あれよあれという間《ま》の三国志ブームやら……というのは上巻でやってしまいました。すでに書くことを失って途方《とほう》に暮れる、あとがきの苦手《にがて》な小野《おの》です。
前作の『月の影 影の海』が出てから、「シリーズにならないんですか?」というご質問をたくさんいただきました。ありがとうございます。一応シリーズのつもりで、オチも用意してありますが、そこまで書けるかどうかは読者さまのご声援しだい……というのが近来の出版事情なのでした。世の中ってキビシイ……。
とにかく、書けるところまでがんばりますんで、どうぞ、よろしく。
こうしてシリーズを抱《かか》えてみると、しみじみ自分の筆の遅さが悔《く》やまれます。月に一作とか二か月に一作とか書けると、あっという間にシリーズも終わって、また次の話にかかれるのになぁ……なんてことをしみじみ思うのです。五本だ十本だというのは簡単ですが、それを割り算して何年かかるか考えると、「とほほ」としか言いようがありません。待っていてくださる方はもっと虚《むな》しいかもしれない……精進《しょうじん》しますです、はい。
この筆の遅さで、しかもワープロがなかったら、なんてことを考えると背筋が寒くなります。この世にワープロさまがおいでにならなかったら、小野という作家はいなかったに違いありません。そういうわけで、老骨にムチ打ってがんばっているわが家の98くん(ゾラックくんという)にエールをおくってあげてください。
そう、ウチのゾラックはすでに老兵なのです。もうちょっと速《はや》いマシンに買い替えたい気持ちはやまやまなのですが、肥大《ひだい》した辞書という大問題があって、おいそれとマシンやソフトを替えるわけにはいきません。もともと「くじ」と打って「九字」やら「臨兵闘者皆陳烈在前《りんびょうとうしゃかいちんれつざいぜん》」やら「臨兵闘者皆陳烈前行《りんびょうとうしゃかいぢんれつぜんぎょう》」やらが出てくるような怪《あや》しげな辞書でしたが、このシリーズのおかけでさらに拍車《はくしゃ》がかかって、妖怪《ようかい》じみた辞書に成長しつつあります。はてさて、来年の今ごろは何Mバイトの辞書に成長しているのだろうか……。うーむ。
前作を書いて以来、よく「第二水準の漢字じゃ足《た》りないでしょう」と言われますが、以外に旧JISの第二水準でことたりるものなんですよね。よくできてるなぁ、と思っていましたら、今回初めて第二水準にない漢字というのが出てきてしまいました。この先肥大した辞書に加えて、肥大したユーザー登録漢字なんてものの面倒《めんどう》までみなくてはならなくなったらどうしよう。考えるだけで目眩《めまい》がしてしまいます。
……なんて話を延々してると、まるでコンピューターおたくのようですが、私はけっしてそんな物知りな人間ではありません。おたくになりたいという野心はあるのですが、それにはちょっと時間が足りないようです。すでにゾラックはただのワープロ(通信機能付き)に成り下がってしまいました。ごめんね、ごめんね。
そうそう、通信といえば、NIFのSFフォーラムの皆様。昨年は多大なご声援をありがとうございました。昨年のベスト投票でも法外な評価をいただいてしまい、小心な私は途方《とほう》に暮れております。私個人の勝手な方針で、会議室でのレスは控えさせていただいておりますが、ありがたく拝見しております。この場を借りて心からお礼を申しあげます。どうもありがとうございました。
おや、ぜんぜん作品の内容に関係ないあとがきになってしまいましたね。
実は私は自分の作品についてあれこれ言うのは好きじゃありません。なにを言っても言い訳になってしまいそうな気がするからです。そういうわけで、あとは首を洗って皆様のご感想をお待ちしております。少しでもお気に召せば幸いです。