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十二国記153

时间: 2020-08-27    进入日语论坛
核心提示: 世界の中央に黄海《こうかい》があった。 海といっても水はない。そこで流れてゆくものは時と風ばかり、そのほかには果てのな
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 世界の中央に黄海《こうかい》があった。
 海といっても水はない。そこで流れてゆくものは時と風ばかり、そのほかには果てのない砂漠《さばく》と果てのない樹海《じゅかい》と、あるいは一面の沼地が、あるいは一連の岩山がひろがるばかりの土地である。
 その黄海の中央にひときわ高く連なる山々がある。五つの峻峰が複雑に入り組むそこを、五山《ござん》といった。
 中央の高い山を崇高《すうこう》、周囲四方に連なる山をそれぞれ蓬山《ほうざん》、華山《かざん》、霍山《かくざん》、恒山《こうざん》と呼ぶ。蓬山は旧《ふる》くを泰山《たいざん》といったが、凶事あるたびに改名して、ここ千年ばかりは蓬山と呼び習わしている。
 五山は西王母《せいおうぼ》の山と言い、蓬山は王夫人《おうふじん》の山だと言う。残る四山の主《あるじ》は諸説あって定かではない。その真偽《しんぎ》はともあれ、いずれにしても五山は女神《にょしん》・女仙《にょせん》の土地だった。
 五山はどれも天を突《つ》くほど高い山だが、麓《ふもと》に広がる黄海同様、なにがあるわけでもなかった。緑と岩と水、それだけが複雑怪奇な地形を作りながら連なるばかり、そこに途切れることなく風がただ吹きぬけてゆく。
 ただ蓬山の中腹に、蓬廬宮《ほうろぐう》と呼ばれる小さな宮殿がある。ここが蓬山で──ひいては五山で暮らす者たちの唯一《ゆいいつ》の住処《すみか》なのだった。
 
「……おや、罌粟《けし》が」
 禎衛《ていえい》はつぶやいて、かがみこんだ。
 泉に罌粟の花びらがいくつも浮いているのを見つけたからだ。
 禎衛から二歩ほど後《おく》れて小道を歩いていた蓉可《ようか》もまた足を止めた。澄んだ水の表面に、赤い花弁の色が美しかった。
「罌粟苑《けしえん》の花でしょうか」
 蓉可の問いに、禎衛はうなずいて花びらをすくう。
「風に乗って飛んできたのだろう。──今日は妙な風が吹くね」
 蓉可もまたうなずいて、頭上を見上げた。
 蓬山は奇岩の山だった。特にここ蓬廬宮のある高台は、苔《こけ》むした奇岩でさながら迷路の様相を呈《てい》している。
 奇岩はその名にふさわしく奇妙にえぐれ、不安定にそびえ、その高さは低いものでも身の丈の三倍あまり、奇岩の間をぬうようにして通る小道は、かろうじて女がふたり肩を並べて歩けるほどしかない。
 その小道の途中で足を止めて、禎衛は泉に浮かんだ罌粟《けし》の花びらを丁寧にすくった。
 彼女は女仙《にょせん》のひとりだった。十八、九の娘に見えるが、女仙の外見を信用してはならない。いかなるいきさつでいつごろ昇仙《しょうせん》したのか、彼女自身ももはや覚えていない。それど長い間、蓬山にいることだけは確かだった。五十人あまりいる女仙の中でも、禎衛ほど蓬山住まいが長い女仙はいない。
 反対に、蓉可はもっとも新参の女仙だった。歳《とし》は十六、ごく平凡な農家の娘に生まれたが、どういうわけか世俗に馴染《なじ》めず、十三の歳に昇仙の誓いをたて、五穀《ごこく》を断って西王母の廟《びょう》に通いつづけること三年、ついさきごろ満願を成就《じょうじゅ》し五山へ召し上げられた。
 したがって蓉可は蓬山に住んで長いわけではけっしてない。崇高山での修行を終え、蓬廬宮に移って半月だが、その彼女にも今日の風はなにかしら奇妙に思われた。
 常にはゆるやかに小道を流れていく風が、今日に限って強く速い。奇岩の上空へ吹き上げ、かと思えば奇岩にそって吹き下ろして、いたるところで渦《うず》を巻いている。空模様もなにかしらすっきりしなかった。薄曇りにもかかわらず、重苦しいものが垂《た》れこめているような、そんなふうに感じられてならない。
「なにかの予兆でしょうか」
 蓉可の問いに、禎衛は首をかしげた。
「さてね。今朝の八卦《はっけ》には、なにかが起こりそうな卦《け》は出ていなかったけれど。──とにかく、水を汲《く》んでおしまい。
「はい」
 蓉可は持ってきた手桶《ておけ》を泉に沈めた。
 泉の名前は海桐泉《かいどうせん》という。奇岩の根元をえぐるようにして湧《わ》いた泉の、その上にさしかかるように張り出した岩棚の上には海桐花《とべら》の木が群生していた。
