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十二国記247

时间: 2020-08-29    进入日语论坛
核心提示: 人を襲ってはだめだ、と更夜は妖魔に言い聞かせた。空腹になれば目につく生き物を殺して喰《く》うから、更夜が生き物を狩って
(单词翻译:双击或拖选)
 人を襲ってはだめだ、と更夜は妖魔に言い聞かせた。空腹になれば目につく生き物を殺して喰《く》うから、更夜が生き物を狩って与えることを覚えた。飢《う》えなければ妖魔は更夜の願いを聞いてくれたので。
 そうやって人を襲うことが絶えても、やはり人は妖魔も更夜も嫌うのだ。街の近くへいけば、必ず弓矢が雨降ってくる。もう海の対岸を尋ねる理由もないのだけれども、更夜には二度と行かないと決意をすることができなかった。
 年とともに人恋しさは募《つの》ったが、人と交わる場所が更夜にはなかった。妖魔は相変わらず更夜を名では呼ばなかった。自分で自分に話しかけてやるしかなかった。
 ──ときどき更夜には六太に会ったことが夢なのじゃないかと思えることがある。あんなふうに妖魔にも更夜にも怯《おび》えず、親しげに話をしてくれる人がいたことなんて、振り返ると信じられないことのように思えるのだ。だから無理にも自分を更夜と呼び、妖魔をろくたと呼ぶ。どれほどひもじくても食べ物は妖魔に譲《ゆず》り、どれほど身体が辛《つら》くても妖魔のために食べ物を狩ることを忘れなかった。人を喰《く》うな、という六太の言葉を守っていれば、六太に繋がっていられる気がしたのだ。
 どこかに更夜が住む場所があるのではないかという夢は、投げつけられる悲鳴の数、放たれる弓矢の数だけ目減りしていった。いっそ妖魔と別れて関弓を探そうかと思うことも会ったけれど、小さいの、と慈愛をこめて呼ばれると、その気持ちも萎《な》えてしまう。
 しょせん更夜は妖魔の子だ。人には交わることができない。
 諦《あきら》めた頃に斡由《あつゆ》に会った。六太に会ったのと同じく黒海《こっかい》のほとり、元州《げんしゅう》のことだった。
 
 いつものように妖魔にまたがって陸に行き、石を投げて獣を狩った。兎《うさぎ》の一羽や二羽で妖魔の飢《う》えは満たせない。それで食事をする妖魔の側を離れて、次の獲物を探しにいった。前に射《い》かけられた矢が腕を傷つけている。痛くて痛くて寝ていることさえ辛かったが、妖魔には餌《えさ》を与えなくてはいけない。そこに矢が降ってきたのだ。
 更夜は鳴いて林の中に逃げこんだ。矢を射かけられたことなど数え切れず、鏃《やじり》がうがった傷も数えきれないほどだけれども、今現在痛みを訴える疵《きず》があれば、慣れなど吹き飛んで消えてしまう。
 林の中に転《ころ》がりこんで、繁みの中に身を隠した。ぴたりと矢がやんだ。
「──子供、出てこい」
 朗々とした声がした。息を殺す更夜に、なおも声がかけられる。
「お前、さきほど妖魔の背にまたがって、空を飛んでいなかったか」
 更夜には人の言葉がほとんど理解できないが、この男がなにを言っているのかは不思議に分かった。その声が怒声でも悲鳴でもないのに気を引かれて、繁みから顔をのぞかせた。
 林から続く斜面の上に、数人の男が立っていた。ほとんどが膝《ひざ》をついて弓を構えていたけれども、その中にひとり、その前に立って腕を組んでいる男がいた。
「どうした、出てこないか」
 言って男は周囲を見やった。
「怯《おび》えているようだ。──やめよ」
 しかし、と言う近従に、男は手を振る。近従たちはいっせいに弓を下げた。
 更夜は武器が収められるのを見て、また少しだけ繁みから顔をのぞかせてみた。男と視線が合った。笑った男は妖魔と同じ赤い髪で、右の蟀谷《こめかみ》の一房だけが白い。それがなんとなく警戒を解《と》かせて、更夜は膝をついて身を起こした。
「出てこい。何もしない」
 優しげな声だった。それで更夜はそろそろと繁みを出る。追わない人間の側なら寄ってみたかった。それほど人が恋しかった。
 男は屈《かが》みこむ。手を差し伸べた。
「──来い。打ったりはしないから」
 さらに気を惹《ひ》かれて繁みを出ようとした更夜を呼び止めるものがあった。およし、と咆哮《ほうこう》に似た声がする。激しい羽音がして礫《つぶて》が落ちてくるように目の前に妖魔が降り立った。妖魔は奇声をあげて男たちを威嚇《いかく》する。そうしながら後足を伸ばして腰を下げた。──更夜に背に乗れ、と促《うなが》しているのだ。
