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十二国記215

时间: 2020-08-27    进入日语论坛
核心提示: きたる吉日。 沐浴《もくよく》し、礼服に改めた泰麒《たいき》を、漆黒《しっこく》の衣装に身を包んだ蓉可《ようか》が迎え
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 きたる吉日。
 沐浴《もくよく》し、礼服に改めた泰麒《たいき》を、漆黒《しっこく》の衣装に身を包んだ蓉可《ようか》が迎えにやってきた。
 慶事には黒を用い、凶事には白を用いる。蓬莱《ほうらい》とは逆なのだと、泰麒はすでに知っていたが、それでも女仙《にょせん》たちの黒衣はひどく暗示的に思われた。
 ──なんて、不吉な。
 蓉可は床に平伏して正式な礼をとる。
「泰台輔《たいたいほ》、刻限でございます」
「はい……」
 まるでこれから弔《とむら》いでも始まるようだ、と泰麒は思う。
 蓉可は心配そうな顔を上げる。
「どうなさいました? 昨夜はお休みになれませんでしたか?」
 泰麒は返答をしなかった。
 眠ることができるはずがない。
 これから泰麒は驍宗《ぎょうそう》と共に蓬山《ほうざん》の頂上へ昇る。そこで天勅《てんちょく》が下され、驍宗は天にも認められた王になる。
 ……偽《いつわ》りは必ず発覚するだろう。
 そこでどんな儀式が行われるのかは知らないが、天がこの罪を見逃すとは思えない。
 驍宗は王ではないと弾劾《だんがい》され、泰麒は王でないものと契約を結んだ罪を問われる。
 どんな罰《ばつ》が下されるかは想像もつかないが、これは泰麒の罪で、驍宗にはなんの責任もない。それを訴えて、咎《とが》めが驍宗に及ばぬようにしなければならない。
 その決意で頭がいっぱいで、眠ることもそのほかのことを考える余裕もなかった。
 蓉可はしばらく泰麒をまじまじと見つめてから、膝《ひざ》をついたままそっと両手を伸ばした。泰麒は黙って蓉可の間近に歩み寄る。
 蓉可は泰麒の髪をなでつけた。
「……まだ短いようでございましたね」
「そう……?」
「ええ。女仙《にょせん》の目がなくなるからといって、だめですよ、お切りになっては。せっかくきれいなお姿なのだから、鬣《たてがみ》が短いのは惜《お》しいもの……」
 転変《てんぺん》した姿のことを言っているのだと悟《さと》って、泰麒はうなずく。
「ちゃんと見られた?」
 転変した夜は女仙たちに見せてやることなど、考えにも浮かばなかった。──女仙たちも泰麒自身も、あれほどそれを願っていたのに。
「はい。嬉《うれ》しゅうございました」
 丹念に丹念に、蓉可は髪をなでる。
「驍宗様は王に足るお方。本当に嬉しいこと続きでございます」
「……嬉しい?」
 蓉可は目をしばたたく。
「はい。少し……寂《さび》しゅうもございますが」
 いちばん身近にいた、優《やさ》しい女仙。どれほどの愛情を注いでもらったろう。
「……蓉可」
 膝をついた蓉可に抱きついた。
 ──別れ、なのだ。
「泰麒、どうぞつつがなく」
 ごめんなさい、と、これで何度目かにつぶやく。
 蓬山に来てから、女仙には詫《わ》びることばかりだった。転変できずに、使令《しれい》を下せずに、そしてまたひどい裏切りをして。
 全部を白紙にかえしてしまえたら、どんなにいいだろう。驍宗を黙って見送っていれば。
 そうすればこれほどの罪の意識も、蓬山との別れもなかった。ついさきごろまでそうしていたように、蓉可の歌うような声に起こされて、女仙たちと笑いながら食事をして、汕子《さんし》と迷路で遊んで──これからも、そんなふうに過ごすことができたのに。
 蓉可はひとしきり背中をなでてくれてから、身体《からだ》を離した。
「──さあ、参りましょう」
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