日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 作品合集 » 正文

十二国記015

时间: 2020-08-18    进入日语论坛
核心提示: 荒れた波が打ち寄せる砂浜だった。 ふと気がつくと、陽子は波打ち際に倒れていた。 陽子が倒れた場所から波が砂を濡らしてい
(单词翻译:双击或拖选)
 荒れた波が打ち寄せる砂浜だった。
 ふと気がつくと、陽子は波打ち際に倒れていた。
 陽子が倒れた場所から波が砂を濡らしている場所まではすこしだけ距離があったが、水の打ち寄せる勢いが激しい。しぶきが陽子の顔にかかって、それで目を覚ましたのだと分かった。
 陽子は顔をあげる。ひときわ大きな波が押し寄せてきて、砂の上を這《は》った水が倒れた陽子の爪先を濡らした。不思議に冷たい気はしなかったので、陽子はそのままそこに横たわっている。爪先を波が洗うにまかせた。
 濃く潮の匂いがする。潮の臭いは、血の臭いに似ている、と陽子はぼんやりそう思った。ひとの体の中には海水が流れている。だから、耳を澄ますと身内から潮騒《しおさい》の音がする。そんな、気がする。
 また大きな波が打ち寄せてきて、陽子の膝のあたりまで水が押し寄せてきた。波にさらわれた砂が膝をくすぐる。濃厚な潮の匂いがした。
 ぼんやりと足元をながめていた陽子は、引いていく水に赤い色が混じっているのに気づいた。ふと目線を沖へ向ける。そこには灰色の海と灰色の空が広がるばかり、赤い色はどこにもない。
 また波が打ち寄せてきた。引いてく水がやはり赤い。色の出どころを探して、陽子は目を見開いた。
「……あ」
 赤い色の出どころは自分の足だった。波が洗う爪先から、すねから、赤い色が溶け出している。
 あわてて両手をついて体を起こした。よくよく見てみると手も足も真っ赤で、制服までが赤黒い色に変色してしまっている。
 陽子は小さく悲鳴をあげた。
 ──血だ。
 全身が、浴びた返り血で真っ赤に染まっている。両手はほとんど黒く見えるほど赤くて、かるく手をにぎってみると恐ろしく粘った。そっと触れると、顔も髪も同じように粘つくものでおおわれている。
 陽子の悲鳴に合わせたように、またひときわ高い波が打ち寄せてきた。
 今度は身を起こした陽子の周りを波が洗っていく。打ち寄せる水は濁《にご》った灰色で、引いていく水は赤い色を溶かしこんでいた。
 その水をすくって、陽子は両手を洗う。指の間からしたたる水は、血液そのものの色をしていた。
 波が打ち寄せるたびに水をすくって手を洗った。洗っても洗っても、両手は白い色をとりもどさなかった。いつの間《ま》にか水は、座り込んだ陽子の腰のあたりに達している。腰の周りから赤い色がにじみ出て、周囲の水面は赤く染まっていた。しかもその赤は徐々に大きく広がっている。灰色ばかりの風景の中で、赤い色が鮮《あざ》やかだった。
 ふと陽子は、自分の手に変化が起こったのをみつけた。赤い手を目の前にかざす。爪が伸びていた。
 とがった鋭利な爪が、指の第一関節ほども長く伸びている。
「……どうして」
 しみじみと見つめて、さらに変化を悟《さと》る。手の甲に無数のひび割れができていた。
「なに……?」
 ぱら、とちいさな赤い破片が落ちた。風に流されて沖へ飛んでいく。
 小さな破片がはがれた、その下から現れたのは、ひとつまみの赤い毛だった。ごく短い毛が小さな面積にびっしりと生《は》えている。
「まさか……」
 かるく手をこする。ぱらぱらと破片が落ちて、さらに赤い毛並みが現れる。身動きするたびに足からも顔からも破片が落ちて、かわりに赤い毛並みが現れてゆく。
 荒い波に現れて、制服が朽《く》ちたようにちぎれていった。その下から現れたのも、やはり赤い毛並みだった。水がさらにその毛並みを洗う。赤い色を溶かし出して、すでに周囲は見わたすかぎり赤い色に染まっている。
 凶器のような爪。赤い毛並み。──まるで獣に変化していこうとしているように。
「──うそ!」
 叫んだ声はひび割れた。
 ──ばかな。どうして、こんな。
 制服がちぎれ落ちたあとに現れた腕は、奇妙な形にねじれている。それは犬か猫の前肢《まえあし》のように見えた。
 ──返り血。
 ──きっと、返り血のせいだ。
 ばけものの返り血が、身体を変えていこうとしている。
 ──ばけものに、なる。
 (そんな、ばかな)
 ──いやだ。
「いや──っ!!」
 叫んだ言葉は聞こえなかった。
 陽子の耳は荒れる海の波の音と、一匹の獣の咆哮《ほうこう》だけを聞いた。
 
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%