 弓を下ろしていた男たちがいっせいに再び弓を構える。それを膝《ひざ》をついた男が止めた。
「──よせ。射《い》るな」
 命じて、男は怯《おび》える様子もなく更夜と妖魔を見比べる。ひどく興味深げな表情だった。
「面白いな。その妖魔、お前を守っているのか」
 言ってもう一度手を伸べる。
「来い。お前にも妖魔にも何もしない。──そうだ」
 男は言って、背後を振り返る。弓を下ろしたものかどうか、迷っている風情《ふぜい》の男たちに鹿を出せ、と命じた。
「そら。お前も狩をしていたろう。石では鹿は狩れまい」
 更夜はきょとんと男と鹿を見比べた。くれたとしか思えないのだが、その理由がわからない。男は更夜の視線を受けて笑う。
「お前も鹿を喰《く》うのか? それともこちらのほうがいいか」
 男は言って、腰の袋から緑の葉でくるんだ包みを取り出す。目の前で葉を剥《む》いてみせると、中には蒸《む》した穀物を握り固めた餅《もち》が出てきた。
 更夜はそれを覚えている。六太がくれたあれだ。
 ん、と男は首を傾ける。
「ほしくはないか? やはり肉のほうがいいか」
 更夜は繁みを出、林を出た。妖魔がおよし、と鳴いたけれども、更夜はそれに従わなかった。代わりに男に向かって鹿を指さす。鹿と妖魔とを代わる替わるに指すと、男がうなずいたので、妖魔に向かって笑ってみせた。
「くれるんだって。食べていいから、人を襲ったらだめだぞ」
 不審そうに鳴いた妖魔は、それでも身を乗り出し、鹿の足を銜《くわ》えて足元に引いた。更夜はそれを見てそろそろと男のほうへ向かう。油断なく男たちを見守ったが、特に酷《ひど》いことをされそうな気配がない。それで安堵《あんど》して膝をついた男の側に寄り、その近くに座りこんだ。
 男はそろりと手を伸ばす。少し怯えて身を引いた更夜の頭に手を置いた。大きな温かな手だった。
「不思議な子だ。あの妖魔を飼《か》い馴《な》らしているのだな」
 優しげな声がくすぐったくて、更夜は身を引いた。掌《てのひら》の感触が消えると、そこがひどく寂しかった。
「……触られるのは嫌《いや》か。獣のようだな」
 そういうわけじゃない、と更夜は首を振る。
「いい。嫌がることはすまいよ。──どこの子だ。近隣に天犬《てんけん》を連れた人妖《にんよう》が出ると聞いたが、まさか本当に人の子だとはな」
 更夜はただ男の笑みを浮かべた顔を見る。
「名はないのか? どこに住んでいる?」
「──更夜」
 更夜は答え、名乗れる自分にささやかな感銘を覚えた。名を持つ自分、それを尋ねてくれる人のあること、そんな場面を何度も夢見ていたような気がする。
「更夜か。更夜は近郊の子か?」
 呼ばれて嬉《うれ》しかった。至福感に満たされて、更夜は背後を振り返った。林の上に天に向かってそびえる山々が見える。それを指さした。
「金剛山に住んでいるのか。黄海──はないだろうな。あれには人も獣も出入りできないというから」
「崖《がけ》」
 更夜が言うと、男は破顔した。
「そうか、崖に住んでいるか。お前はわたしの言葉を理解しておるんだな。利口《りこう》な子だ」
 男は言って再び更夜の頭に手を置く。今度は更夜もなされるままになっていた。
「いくつだ? 十二か、そのくらいか」
「知らない」
「親はないのか}
 更夜はうなずいた。
「口減らしのために黒海《こっかい》に投げこまれた子供が多かったというが、お前もそれか。よく今日まで生き延びた」
「……ろくたが」
 更夜が妖魔を振り返ると、男は鹿を食《は》んでいる妖魔を見やる。
「これは驚いた。妖魔に養われたか。あれはろくたというのだな」
「……うん」
 男は微笑《わら》い、ふと更夜の左腕に目をやった。
「──どうした。怪我《けが》か。膿《う》んでいる」
 更夜がうなずくと、腕をとってしけしげと見る。
「中に鏃《やじり》が残っているな。これは手当てをしたほうがいい」
 男は立ち上がる。更夜はそれをせつない気分で見上げた。このまま去っていくのだろうか。
 ──だが、男は手を差し出した。
「来い。更夜はもう少し、まっとうな暮らしをしたほうがいい」
「来い?」
「わたしは斡由という。頑朴《がんぼく》にいる。──分かるか?」
 更夜は首をかしげた。
「わたしの住まいに来い。お前には手当てと衣服と教育が必要だ」
「ろくたも……一緒?」
 おそるおそる訊《き》いた答えには眩《まぶ》しいほどの笑みが返ってきた。
「もちろんだ」
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