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十二国記155

时间: 2020-08-27    进入日语论坛
核心提示: 白い枝の下に身を伏せ、湿《しめ》った苔《こけ》が肌をくすぐるのを感じながら、うっとりと汕子《さんし》は枝の果実に見入っ
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 白い枝の下に身を伏せ、湿《しめ》った苔《こけ》が肌をくすぐるのを感じながら、うっとりと汕子《さんし》は枝の果実に見入っていた。
 泰麒《たいき》の入った実は十月《とつき》で熟す。
 十月のあとには、あの泰果《たいか》から汕子の主である麒麟《きりん》が孵《かえ》るのだ。熟した実をもぐその瞬間を思うと、汕子の身体《からだ》は涙の温度をしたものでいっぱいになる。
 嬉《うれ》しく、誇《ほこ》らしく、あふれるような思いで光沢《こうたく》のある金の実を見上げていたときに、突然それは襲ってきた。
 汕子には最初、なにが起こったのかわからなかった。
 大気がねじれる。さかまいて壊《こわ》れる。幕を引いたように赤気が空で踊り始めた。身震いするほどの恐怖を感じて、ようやく「蝕《しょく》」という言葉を脳裏に探し当てた。
 とっさに立ち上がった汕子の足を突風がすくう。風にはけっしてそよがぬはずの白い枝が、音をたてて揺れた。
 悲鳴を上げて汕子は枝にすがった。枝をつかみ、風に逆らって身を起こすと、吹き散らされて枝にからめとられた髪がむしられていく。そんな痛みに気をとられる余裕はない。守らなければ、と切迫した思いで見上げた視線の先で空気がよじれる。
「……泰麒!」
 吹き寄せた音が身体《からだ》を叩《たた》いた。ねじれてひずんだ大気がさらに歪《ゆが》み、歪みが枝を呑《の》みこむのが見えた。
「やめて……!」
 金の小さな実がひずみに呑みこまれる。十月《とつき》さき、汕子が己《おのれ》の手でもぐまでは、けっして枝を離れるはずのない実が、枝からねじ切られていくのが見えた。
「誰か!」
 枝に掻《か》き切られて血だらけになった腕《うで》が実を追う。指先と金の実の間の距離は絶望的なまでに遠かった。
「誰か、止めて──!」
 汕子の叫びは、全霊を託して伸ばされた指の先で断ち切られた。
 金の実はその姿を歪みの中に沈めて消えた。
 この世に生まれ、泰麒と呼んだ、そのほかに発した初めての声は悲鳴だった。虚《むな》しいばかりの叫びだったのである。
 始まったときと同じく、唐突にそれは終わった。
 汕子は呆然《ぼうぜん》と白い枝を見上げた。
 そこにはもう金の光は見えなかった。たったひとつあった果実は、消えうせていた。
「汕子……!」
 声が四方から響いて、多くの女仙《にょせん》が駆《か》けてくるのが見えた。まっさきに汕子のそばにたどりついたのは玉葉《ぎょくよう》だった。
「ああ……汕子……」
 汕子は差し出された彼女のたおやかな手にすがりついた。
 最初に名を。次いで、悲鳴と叫びを。その次に汕子の喉《のど》が発したのは号泣だった。
「なんということ」
 玉葉は孵《かえ》ったばかりの女怪《にょかい》を抱きしめる。無残に散った髪をなで、傷だらけになった身体《からだ》をなでた。
「よりによって、麒麟《きりん》が実ったときに」
 腕の中の女怪は絶叫している。ともすれば十月《とつき》のほとんどを木の下ですごすほど、女怪の麒麟に対する思いは深い。それを目の前で失った痛みは、玉葉の想像に余った。
「大事はない」
 女怪の背を叩《たた》いた。
「そのように泣くでない、汕子。……必ず泰麒は探し出してみしょう」
 つぶやきながら、己《おのれ》に言い聞かせる。
「できるだけ早《はよ》うに、そなたの手に泰麒を戻してやろうほどに」
「玄君《げんくん》……」
 声をかけてきた禎衛《ていえい》にうなずく。
「諸国に朱雀《すざく》を飛ばし、至急に蝕《しょく》の方角を調べさせよ」
「かしこまりまして」
「月の出までに、ぞえ。女仙を集めて門を開く用意をさせよ」
「はい。ただいま」
 女仙が方々に散っていく。玉葉は虚《むな》しく視線を上げた。
 何度見わたしても、白い枝に金の果実は見出《みいだ》せなかった。
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