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十二国記070

时间: 2020-08-19    进入日语论坛
核心提示: 午寮を離れ、山に入ってほとぼりがさめるのを待った。こんなことをしていては、いずれつかまる。わかっていても午寮の街を離れ
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 午寮を離れ、山に入ってほとぼりがさめるのを待った。こんなことをしていては、いずれつかまる。わかっていても午寮の街を離れられない。
 ──消息を聞いてどうする。
 楽俊のぶじを確かめたからといって、陽子が昨日彼を見捨てて逃げたことのつぐないになるわけではない。それはすでに犯した罪で、もうとりかえしはつかない。
 ましてや、ぶじだと聞いたからといって、詫《わ》びるために街の中に入っていけるわけでもない。街へ入れば衛士につかまる。そうして、それは畢竟《ひっきょう》陽子の死を意味するのだ。
 ──どうしていいのか、わからない。
 いたずらに汚い命を惜《お》しんでいるような気がする。その半面、あっさり投げ出すのはなにかが違う気がしてならない。
 決心がつかないから、午寮を離れてしまうことができない。
 
 迷って迷って、何度目かに午寮の門前にもどった。幾人かの旅人をつかまえて同じ質問をくりかえし、同じような返答を得た。
 いよいよとほうにくれたときだった。
「──あんた」
 背後からかけられた声に、陽子はとっさ逃げようとする。身をひるがえしながら振り返って、自分のほうを複雑な顔で見ている母子を見つけた。
「──あんた、バクロウの近くで会った……」
 陽子は足をとめ、しばらく呆然《ぼうぜん》とする。いつか山道で会った親子だった。水飴《みずあめ》の行商らしく、大きな荷物は今も親子の背中にある。
「よかったこと。ぶじだったんだね」
 母親はそう言って微笑《わら》った。ひどく複雑そうな表情だった。女の子は母親よりももっと複雑そうな表情で陽子を見上げている。
「怪我はもういいのかい?」
 陽子は迷い、それからうなずいた。うなずいて深く頭を下げる。
「──あのときは、ありがとうございました」
 助けてくれようとする手を振りほどいて山に入った。言葉だけの礼は言ったが、心底感謝をしなかった相手。
「ほんとうに、よかった。あれからどうしたろうと、気になっていたんだ」
 母親は笑った。こんどは屈託のない笑顔だった。
「ギョクヨウ、ほらね、ぶじだったでしょう」
 自分にすりよるようにする女の子を見おろす。女の子はまだ複雑そうな顔で陽子を上目づかいに見上げていた。陽子はちょっと微笑《わら》ってみる。そうして、自分が長いこと笑わなかったのに思いいたった。顔の筋肉はこわばって、すこしも笑えた気がしなかった。
 ギョクヨウはちょっとまばたきをして、それからすねたような表情で母親の背後に隠れようとする。陽子はかがみこんだ。
 ──この親子があのとき水と水飴を与えてくれなかったら、その夜をのりきれたかどうかわからない。
 こんどはもうすこし、ましに微笑えた。
「いつかは、お水と水飴をどうもありがとう」
 女の子は陽子と母親を見比べるようにして、それからちょっと笑った。笑った自分がおかしかったのか、すぐに複雑な顔に戻ったものの、やがてくすくすと笑いだした。子供特有の笑顔が、ひどく愛《いと》しくて泣きたかった。
「ほんとうに、ありがとう。ちゃんとお礼を言えなくてごめんね」
 ギョクヨウは満面に笑みを浮かべてから、
「……痛かったの?」
 そう聞いてきた。
「え?」
「お兄ちゃんは、けがが痛いからきげんが悪かったの?」
「──うん。そう。ごめん」
「もう、痛くない?」
「うん。治った」
 ひきつれた痕《あと》を残して治った傷を見せる。その傷の治りが早すぎることに、はたして親子が気づいたかどうか。
 ギョクヨウは母親を見上げて、なおったって、と言う。母親は目を細めて娘を見おろした。
「よかったこと。バクロウに着いてから探しにもどろうとしたんだけどね、里についたらもう閉門の刻限でね。近頃の衛士は腰抜けだから、夜には出てくれやしない。──たずね人かい?」
 陽子はうなずく。
「あたしたちも午寮へ行くところさ。一緒に行くかい?」
 これには首を横にふるしかなかった。母親は、そう、とだけ言った。
「──さ、ギョクヨウ。宿舘に行こうね」
 言って娘の手をとって、それから彼女は陽子を見る。
「なんて人だい? 半獣なんだね?」
 陽子は彼女を見返した。
「役所か裏にいるんだろう? なんて人だい?」
「──楽俊、といいます」
「このあたりにいておくれね。ちょいと見てこよう」
 ごく軽く言って、母親は荷物を背負いなおす。陽子は深く頭を下げた。
「……ありがとうございます」
 
 女は夕刻近くに、ひとりでもどってきた。楽俊らしい者は、怪我人の中にも死人の中にもいなかった、とだけ言って午寮にかけもどっていった。彼女が陽子の身の上を理解していたのかどうか、それはわからない。
 
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