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十二国記253

时间: 2020-08-30    进入日语论坛
核心提示:「台輔《たいほ》にはお身体の調子が悪いとうかがった。大事ございませんか」 斡由《あつゆ》がそう言って、更夜《こうや》を伴
(单词翻译:双击或拖选)
「台輔《たいほ》にはお身体の調子が悪いとうかがった。大事ございませんか」
 斡由《あつゆ》がそう言って、更夜《こうや》を伴い牢《ろう》を訪れたのは翌日のことだった。
 眠っている間に驪媚《りび》が運んでくれたらしい、六太《ろくた》は牀榻《しょうとう》の寝台で横になっていて、斡由はその枕辺《まくらべ》に来て丁重に膝《ひざ》を折った。
「……血に酔っただけだ」
「わたしは麒麟《きりん》を詳しく存じあげないが、それは手当てをさしあげずとも大事ないものなのですか」
「大丈夫だ」
 六太は身を起こそうとしたが、まだかなりの熱がある。側に控えた驪媚が慌《あわ》てたようにそれをとめた。
「どうぞ、お休みを。かけがえのないお身体なのですから」
「こんなことじゃ死なねえよ。──ところで、斡由?」
 はい、と斡由は膝《ひざ》をついたまま一礼する。
「斡由は漉水《ろくすい》の工事だけが望みか? ならば遂人《すいじん》も再三そう言っている。じきに工事が始まるだろう」
 台輔、と斡由は六太を見据える。
「雁《えん》に河がどれだけの数あるかご存じか? そのうちのいくつに、雨期にも耐えうる堤《つつみ》があるかは?」
「すまん。知らない」
「わたしも存じません。ただ、漉水は有名な大河。その漉水でさえこのありさまなら、他の河も推《お》して知るべしというところでしょう。そうは思われませんか」
「……そうかもしれない」
 六太はいって、斡由の精悍《せいかん》な顔をのぞきこんだ。
「だが、一国は広い。治水《ちすい》だけでもやらなければならないことがたくさんある。官の数は激減している。農地を耕すことに必死の民に、これ以上|夫役《ぶえき》をせよとはとても言えない。──分かってくれないか。一朝一夕《いっちょういっせき》に国は立ち直りはしないんだ」
「分かっておりますとも」
 斡由は息を吐いた。
「ですが、なぜ太綱《たいこう》に州には州侯をおけ、郡には太守《たいしゅ》をおけ、とあるか。王は候の権を奪って、国府の裁可《さいか》なくてはいっさいの治がならぬようにしてしまわれた。国情は分かります。なぜそんなことをなさったのかも分かっています。しかしならば、国府は候のぶんも政《まつりごと》を行わなくてはならない。違いますか」
「……それは」
「漉水が危うい。堤を作りたい。王に奏上し裁可があり、国府が指導してこれにあたる。これが候にまかせるよりも早く確実なら、わたしとてこのような暴挙には出なかった」
 六太には返す言葉がない。
「聞けば王は政務に忙殺されるどころか、しばしば朝議までご欠席になり、官は王をお探しするのに躍起《やっき》とか。──では、なんのために州侯の権を剥奪《はくだつ》なさったのです」
「……尚隆《しょうりゅう》は」
「州の自治を返していただきたい。王は国の陰陽《いんよう》の要、王の是非は申しあげないが、王が政務をお厭《いと》いになるというなら、候に権を返していただきたい。政務の全てを六官諸侯に任せたうえでどれほどにもお遊びになればいいのでは」
「それでは国は成り立たない。諸侯が各々の思惑で勝手なことを始めれば、治水ひとつをとっても上流だけが潤《うるお》って下流が枯れることになりかねない」
「では、なぜ全権を委《ゆだ》ねる官をおかれない。それに全てを任せ、王を代行させればよろしい。──わたしは道に悖《もと》ることを申しあげておりますか」
「斡由、しかし」
「それでは王の面目がありますまい。それはわたしにとて分かります。しかし、民を助けてくださらないのなら何のための王なのです。わたしは王に全権を委任する官を設けよと奏上申しあげるつもりです」
「奏上ではなく、要求だろう。──斡由、お前の言っていることがさほど悪いとは思えない。だが、人質《ひとじち》を取れば主張の善悪はもはや問われなくなってしまうんだぞ」
「──ばかな!」
 いきなり背後、寝台の足元で吐き捨てる声があって、六太は驚いてそちらを見た。驪媚は表情を強《こわ》ばらせている。
「卿伯《けいはく》も台輔もなんということをおっしゃいます」
「驪媚、あのな……」
「いいえ!」
 驪媚は激しく首を振る。
「その奸夫《かんぷ》の言葉に耳をお貸しになってはなりません。いまこれが言ったことが、どれほど罪深いことかお分かりにならないのですか!」
 六太は困惑して驪媚を見上げ、斡由はわずかに苦笑した。驪媚は歩み寄り、斡由との間に割りこんでくる。
「全権を他者に委《ゆだ》ねることがあってはなりません。ならば何のための麒麟《きりん》です。何のために麒麟が王を選ぶのです。麒麟は民意の具現、天命あって王を玉座《ぎょくざ》にお進めするものを、麒麟の選定なく、ひいては天命もなく、実質上の王にするとおっしゃるのですか!」
「驪媚」
