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水平線ストーリー34

时间: 2020-08-01    进入日语论坛
核心提示:海に向かって「グッド・ラック」とつぶやいた「あのもしかして」という声。僕の斜め後ろからきこえた。ぼんやりと立っていた僕は
(单词翻译:双击或拖选)
海に向かって「グッド・ラック」とつぶやいた

「あの……もしかして……」
という声。僕の斜め後ろからきこえた。
ぼんやりと立っていた僕は、ふり向いた。
「やっぱり……」
と彼女。
「真紀《まき》……」
僕も、思わずつぶやいた。
数秒は、お互いに無言。うまく言葉が出てこない。じっと相手を見つめていた。
まっすぐに相手を見つめる真紀のくせは、5年前と変わっていなかった……。
      □
 午前9時。
ホノルル。Hホテルのロビー。
僕ら撮影《ロケ》隊は、この1階ロビーで待ち合わせをしていた。
スタッフのほとんどは集合していた。が、カメラマンとそのアシスタントが、まだ部屋からおりてこない。
僕らは、のんびりと雑談をしながら、カメラマンがおりてくるのを待っていた。
真紀に声をかけられたのは、そんなときだった。
僕は、ほかのスタッフから数メートルはなれる。真紀と、あらためて向かい合った。
「……ひさしぶり……」
と僕。
「本当に……」
と真紀。僕と一緒にいた撮影スタッフたちをチラリと見ると、
「あい変わらず、ロケ?」
と、きいた。僕は、うなずく。
「君は?」
僕は、彼女をながめた。
彼女は、ひとりだった。ストレート・ヘアーは以前のまま。青いタンクトップ。小さな金のピアス。ホワイト・ジーンズ。トップサイダーをはいていた。
顔や腕に、5年前ほどの陽灼《ひや》けはない。
無言の彼女にかわって、
「ハネムーン?」
と僕はきいた。今度は、彼女がうなずいた。
「そうか……で、ダンナは?」
「いま、レンタカーを借りにいってるの」
と彼女。
「それにしても、遅いわねェ」
と言った。腕時計を見た。オーソドックスなデザインのローレックスを左腕にしていた。
僕がそれをじっとながめているのに、彼女は気づく。
「何か不思議?」
数秒考えて、僕はうなずいた。
「あの頃の君は、絶対に腕時計をしなかった……」
と僕は言った。
「そうだったわね」
と彼女。僕らは、ふと黙り込む。お互いに、過ぎた日のことを思い出していた。
はじめて彼女と出会ったのは7年前。
きっかけは、仕事だった。
その頃、僕は駆け出しのCFディレクターだった。
缶ジュースか何かのCFで、ウインド・サーフィンができてルックスのいい女の子が必要になった。
いろんな大学の部やサークルを回った。そして見つけたのが真紀だった。
撮影は、やはりハワイだった。10日間、彼女を使ってあちこちのビーチで撮影をした。
彼女は、19歳だった。笑顔が無邪気だった。どんな風の強い日でも、怖がらずに海に出ていった。
おかげで、撮影は順調に終わった。
帰国する。彼女のCFがオン・エアされる。いくつかのモデル・クラブやタレント事務所から誘いがあったらしい。けれど、彼女はすべて断った。
そのかわり、いつしか僕と個人的につき合うようになっていた。ひとり暮らしをしていた僕の部屋に、よく遊びにくるようになった。
彼女は意外に家事ができた。きちんとした家庭に育ったようだ。よく、僕のアロハ・シャツをつくろってくれた。
その頃から、僕は古着《アンテイツク》のアロハが好きだった。ハワイ・ロケにいくたびに何枚も買い込んできた。
しかし、いいアンティック・アロハはよくほころびた。それを彼女はていねいにつくろってくれた。そんな優しさがあった。
けれど、彼女にも恋人としての欠点はあった。腕時計を決してしないのだ。きゅうくつで嫌だという。おかげで僕は、よく待ちぼうけをくわされた。
「そうだったわね……」
と彼女。苦笑い。
「やっと、腕時計をするようになったか」
という僕に、
「5年もすれば、人間、変わるわよ」
彼女はホロ苦く微笑《わら》った。ささいなことから別れた5年前を、僕はふと思い出していた。
「あなたも、アロハをつくろってくれる人を見つけたみたいね」
と彼女。エリもとがつくろってある僕のアロハを見た。
僕は、まだ独身だった。たまたま、すでにつくろってあったアンティック・アロハを店で買ったのだ。
けれど、僕はそのことを言わなかった。微笑《ほほえ》みながら、うなずいた。彼女も、かすかにうなずき返す。
「また、たそがれの一杯を一緒にやれたらよかったのにね……」
彼女が、つぶやいた。
「きょうのたそがれは?」
「彼がはじめてのハワイだから、サンセット・クルーズよ」
「じゃ、君は船の上、僕はホテルのベランダで、時間を合わせて乾杯しよう」
僕は言った。
「君はもう時計を持ってるんだし」
「……そうね」
彼女は、ほんの少し淋《さび》しそうにうなずいた。
      □
 午後6時10分前。
ロケから帰った僕は、ホテルのベランダに出た。みごとな夕焼けが広がっていた。
海面にサンセット・クルーズの船が出ていた。その上で、彼女はカクテル・グラスを手にしているのだろう。
6時ジャスト。決めておいた時間だ。
彼女は、左腕のローレックスを見たかもしれない。
僕も、ベランダの手すりにヒジをついたまま、グラスをほんの少し上げた。彼女への〈長いお別れ〉と〈グッド・ラック〉を胸の中でつぶやいた。
海風……。ひんやりと涼しい貿易風が、アロハのスソを揺らして過ぎた。
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