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十二国記159

时间: 2020-08-27    进入日语论坛
核心提示: 彼が白い手の、すぐ間近へ歩いていくと、白い手は迷わずに彼の手首を握った。 冷えた肌に、その手の感触はひどく暖かかった。
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 彼が白い手の、すぐ間近へ歩いていくと、白い手は迷わずに彼の手首を握った。
 冷えた肌に、その手の感触はひどく暖かかった。
 倉と土塀《どべい》の間のせまい隙間《すきま》にどうやって人が隠れているのか、それを確かめたかったはずなのに、間近までいった瞬間、あたりの風景が定かではなくなった。ちょうど瞳《ひとみ》を水の膜がおおいでもしたように、風景が潤《うる》んでにじみ、ものの輪郭《りんかく》が消え失せた。
 思わず手探りをするように伸ばした腕《うで》の手首をつかまれ、すると急に身体《からだ》が浮きあがる感触があって、するりとどこかに引き込まれた。
 引き込まれた先は白い空間だった。色のないもやのようなものが濃くたちこめていて、どんな場所だか判然としなかったが、彼はなんとなくそこをふわふわした球形の場所のように感じた。
 そこはいっそう暖かく、さらに暖かい風がどこからか流れてきていた。
 足元には硬《かた》い床《ゆか》の感触がなかった。かといって柔らかなものを踏《ふ》んで足をとられる感じもしない。雲の上に立つとこんな感じがするかしら、と彼は思う。
 すぐ近くに人の気配がして誰かがしっかりと彼の手を捕らえていたが、その姿は見えなかった。もやの中にちらちらと乳白色の影が動いているようにも思えたけれど、気のせいだったかもしれなかった。
 少しの間ぽかんとしていると、彼の手首を握った手が彼を引いた。不思議《ふしぎ》に怖《こわ》い感じはしなかったので、おとなしく手を引かれるにまかせる。
 ごく短い廊下《ろうか》を歩くほどの間、ふわふわと引かれて、やがて水面に顔を出すようにして、ぽかりともやの外に出た。
 突然陽光にさらされて、彼はしばらくきょとんとしていた。
 目の前にあったのは、見たこともない木の真っ白な幹だった。それはまるで純白の金属でできたように見えた。幹は太く、それでもさほどに高くなく、やはり白い枝は大きく横に伸びて、先端で垂《た》れるようにしなっている。
 その枝の向こうには奇妙な風景が見えた。緑色をした変わった形の岩が連なる様子。遠巻きに集まった、見慣れない格好の女たち。
 そうして、なかでもいちばん奇妙だったのは、彼の手を握った女の姿だった。
 女は半分が人で、半分が虎《とら》か豹《ひょう》のように見えた。顔は妙にのっぺりとして、そこに真円の目が表現のしようのない色をたたえて開いている。怯《おび》えてもいいはずだが、不思議《ふしぎ》に怖《こわ》いとは思わなかった。それよりむしろ、優しい目だとそう思った。
「……タイキ」
 半獣の女はそういったが、それがなにを意味する言葉なのか、彼にはよくわからなかったし、ましてやそれが彼女が十年ぶりに発した言葉であることなど、わかるはずがなかった。
「泰麒《たいき》」
 彼女の柔らかな手が髪をなでて、同時に丸い目から澄んだ涙がこぼれた。
 彼はなんとなく、いつも母親にするように手を握ってその顔をのぞきこんだ。
「かなしいことがあったの?」
 彼が言うと、彼女は首を横に振った。いいえ、と否定するよりは、気にしなくていいのよ、と言いたげなその仕草が母親のそれによく似ていた。
「……泰麒? その子が?」
 声が聞こえて、彼はようやく木の周囲で奇妙なざわめきが起こっていることに気がついた。どうしたのだろう、と思っていると、ひとりの女が近づいてくる。
「……珍しいこと」
「だれ?」
 女は彼の前に膝《ひざ》をついた。
「わたしは玉葉《ぎょくよう》と申す。……こんな髪を見たのは何百年ぶりかの」
 女は彼の髪を梳《す》いた。
「黒麒《こっき》だ。ほんに、珍しいこと」
「なにか、おかしい?」
 彼は目の前の女にではなく、かたわらに立って彼の手を握っている半人半獣の女のほうを見上げた。すでに彼の中で、こちらの女のほうが自分のたよるべき存在なのだと、そうなんとなく理解されていた。
 彼女はもう一度、無言で首を横に振った。
「もちろん、おかしくはないとも。めでたいことじゃ」
 目の前の女は言う。
「あちらで生まれたのなら名前があろうが、ここでは泰麒とお呼びする」
「泰麒? どうしてですか」
「それが決まりだから、かの」
「ここは、どこなんですか? ぼくは庭にいたはずなんですけど」
 彼は、異常なことが起こったのだと理解できないほどに小さくなかったが、それによってひどく動揺するほどには大きくなかった。
「ここは蓬山。泰麒のあるべき場所」
「よく……わかりません」
「いずれおわかりになろう。──これは、汕子《さんし》。白《はく》汕子という。あなたのお世話を申しあげる」
 彼はかたわらの女を見上げた。
「汕子……」
 さらに玉葉は、視線を脇へ向けた。
「そちらは、廉台輔《れんたいほ》」
 白い木の幹のそばに、金の髪の女が立っていた。彼が玉葉の視線を追って彼女のほうを見たとき、ちょうど白い蛇《へび》がするすると腕《うで》に巻きついて、銀の腕輪に変じたところだった。蛇にはふたつめの尾があって、それが腕輪に銀の鎖《くさり》でつながった指輪に変じたようにも見えたが、驚いていたので確かなこととはいえない。
「お礼を申されよ。泰麒のお迎《むか》えに汕子をつかわすため、貴重な宝をお貸しくだされたのだから」
 彼はやんわりと微笑《ほほえ》む女を見上げ、さらに汕子に目をやった。汕子がうなずいたので、いわれるままに頭を下げた。
「ありがとうございました」
 彼女はただ微笑《わら》う。それを満足そうに見やって唐突に玉葉が立ちあがった。踵《きびす》を返し、去っていこうとする。
「あの、玉葉……さん」
「泰麒。さま、と」
 彼は汕子を見上げた。
「……さま、とお呼びするのです」
 彼はうなずいた。汕子の言葉は不思議《ふしぎ》に戸惑《とまど》いを生まなかった。泰麒、と耳なれない言葉で呼ばれても、汕子の口から出ると、自分の呼び名だとあっさり納得《なっとく》できた。
「玉葉さま。……いろんなことがとても不思議な気がするんですけど」
 彼には自分の困惑を、うまく表現することができなかった。
 玉葉はただ笑った。
「じきに慣れようほどに、おいおい汕子に聞かれるがよかろう」
 彼は汕子を見上げた。汕子は微笑んだ。──表情のとぼしい顔だから、さだかではないが、たしかに微笑んだのだと感じた。
「はい」
 彼が汕子の手を強く握ると、それ以上に強い力で答えがあった。
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