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十二国記166

时间: 2020-08-27    进入日语论坛
核心提示:「捕《つか》まえたぞ!」 高らかに、野太い声が響《ひび》いて、それにきょとんと目を開いた。 岩の上から転落して、出てはな
(单词翻译:双击或拖选)
「捕《つか》まえたぞ!」
 高らかに、野太い声が響《ひび》いて、それにきょとんと目を開いた。
 岩の上から転落して、出てはならないといわれていた外に出てしまったことは、一瞬のうちに思い出した。なぜ転落したのかを、もう一度|反芻《はんすう》しようとしたときに、太い押し殺した叫びが聞こえた。寝転《ねころ》んだまま視線を向けると、薄い色の空に点々と赤い飛沫《しぶき》が散るのが見えた。
(……血みたい)
 思った瞬間、すっと泰麒の体温が下がった。一瞬のうちに身体が凍《こお》りついた。
 蓬山《ほうざん》に来てからは、思い出す機会のなかった自分の性癖《せいへき》を思い出した。
 ──だめなのだ、どうしても。
 自分が怪我《けが》をしてもそんなには感じないのに、他人が怪我をして血を流しているのを見ると、怖《こわ》くて怖くて息が止まりそうになる。
 目を閉じたかったが、瞼《まぶた》までが凍《こお》りついてできなかった。息をすることさえ忘れたような自分の体の中で、鼓動だけが限界まで駆《か》けあがる。焦点を失った目の奥に、赤い飛沫《しぶき》が散る一瞬が再生されつづけた。
 ──岩の上に立っていた。
 なにかが手に巻きついて、引きずり落とされた。
 なにかの感触は今も両手にある。針金みたいに細い鎖《くさり》だ。
 岩から落ちたのだということはわかる。
 落ちて、自分はいま岩だらけの地面の上にひどく不自然な格好で──背中の下の岩から仰向《あおむ》けにのけぞるようにして──横たわっている。
 おちこちに岩棚や出っ張りのあるあの岩から転《ころ》げ落ちて、ましてやあの高さから転落して無傷ですむはずがないが、自分が怪我《けが》をしているのか、それとも奇蹟的に軽い怪我ですんだのか、泰麒《たいき》自身にもわからなかった。
 ただ鼓動だけが速くて、手足の先が凍えるほど冷たいのだけを感じる。なのに頭は熱をもったようにぼうっとしていて、そこに鮮《あざ》やかな血の色が染《し》みついて消えない。あまりにその色が鮮明で、いま自分が見ているものがなんなのか──目の前でなにかが起こっていることは確かなのに──、それを読み解くことができなかった。
 頭をひとつ振れば治るようにも思えるのに、瞬《まばた》きすることさえできなかった。身動きできないのは、怪我をしているせいだろうか。さっき見た、血の色のせいだろうか。──いったい、なにが起こったのだろう。
「この、化け物が!」
 野太い叫びが聞こえて、ようやく目が捕《と》らえているものがなんなのか理解した。
 男、だった。
 大きな男で、その片手に幅の広い刀を持っている。
 そして、その刀が振りかざされる先にいるのが汕子《さんし》だった。
「人妖《にんよう》ごときに倒される俺か! さっさと黄海《こうかい》に帰るがいい!」
 刀が上がり、恐ろしい勢いで振り落とされる。
(──汕子!)
 とっさに上げた悲鳴は声にならなかった。
 弧《こ》を描いた白刃が汕子をかすめて落ちる。汕子の手が伸びて、男の喉笛《のどぶえ》をかきむしった。真っ白な指が赤いもので濡れる。一拍|後《おく》れて、切っ先がかすめた汕子の腕に赤いものが噴き出した。
(──やめて!)
 とっさに瞼《まぶた》が落ちた。そのまま二度と開かぬように堅《かた》く目を閉じた。もう自分が息をしているのか、鼓動が打っているのかさえわからなかった。
 そのまま目を瞑《つぶ》っていたかったのに、突然両手を激しく引かれて、驚きのあまり目を開けずにおれなかった。なにが起こっているのか把握するまえに、かろうじて乗っていた岩の上から転《ころ》がり落ちる。
 背中をしたたかに打ってあえぐ間もなく腕《うで》を引かれて引きずり起こされて、あらためて目を開けると宙にかかげられた自分の腕が見えた。細い鎖《くさり》が巻きついて、その鎖は男の刀を持っていないほうの腕に続いている。男が身動きするたびに肩と肘《ひじ》が抜かれるように痛んで、引きずられた下肢《かし》が岩の表面にぶつかり、掻《か》かれた。
「なんだ、おまえ」
 男は片手で汕子に向かいながら、泰麒を見た。憤懣《ふんまん》をあらわにした表情だった。
「その髪はなんだ」
 責めるように言われても、泰麒には返答などできなかった。
 男は飛び掛ってきた汕子を無造作に刀で払って、足蹴《あしげ》にする。また汕子の白い身体《からだ》に赤いものがこぼれた。
 男は再び横目で泰麒を見る。いかつい顔を歪《ゆが》ませて怒鳴《どな》った。
「豎子《こぞう》、おまえ、麒麟《きりん》ではないのか!」
 ──麒麟? もちろん、麒麟だ。そう誰もが言う。
 ──そう答えていいのか。
 ──それよりも、汕子が。
 ──それよりも。
(ああ……あんなに血が……)
 男が身動きするたびに、上体が腕《うで》ごと引きずられた。ひどい気分がした。いまにも内側から壊れてしまいそうな気が。
「ええい、てっきり麒麟だと思うたのに! ただの餓鬼《がき》とは口惜《くちお》しい。おまけに人妖《にんよう》までちょろちょろと!」
 男に向かった汕子の腕を刀のきらめきが打ち落とす。また赤い飛沫《しぶき》が散った。跳《と》び退《すさ》った汕子に向かって踏《ふ》みだした男に引きずられ、岩の角が泰麒の胸を刳《えぐ》った。
「人妖の分際で、どうやって蓬山に入った! いま成敗してくれるわ!」
 振り下ろされた刀は汕子をかすめて岩を噛《か》む。
(……汕子)
 白い身体《からだ》はすでに赤く斑《まだら》になっていた。
(汕子、逃げて……!)
 ──せめてそう、叫べたら。
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