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十二国記244

时间: 2020-08-29    进入日语论坛
核心提示: 雉門《ちもん》は関弓山《かんきゅうざん》の麓《ふもと》にある。山頂にある王の居宮と朝廷のあるのが燕朝《えんちょう》で、
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 雉門《ちもん》は関弓山《かんきゅうざん》の麓《ふもと》にある。山頂にある王の居宮と朝廷のあるのが燕朝《えんちょう》で、臣下のうち高級官の官邸《じたく》と府邸《やくしょ》のあるのが内朝、下級官のそれは外朝、これは山の中腹にある。さらに下ると関弓山の麓に出る。そこにあるのが国府で、宮城《きゅうじょう》の入り口の皋門《こうもん》から国府の奥の雉門までは民が自由に出入りできる。それで雉門を中門ともいった。
 六太は山を駆け下って雉門へ出る。凌雲山《りょううんざん》は文字どおり雲を凌《しの》ぐ山だが、内部を貫く道は呪《じゅ》が施《ほどこ》されていて、実際に歩けばさほどの距離ではない。それでも広大な宮城のことではあり、礼服を脱がなくてはならないせいもあり、かなりの時間がかかってしまった。
 息を切らせて雉門の内の建物に駆けこむと、言い渡してあったとおり、賓客《ひんきゃく》をいったん休息させるための建物の中に人影があった。端然と椅子に腰を下ろして庭を見ている。出会ったのは十八年も前のこと、当時六太より小さかった子供は壮年の男になっているはずだが、その人影はまだ若い。十五か十六か。それでも青みを帯びた黒い髪をしていた。
「──更夜、か?」
 心許《こころもと》なくなって室の入り口で足を止めてしまった六太が声をかけると、人影が振り返る。にこりと笑って立ち上がった。
「──六太」
 言って彼は床に膝《ひざ》をついた。
「会いたくなって来てしまった。──台輔、お久しゅうございます」
 深々と叩頭《こうとう》したので、六太がどういう地位の者だか分かっているのだろう。
「もう十八年にもなりましょうか。あの節には台輔とも存じあげず、失礼をいたしました」
 身なりは整っている。語る言葉ももはや鳴き声ではない。
「お前、でも」
 元州《げんしゅう》で出会ったあの子供と、目の前の少年が結びつかずに、六太はややうろたえる。彼は顔を上げて、ふたたび笑ってみせた。
「台輔もお人が悪い。ちゃんと宰輔《さいほ》だと言ってくださればよろしかったのに。後で人に金の髪なら台輔だと聞いて、どれだけ驚いたことか」
「あ──ああ、そうだな」
 この国の人々はさまざまな色の髪を持つが、金だけはない。これは麒麟《きりん》だけに特有の色なのである。
「台輔から名を賜《たまわ》るなんて。──でも、あの頃にそれを言われても、わたしには理解できなかったでしょうが」
「お前──いま、どうしてるんだ?」
「拾ってくれた親切な方があって、言葉から教えていただきました。いまはその方にお仕《つか》えして、官の末席に」
「仙籍《せんせき》に入ったのか。それで歳《とし》をとってないんだな……」
 はい、と更夜は笑う。
「関弓へいらっしゃるのにお供をして、どうしてもお会いしたくて。台輔に面会を求めても門前払いでしょうから、お名前をお出しした。──やっぱり失礼だったでしょうか?」
「とんっでもない!」
「よかった。──実は台輔はわたしのことなど、お忘れだろうかと」
 六太は首を振る。ようやく再開したのだと、そんな気分がこみあげてきた。
「忘れてない。──ほんとに久しぶりだなぁ……」
 はい、と更夜は笑う。
「立てよ。更夜にそんな風にされると、なんか妙な気がする」
「かたじけのう存じます」
 一礼してから立ちあがって首を傾ける。
「──六太として会ったんだから、これからもそれでいいんだろう?」
「うん。それでいい」
 更夜は側に歩み寄ってくる。親しげに見下ろしてきて、少しせつない顔をした。
「……ずっと会いたかったけど、関弓はおれにはちょっと遠かったな」
「そうだよな。……ごめんな」
「あいつがいるから、あまり人里には行けなかったし。人里を通って道を訊《き》かないと関弓がどこだか分からないし」
「あいつ? 大きいの?」
 うん、と更夜はうなずく。
「大きいの、どうしてるんだ?」
「いるよ」
 更夜は言って、悪戯《いたずら》めいた笑みを浮かべた。まるで共犯者に対するような。
「大きいのと一緒に護衛官をしてる。そこの彼と同じようにね」
 言って更夜は六太の背後に気配を殺すようにして控えている亦信を見やった。
「ごめんな。こいつら、離れてくれないんだ」
「当然だよ。六太は尊い方なんだから」
「よせやい」
 くすくすと笑って、更夜は軽く身を屈《かが》める。六太の顔をのぞきこむようにした。
「六太は城から出られるのか?」
「大丈夫。サボるって言ってきたし」
「じゃ、大きいのにも会えるね」
「近所にいるのか?」
「関弓の外にいる。──大丈夫、大きいのはおれの言うことを聞くから」
 言って更夜は声をひそめた。
「大きいのもね、言いつけを守っているよ」
 言いつけ、と首をかしげて、六太は思い出した。人を喰《く》うな、と言ったことを。
「大きいのが? それ、すごいな」
 六太はかなりのところ呆《あき》れている。妖魔が人を養う。その人間のいいつけを守る。──信じがたいことだ。
「行こう? 六太は、関弓に出たりする? おれは来た道しか分からないんだけど」
 六太はうなずいた。
「まかせとけ。おれ、関弓には詳《くわ》しいんだ。案内してやる」
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