駆《か》けつけた女仙たちは泰麒の姿を見て悲鳴をあげた。泰麒を抱いた女仙から事情を聞き、半数ほどが門の外に駆け去っていく。
「なんて……下郎《げろう》……!」
蓉可は吐き捨てるように言って、門のほうをにらむ。すぐに憂《うれ》いをいっぱいに浮かべた表情で泰麒に向かって手を伸ばした。
「おかわいそうに。怖《こわ》かったでしょう。大事ございませんか」
「……汕子が」
こころえたふうに、蓉可はうなずく。
「汕子は大事ありませんとも。女怪《にょかい》の傷は深手に見えてもすぐに治ります。それより泰麒にお怪我《けが》は」
「わからない」
「とにかく、宮へ帰りましょうね。……汕子は汚れを落としてから、宮へ戻ってきます。心配はありませんからね」
ようやく泰麒はうなずいた。
「そんなお顔をなさらないで。しかたないんですよ。麒麟《きりん》は血が嫌《きら》いな生き物です。血の臭《にお》いをかいだだけで、病気になる麒麟もいるんですから」
「そう……なの? ほかのキリンもこうなの?」
「そうですよ。ですから、泰麒がそんなにお心をいためることはないんです。汕子が帰ってきたら、手当てをしてあげましょうねえ」
「……うん」
蓉可に向かって手を伸ばすと、蓉可が抱きあげてくれた。
そこから露茜宮《ろせんきゅう》までの道を、集まった女仙《にょせん》たちにかわるがわる抱かれて戻った。