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十二国記011

时间: 2020-08-18    进入日语论坛
核心提示: 突堤の端から身を乗り出して陽子は吐いた。 泣きじゃくりながら海中投げこまれたテトラポッドをつたって水のなかに飛びこむ。
(单词翻译:双击或拖选)
 突堤の端から身を乗り出して陽子は吐いた。
 泣きじゃくりながら海中投げこまれたテトラポッドをつたって水のなかに飛びこむ。今は二月もなかばで、海の水は身を切るほど冷たいことは、まったく念頭に浮かばなかった。とにかく、頭からかぶった血糊を洗い落としてしまいたかった。
 無我夢中で水をかぶって、それでようやく落ちつくと、水のなかから這《は》いのぼることさえできないほど震えた。
 のろのろと這いのぼって突堤に戻り、そこであらためて声をあげて泣いた。恐怖と嫌悪《けんお》で泣かずにはおれなかった。
 声が嗄《か》れるほど泣いて、泣く気力さえつきたころにようやくケイキが声をかけてきた。
「もう、よろしいか」
「……なに……」
 ぼんやりと顔をあげると、ケイキの表情にはなんの色もない。
「これが追っ手のすべてではありません。じきに次の追っ手が来る」
「……それで?」
 神経のどこかが麻痺《まひ》したようだった。追っ手という言葉に恐怖を感じず、男をまっこうからにらむことにも気後《きおく》れを感じなかった。
「追っ手は手ごわい。お守り申しあげるには、私ときていただくほかはありません」
 陽子はそっけなく返した。
「いや」
「分別のないことをおっしゃる」
「もうたくさん。あたし、家に帰る」
「家に帰ったからといって、決して安全ではない」
「もういいの、どうだって。寒いから家に帰る。……ばけものを取ってよ」
 男は陽子を見すえた。その目を陽子も淡々と見返す。
「あたしの身体に張りついてるんでしょ。ジョウユウとかいうばけものを取って」
「それは当面、あなたに必要なものだ」
「必要ない。あたし、家に帰るから」
「どこまでおろかな方か!」
 怒鳴られて、陽子は目を見開く。
「死んでいただいては困る。否とおっしゃるなら、むりにでもおいでいただきます」
「勝手なことばかり言わないで!」
 陽子は叫んだ。他人を怒鳴りつけたのは記憶にある限り、生まれてはじめてのことだったが、いったん叫んでしまうと、身内には奇妙な高揚感《こうようかん》があった。
「あたしがなにをしたっていうのよ! あたしは、家に帰るの。こんなことに巻き込まれるのはもういや。どこへも行かない。家に帰る」
 突きつけられた剣を、陽子は乱暴に手で払いのけた。
「あたしは、家に帰りたいの! あなたに指図なんかさせない!」
「危険だと申しあげているのがおわかりにならないか!」
 陽子は薄く笑ってみせる。
「危険でもいい。あなたには関係ないでしょ」
「関係なくはない」
 男は低く吐き捨てて、陽子の背後に目線でうなずく。まえぶれもなく背後から二本の白い腕が伸びて、陽子の腕をつかんだ。
「なにをするのよ!?」
 ふりかえると、最初に剣を持って現れた鳥のような女だった。女は陽子の腕をつかんで無理やり剣を抱かせる。そのまま羽交《はがい》いじめにするようにして抱きかかえた。
「放して!」
「あなたは私の主《あるじ》です」
 言われて陽子はケイキを見あげる。
「主?」
「主命とあれば、どのようなことでもお聞きするが、あなたの命がかかっている。今はお許しいただきます。まずはお身の安全を図《はか》り、事情をお聞きいただいて、その上でお帰りになりたいとおっしゃるのなら必ずお送り申しあげます」
「あたしがいつあなたの主人になったの? 勝手にやってきて、なんの説明もなしに勝手なことばかり。ふざけないでよ!」
「説明申しあげる猶予はありません」
 言ってケイキは、底冷えのする視線を陽子に向ける。
「私としてもこんな主人は願い下げだが、こればかりは私の意のままにならない。主人を見捨てることは許されない。ましてや無関係な人々をまきこむことは絶対に避けねば。否というなら力ずくでもおいでいただく。──カイコ。そのままお連れせよ」
「いや! 放して!」
 ケイキは陽子をふりかえらない。
「ハンキョ」
 呼ばれて赤い毛並みの獣が物陰から現れる。
「離れて飛べ。血の臭いが移る」
 次いでヒョウキ、と呼ばれて巨大な豹《ひょう》に似た獣が姿を現した。女は陽子を羽交いじめにしたままその背を跨《また》ぎ越す。
 ふうわりと、同じようにハンキョに跨《またが》った男に陽子は訴えた。
「冗談じゃないわよ! 家に帰して! せめてあの、ばけものを取って!!」
「別に邪魔になるわけではないでしょう。ジョウユウが憑《つ》いていたからといって、なにかを感じるわけではないはずだ」
「それでも気味が悪いの! 取りなさいよ!」
 ジョウユウ、と陽子のほうをふり向いて男は命じる。
「決して姿を現さず、ないものとしてふるまえ」
 これに対して返答はなかった。
 ケイキがうなずくと、陽子を乗せた獣が立ちあがった。とっさに自分を抱えた女の腕にしがみつくと同時に、獣は音もなく跳躍する。
「……いやだってば!」
 陽子の叫びを無視して獣は抵抗なく宙へ向かって駆けあがった。
 まるでゆるやかに宙を泳ぐようにして高度を増す。地面が眼下を遠ざかっていかなければ、動いていないのかと錯覚するほど獣の動きは穏やかだった。
 獣は宙を駆ける。夢のように地上は遠ざかって、日暮れた街の姿をあらわにした。
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