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十二国記183

时间: 2020-08-27    进入日语论坛
核心提示:「玄君にも台輔にも申しわけございません。いつもはこんなことはない方なのですが」 玉葉は笑いながら蓉可から茶器を受け取って
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「玄君にも台輔にも申しわけございません。いつもはこんなことはない方なのですが」
 玉葉は笑いながら蓉可から茶器を受け取って、景麒に目をやる。
「ずいぶんと慕《した》われたこと。よろしゅうございましたの」
 景麒は憮然《ぶぜん》としていた。
「それで景台輔はお役に立ってかえ」
 蓉可があいまいに微笑《わら》うと、当の景麒が溜《た》め息《いき》混じりの声を出した。
「……わたしでは力が及びませんでした。申しわけないことです」
「天与の力をお教えするのは難しいもの。……台輔の口から殊勝なお言葉が出るようになっただけでよしといたそう」
 景麒がさらに憮然として、玉葉が笑ったところに、身支度《みじたく》を終えた泰麒が汕子を伴《ともな》って入ってきた。
「失礼しました」
 景麒は茶器を卓に置く。立ち上がって一礼をした。
「泰麒。おいとまを申しあげます」
 景麒を見上げる子供の目は赤い。
「本当にもうお帰りになるのですか」
「そうそう国を空《あ》けてられません。お役に立てず、申しわけございませんでした」
「いいえ、ぼくこそ、少しもいい生徒でなくて、ごめんなさい」
「そんなことはございませんでしたよ」
「……お元気で」
「泰麒もつつがなく」
「はい」
 景麒はなにかをこらえるような表情で見上げてくる泰麒を見返す。そっと頭に手を置いた。
「お急ぎになるな。……麒麟《きりん》は天の創られたもの。天帝が必ずよいようにしてくださいます」
「はい……」
「早く王にお会いできますように。生国に下られれば、虚海《きょかい》を隔《へだ》てて隣が慶《けい》。またお会いする機会もございましょう」
 言うと、泰麒は小さな手で景麒の裾《すそ》を握《にぎ》る。
「本当にそんな機会があるでしょうか」
 景麒は微笑《わら》った。言外に、会いたいと言ってくれるのが嬉《うれ》しかった。
「お約束いたしましょう。生国にお下りになったら、真っ先にお祝い申しあげに参ります」
 言うと、泰麒はぱっと笑みを浮かべる。
「はい」
 できればせめて使令《しれい》の一頭を捕《と》らえるまで、せめて昇山《しょうざん》の者との対面が落ち着くまで、そばにいてやりたいが、とうていそれはかなわない。もう充分に国を空《あ》けた。そもそも長くとも夏至《げし》までと、そのように言い置いてある。
「……どちらからお帰りになるのですか?」
「白亀宮《はっききゅう》から」
「宮までお送りしてもいいでしょうか」
 景麒は微笑った。
「もちろんです。班渠《はんきょ》と雀胡《じゃっこ》をお呼びしましょうか」
「はい」
 玉葉もまた立ち上がって、大小の麒麟を見比べた。
「泰麒は景台輔の使令《しれい》とも仲ようおなりか」
「班渠《はんきょ》にはたくさん遊んでもらいました」
「それはよろしゅうござった」
 笑ってから、小さい麒麟《きりん》の肩に手を置いた景麒に目をやる。
「景台輔にもよかったこと。少しは人に優《やさ》しゅうする方法を覚えたらしい」
「でも」
 泰麒は玉葉を見上げる。
「景台輔は最初からお優しかったです」
 本気でそう思っているらしい口調《くちょう》に、玉葉と蓉可は目線を交わらせた。
「そうであったかの」
「はい」
 断言する声に玉葉は笑う。景麒はなんとも複雑そうな表情をした。くすくすと押し殺した笑いが部屋のすみに控えた蓉可をはじめとする女仙《にょせん》の間から漏《も》れた。
 
 ──女仙はもちろん、玉葉でさえ予想はできなかった。
 景麒が示す不器用な優しさこそが、景王《けいおう》舒覚《じょかく》に道を踏み外《はず》させることを。
 しかし、これはまた別の物語である。
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