「いまこれが申しあげたのはそういうことなのですよ、お分かりなのですか。もしも仮に斡由をその席に就《つ》け、斡由が道を失い梟王《きょうおう》のように乱心すればどうするのです! 王ならばその治世は永遠に続くものではありません。なれど、寿命のない仙に王に等しい権を与えればどうなるか。梟王はたかだか三年で雁《えん》をあれほど荒廃せしめることができたのですよ!」
 六太は黙《もく》す。王には寿命がないが、治世は永遠には続かない。道を誤り民意に背《そむ》けば王を玉座に据えた麒麟にその報いがやってくる。──病《や》むのだ。王を得た麒麟もまた寿命を持たない生き物だが、この病ばかりは治癒《ちゆ》の方法がない。王が道を失ったことゆえの病なので、これを失道《しつどう》という。麒麟が斃《たお》れれば、王もまた斃れる。だから昏君《こんくん》の世は決して続きはしない。
「天帝はこの世をお創りになり、万事をお定めになりました。覇者を王にせず麒麟に王を選ばせたのはなぜです。──いいえ、天命のない者を王にしてはなりません。この理《ことわり》に逆らうことは、世の成り立ちを否定することなのですよ」
 くすり、と斡由は苦笑した。
「梟王を選んだのもまた麒麟。牧伯《ぼくはく》はそれをお忘れではないか」
「──それは」
「王にはしばしば昏帝《こんてい》がある。たしかに失道によって玉座を失い、圧政は決して長続きしなかった。──では問うが、なぜ麒麟は昏帝を王に据えたのだ」
「卿伯は天命を侮蔑なさるか」
「わたしは事実を述べているまで。麒麟は万民を度《はか》り、最良の者を玉座に据えるという。では、ならばなぜ梟王などを登極《とうきょく》させた。真に天帝の意ある奇蹟《きせき》の技なら、そもそも最初から決して道を誤らぬ者を玉座に据えればよろしかろう。天命といい麒麟の選定というが、選んだ王が事実最良である保証がどこにある」
「──卿伯!」
「そもそも天帝というが、天帝とはいったいどちらにおられる。諸神は悪を雷で討つという。ならば麒麟が病むのを待たずとも、王が道を誤った瞬間に雷で打てばよろしかろう」
 驪媚は血相を変えた。
「なんという──畏《おそ》れおおいことを!」
「麒麟《きりん》は最善の王を選んだのだというのなら、その証《あかし》を見せていただきたい。天帝なる方がおられるのなら、連れてきてはもらえますまいか。わたしは、はっきりと申しあげる。天帝なぞおらんのだ。いたとしてもそんなものは必要ない。不遜《ふそん》だというのなら、いまここで雷罰を下していただこう」
「────」
 驪媚はあまりの暴言に言葉が出ない。天帝の威信を疑うことはすなわち、世の成り立ちを疑うことだ。斡由はなおも笑う。
「ここに獣がいる。この獣は主人を自ら選び、主人以外には従わぬ。獣は妖力無辺の妖《あやかし》、しかも性向は穏和で理《ことわり》を知る。──この獣の不可思議な習性を珍重した、ありがたがって世の理に押し上げたとしても、わたしは驚きませんが」
「斡由──そなた!」
 気色ばんで立ち上がった驪媚の背中を六太は軽く叩く。
「もしも麒麟を尊べというなら、おれの目の前で暴力はふるうな」
 はっと驪媚は目を見開き、恥じ入ったように俯《うつむ》く。
「失礼をいたしました」
 うん、とうなずいて、六太は斡由を見る。
「お前は、麒麟の選んだ者を玉座《ぎょくざ》に据えることが、そもそも間違いだというんだな」
「台輔には、現王が間違いなく最善の王だという確信がありましょうか」
 六太は斡由の射《い》るようなまなざしを見返した。あるといわなければならない己《おのれ》の立場分かっていたが、正直な言葉が口を突いた。
「……ないな」
 言って、六太は笑う。
「だが、お前の言葉にもうなずけない。おれはそもそも、王などというものはいないほうがマシなんじゃないかと思ってる」
「──異なことをおっしゃる」
「うん。でも、それが本音だ」
 台輔、と悲鳴をあげた驪媚を六太は見返した。
「驪媚、おれは確かに、尚隆を見て王だと思った。ひと目見て、すぐに分かった」
「台輔、ならば」
「──これが雁を滅ぼす王だと」
 驪媚は絶句する。
「尚隆は雁の息の根をとめるだろう。尚隆がどうこうだと言ってるんじゃない。王はしょせん、そのためにあるんだ」
 六太は言って、斡由を真っ向から見た。
「……王の全権を取り上げてしまえ、というなら、おれは協力したかもしれない。だがお前は王の全権を官に譲《ゆず》れと言う。それは王の上に上帝の位を作れという要求だよな。なら、おれはやめてくれ、と言う」
 斡由は目を細める。
「台輔は本当に異なことをおっしゃる」
「王にはあらゆる権がある。けど、権なんてものは振りかざさなければ持っている甲斐《かい》がないものだ」
 登極《とうきょく》から二十年、国土はようやく立ち直り始めた。しかしながら、国が冬枯れている間、おとなしく眠っていたのは奸臣《かんしん》だけなのだろうか。──ひょっとしたら王もまたそうではないのか。これまでは民を虐《しいた》げたくとも、それをするだけの余裕がなかった。
「民の主《あるじ》は民自身だけでいいんじゃないのか。上に権をおけば、権は民を虐げる。──そういうことなんだろうと思う」
 斡由は軽く一礼した。
「ご理解いただけず、残念です」
「……おれもだよ、斡由」
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