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十二国記252

时间: 2020-08-30    进入日语论坛
核心提示:「帰ってこんな」 玄英宮《げんえいきゅう》の一室である。尚隆《しょうりゅう》は外の闇《やみ》を見やって、つぶやいた。六太
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「……帰ってこんな」
 玄英宮《げんえいきゅう》の一室である。尚隆《しょうりゅう》は外の闇《やみ》を見やって、つぶやいた。六太《ろくた》が深夜に至るも戻ってこない。黙って王宮を抜け出すことは頻繁《ひんぱん》だが、夜半まで戻ってこないなどということはなかった。たとえ夜抜け出すとしても、誰にも気づかれないですむ深夜から早朝にかけて、周囲の官を青ざめさせるようなことはしたことがない。
「……やはり何かあったのでは」
 朱衡《しゅこう》の不安の色濃い声には、さてな、と答えを返す。そこに足音荒く飛びこんできた者がある。表情を強《こわ》ばらせた成笙《せいしょう》だった。
「珍しいな。成笙の血相が変わっているぞ」
 尚隆が揶揄《やゆ》すると、成笙は低く吐き捨てる。
「ふざけている場合か。──亦信《えきしん》の死体が見つかった」
 尚隆はもちろん、その場にいた朱衡も帷湍《いたん》も成笙の顔を見る。
「台輔《たいほ》はおられん。行方《ゆくえ》がしれない」
「……不憫《ふびん》なことだ。せっかく梟王《きようおう》に殺されずに生き延びたというのに」
 主上、と朱衡はねめつける。
「そんなことを言っておられる場合ではないでしょう」
「まったく、六太はもう少し友達を選ぶべきだな。連れ出すたびに監視役を殺されたのではたまらん」
「主上!」
「莫迦者《ばかもの》は放っておけ」
 憤懣《ふんまん》やるかたない、といった風情《ふぜい》で言い放ったのは帷湍である。
「更夜《こうや》、と言ったんだな、その者は」
 帷湍は成笙に問う。
「そのように聞いている。雉門《ちもん》の閹人《もんばん》にも確認を取った。台輔とふたり、連れだって宮城《きゅうじょう》を出たそうだ。亦信がそれについていった」
「そして、殺されたか。……どこだ?」
「関弓《かんきゅう》の外。しかも死体は喰《く》い荒らされている。おそらく妖魔か妖獣か、そんなものだと思う。げんに関弓の者が今日の夕刻、天犬《てんけん》を見ている」
「台輔の姿は見えないんだな?」
「どこにも」
「連れ去られたか。しかし、妖魔が現れたのが気になるな。このところ関弓付近には姿を見なかったんだが」
「うむ。──それと、これは関係があるのかどうか知らんが、本日、子供がいなくなったと訴えがあった」
「──子供?」
「この春、生まれたばかりの女児だそうだ。これが目を離したすきに消えて失せたと」
「妙な話だ。……台輔が消えたことと関係あるのか、ないのか」
 それよりも、と朱衡が声を落とす。
「台輔はご無事でしょうか」
「殺しておとなしく死ぬような餓鬼《がき》か、あれが」
 ぼやきのようなつぶやきが聞こえて、三者はいちように窓際に座った王を見た。帷湍は王をねめつけた。
「心配ではないのか、貴様は! 行方《ゆくえ》が知れないんだぞ!」
「俺が心配して、それでどうにかなるのか?」
「お前という奴は……」
「成笙が探すように申しつけたのだろう」
 これに成笙はうなずく。
「ならば、もはやすることはないな。そのうちどこからか見つかるか、さもなければ勝手に帰ってくるだろう」
「尚隆、貴様は」
「そうでなければ、誰かが要求を突きつけてくる」
 え、と帷湍は瞬《まばた》いた。
「攫《さら》われたか、殺されたか。すでに殺されたものなら、俺たちがここで気をもんでもしかたがない。だが、簡単に殺されはすまいよ。あれには使令《しれい》がついているからな。攫われたのなら、犯人は誰で何のためだ。──少なくとも、六太が抵抗すれば使令が守る。簡単に攫ってなぞいけるものか。それを死体ひとつでやってのけたからには、六太もさほどの抵抗をしなかったのだろう。まあ、更夜とかいう奴が攫ったと考えるべきだろうな」
「友人だから抵抗しなかった……?」
「かもしれんし、その消えた子供とやらを人質《ひとじち》にしたのかもしれん。どちらにしても六太がすすんで攫われたのなら、そうそう手がかりがあるものか。攫ったのなら、目的があるだろう。単に連れていきたいと思うほど、かわいげのある餓鬼でもなし」
「あのな……」
「せっかく重要な駒《こま》を手に入れたのだ、犯人はひけらかさずにはおかんだろうよ。ま、それまで放っておけ」
「本当にそれまで、なんの手も打たない気か」
「打つ手がなかろう。──朱衡」
「は、はい」
「元州《げんしゅう》の驪媚《りび》に連絡をとれ」
「元州……でございますか」
 尚隆は皮肉げに笑う。
「大いにキナ臭かったところに、ひと騒ぎあったのだから、それとなく様子を見ておいたほうがいいだろう。何かしておかないと、六太が戻ってきたときに、見捨てたのなんだのとやかましいからな。──ついでに仙籍《せんせき》をあたって元州の官の中に更夜という名だか字《あざな》だかを持つものがないかどうか調べておくんだな」
「──畏《かしこ》まりまして」
 軽く口の端で笑って、尚隆は外を見る。
「……難儀な餓鬼《がき》だ。内乱は嫌《いや》だのと抜かしながら、自ら火種《ひだね》になるか」
「主上は元州をお疑いですか」
「元州が兵を蓄《たくわ》えているのは確かだ、実際、武庫から武器が消えていたのだろう」
 成笙はこれにうなずいた。それとなく調べたかぎりでは、明らかに武庫の中身が減っている。
「どうせ痛い腹だ、こちらが探りを入れれば露見を知って動きだすだろう。六太を攫《さら》ったが元州にしろ元州でないにしろ、こちらが動けば相手も動く」
「──はい」
「……さて、実際にはどこが出てくるか。──かなわんな。心当たりが多すぎる」
 尚隆が見やった雲海は混沌《こんとん》と闇《やみ》に沈んでいる。
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