
「いずれ戻って卒業するわ。いまは、ちょっと寄り道よ」
とエミー。ワイン・クーラーを飲みながら言った。微笑んだ。
僕ら日本人は、ベルト・コンベアーのような生き方をしていると安心する。高校は3年、大学は4年で、きっちり卒業する。そして就職。ほとんどの人間が、そんな流れ作業のような生き方をしている。それがいいのか悪いのかは、僕にはわからない。
ただ、〈ちょっと寄り道よ〉と言ったエミーの口調は、ごく自然で、とても良かった。8年間の寄り道。そして、その気になったら大学に戻る。そんな自由な生き方も悪くないと僕は思った。エミーが年齢よりずっと若く見えるのも、まだ大学を卒業していないせいかもしれない。そう思った。
東京にも、卒業のシーズンがやってきた。FMから流れる〈卒業写真〉を聴くたびに、僕はふとエミーのことを思い出す。
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