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十二国記111

时间: 2020-08-24    进入日语论坛
核心提示: 楽俊の母親は息子から陽子の事情を聞きながら、手早く蒸《む》しパンに似たお菓子を作ってくれた。「それでな」 と楽俊は小さ
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 楽俊の母親は息子から陽子の事情を聞きながら、手早く蒸《む》しパンに似たお菓子を作ってくれた。
「それでな」
 と楽俊は小さな手に大きな蒸しパンの塊《かたまり》をかかえて言う。
「雁《えん》国に行ってみるのがいいんじゃねえか、って話をしていたところなんだ」
 母親はうなずく。
「そうだね。それがいいだろうね」
「そういうわけで、おいらは陽子をカンキュウまで送ってくる。着るものを持たせてやってくんな」
 楽俊が言うと、母親は目に見えて強《こわ》ばった顔をした。
「そんな、……おまえ」
「心配するこたねえよ。ちょっとひとっぱりしりしてくらぁ。なぁに、土地にふなれな客人を送ってくるだけだ。母ちゃんはしっかり者だから、ひとりでもだいじょうぶだな?」
 母親はすこしのあいだ楽俊を見つめて、それからうなずいた。
「あいよ。──気をつけて」
「楽俊」
 陽子は言葉をはさんだ。
「気持ちはありがたいけど、そこまで迷惑はかけられない。道なら聞いたからなんとかなると思う」
 同行者は怖いのだ、とはさすがに言えなかった。
「さっきの地図を、なにかに書いてもらえるかな。手間を取らせて悪いけど」
「陽子。雁国に入るだけならともかく、王を訪ねるとなればおまえだけじゃむりだ。たとえ道はわかっても、カンキュウまでは三ヶ月以上はかかる道のりだ。そのあいだ、食う物はどうする。宿はどうする? 銭はもっているのか?」
 陽子は押し黙る。
「とてもひとりじゃ行かせられねえ。おまえはこちらのことを、なにもわからないんじゃねぇか」
 陽子は考え込む。長いあいだ迷って、それからうなずいた。
「……ありがとう」
 いいながら視野の端で剣の包みをとらえていた。
 たしかに楽俊には同行してもらったほうがいい。この母子は一見、陽子を助けようとしているように見えるが、それが本当だとは限らない。敵か味方かわからないが、行く先を知られている以上、わからないまま放置しておくことはできない。陽子がここを出て即座に役所に訴え出られたら、阿岸《あがん》で待っているのは船ではなく罠《わな》なのだから。
 連れていけばこの女に対しての人質《ひとじち》になる。万が一楽俊が自分にとって危険な存在になれば、剣にものをいわせればすむことだ。
 ──そう考え、ひどく自分が情け無い生き物になった気がした。
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