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十二国記051

时间: 2020-08-18    进入日语论坛
核心提示: ひどい痛みで、陽子は意識をとりもどした。 とっさに目をあげて自分の腕を確認し、陽子はそこに突き立った刀をみつける。 最
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 ひどい痛みで、陽子は意識をとりもどした。
 とっさに目をあげて自分の腕を確認し、陽子はそこに突き立った刀をみつける。
 最初はそれがなにを意味するのか、わからなかった。曇天《どんてん》の空にむかって、まっすぐに立った一振りの刀。
 一瞬ののちに痛みで我に返った。
 刀は陽子の右手を地面に縫いとめていた。
 細い刀身が深々と手の甲に刺さっていた。そこから脈打つような痛みが頭に向かって突き上げてくる。
 そっと腕を動かしてみたが、引き裂かれる痛みに悲鳴があがる。
 目眩《めまい》と痛みをこらえて身を起こした。縫いとめられた手を、これ以上痛めぬように気をつけてなんとか起きあがる。震える左手を伸ばして柄《つか》をつかんだ。目を閉じ、歯を食いしばってそれを引きぬく。全身が痙攣《けいれん》するほどの激痛があった。
 ぬいた刀を投げ捨て、傷ついた手を胸に抱いて、陽子は獣の死体が倒れたあいだを転げまわる。悲鳴は声にならない。痛みのあまり猛烈な吐き気がした。
 のたうちながら左手で胸をさぐる。珠を握って紐《ひも》をむしった。にぎりこんだ珠を右手にあてる。はぎしりし、うめきながらつよく珠をあてて身体を丸めた。
 宝重《ほうちょう》の奇跡は陽子を救った。痛みがすみやかにひいていった。しばらくそのまま、息をつめるようにして堪えてから体を起こす。
 珠を傷にあてたまま、そっと右手の指を動かそうとしてみたが、手首から先は感覚がなかった。とにかく左手で右手に珠をにぎらせた。
 地面に転がったまま、陽子は右手を抱え込む。薄く目を開けて空を見ると、雲はまだ茜色《あかねいろ》に染まっている。気を失っていたのは、ごく短い時間だったようだ。
 あの女は何者だったのか、どうしてこんなことをしたのか、考えたいことはたくさんあったが、とうてい思考することができない。とにかく手探りで陽子自身の剣を探し、柄《つか》をにぎると剣と右手とを抱きこんで、しばらくそのまま丸くなっていた。
 声が聞こえたのは、そうしていくらもたたない頃だった。
「……あ」
 声のほうに視線をむけると、小さな子供が立ちすくんでいた。女の子は背後をふり向いて声をあげた。
「お母さん」
 小走りに女がやってきた。
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