 蓬廬宮にある泉は、もちろんこれひとつではない。いくつの泉があるのか数えてみた酔狂《すいきょう》な者はいないが、名前が必要なほどの数であるのは確かである。
 蓬山には季節がない。花は年中咲いて散った。いまも海桐花が小さな白い花を落として、泉の水面に泡《あわ》のように浮《う》かんでいる。水には海桐花の芳香がうつって、海桐泉の水を汲みあげつづけた桶からは、いつしか海桐花の匂《にお》いがするほどだった。
 海桐花の匂いのする水は、蓬廬宮の中にある大真廟《たいしんびょう》で蓬山の守り神である王夫人の木像をふき清めるのに使われる。
 海桐花の花をよけながら水を汲みあげ、大真廟に向かおうと足を踏《ふ》みだした蓉可を、禎衛は笑って呼び止めた。
「どこへお行きだね」
「え? ──夫人の……」
 禎衛は声をあげて笑う。
「廟《びょう》はそちらにありはしないよ。まだ道を覚えておいででないかえ?」
 蓉可は三方に枝分かれした小道を見比べて、少し赤くなった。
「……そのようですね」
 蓬山は奇岩と無数に枝分かれした小道とで迷路のようだが、じっさいのところ迷宮にほかならなかった。
 正しい道を知っているのは蓬廬宮に住む者だけだった。ここに住まう女仙《にょせん》だけが無数に枝分かれした道の中から正しい道を選び取り、洗濯によい小川へ、水浴によい淵《ふち》へ、水汲《みずく》みによい泉へと行くことができた。あるいはまた、小さいながら日当たりのよい野原へ、花園へ、菜園へ。あるいは、点在する小さな宮へたどりつくことができる。──ただし、蓉可のように蓬山に来て間がない女仙ともなれば、話は別である。
「どうしてこんな、ややこしい……」
 蓉可が溜《た》め息《いき》まじりにひとりごちたので、禎衛は笑った。
「蓬山公《ほうざんこう》をお護《まも》りするためだもの。多少の不便はがまんおし」
 迷路は侵入者に対する備えだった。
 奇岩の上をとうてい人馬が進むことはできない。妖獣《ようじゅう》ならばそれも可能だろうが、蓬廬宮にはいくつかの例外をのぞき、妖獣が立ち入ることは許されなかった。そうして、奇岩の間をぬう小道は細い。蓬廬宮をたずねる者は乗騎を捨て、必ず歩いて入らなければならなかった。
 一歩中へ入れば、道はまぎれもなく迷路である。
 高い奇岩は視野を遮《さえぎ》る。しっとりと水を含んだ苔《こけ》におおわれた奇岩の、その間を通る小道には石畳が敷かれてはいるものの、無数の枝道と無数の隧道《すいどう》であっというまに方角を見失うことは疑いがない。
 蓬廬宮を熟知するものだけが道を見失わずに、この世にただひとつしかない木の生《は》える高台へと、たどりつくことができるのだ。
「ああ、やっぱりそうなんですね」
 迷路の奥に隠されたのは捨身木《しゃしんぼく》、捨身木に実るのは麒麟《きりん》だった。
 この世では人も獣《けもの》もそのほかのものも、ことごとくが白い木に実るが、麒麟が実る木はここ蓬山にある捨身木が唯一だった。
 蓬山は麒麟《きりん》の生まれる聖地、蓬廬宮は麒麟のために存在し、そこに住まう女仙《にょせん》もまた麒麟のために存在する。麒麟は蓬山の主《あるじ》である。ゆえに蓬山公と呼んだ。
 禎衛はうなずく。
「麒麟をあずかる責任は重い。けれどこれほど幸せな仕事もない。泰果《たいか》が孵《かえ》ったら蓉可にもお世話を手伝ってもらう。ようく心しておおきね」
 禎衛の言葉に蓉可は瞳《ひとみ》を輝かせた。
「わたしがおてつだいできるんですか? 本当に?」
 実のところ、蓉可は少し不満だったのだ。
 蓬山の女仙の務めは麒麟に仕《つか》えることで、それ以外の仕事は雑用に過ぎない。蓬山にはいま若い麒麟がいるが、蓉可はあまりに新参なのでその麒麟にかかわることを許されなかった。
 禎衛は笑う。
「まず、道を覚えなくてはね」
「はい」
 蓉可は大きくうなずいた。
 捨身木にはつい先日、麒麟の実がひとつ、ついた。泰果と呼ばれる果実である。
 蓉可は、いまはまだ小さな果実に思いをはせる。
 泰果が熟して麒麟が孵るまでに十月《とつき》。生まれたばかりの麒麟はどんなに愛らしいだろう。小さな麒麟のそば近くに仕えてその世話をする、それは想像しただけで楽しくてたまらないことのように思われた。
 またどこからか罌粟《けし》の花びらが飛んできて、泉の水面に舞い落ちた。
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