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十二国記292

时间: 2020-08-30    进入日语论坛
核心提示:「──更夜」「どんなに国が豊かになっても、その国におれのいる場所はない。妖魔の子だから」 言って更夜は尚隆を見上げる。「
(单词翻译:双击或拖选)
「──更夜」
「どんなに国が豊かになっても、その国におれのいる場所はない。……妖魔の子だから」
 言って更夜は尚隆を見上げる。
「国が豊かになればなるほど、夢のように安らかになればなるほど、おれはきっと悲しいし恨《うら》めしい。目の前に夢見た蓬莱《ほうらい》があって、でもおれはそこに決して入っていけない。おれを哀れんでくれるのなら、そんな思いをさせないでくれないか」
「ひと思いに殺してくれと言うか。──それは絶対にせんぞ」
 尚隆は更夜の前に膝《ひざ》をつく。
「妖魔は人を襲う。お前が襲われれば苦しいように、民の誰もが襲われれば苦しい。その妖魔はお前だけを選んだのだ。選ばれなかった人々とその妖魔が共に生きることはできない」
「──大きいのは人を襲ったりしない!」
 更夜は妖魔を掻《か》き抱《いだ》いた。
「ちゃんとおれの言うことを聞くんだ。おれに背《そむ》いて人を襲ったりしない。妖魔は人を襲わないと生きていけない生き物だけど、大きいのはおれのためにずっと我慢してくれているんだ!」
 では、と尚隆はうなずく。
「お前とその妖魔に住む場所を与えよう」
 更夜は笑う。痛々しいほど顔を歪《ゆが》めて。
「どんな贅沢《ぜいたく》な牢獄《ろうごく》? 銀の格子の檻《おり》だろうか」
「妖魔に襲われることのない国だ」
 尚隆は手を伸ばす。更夜の肩に嘴《くちばし》を埋める妖魔の頭にそれをのせた。目を見開く更夜の脇《わき》でろくたの身体が緊張して、それでもなでられるままになっている。
「──人が妖魔を疎《うと》むのは、荒廃した国に妖魔が徘徊《はいかい》しては人を襲うからだ。国の復興がなり、自然の理《ことわり》が整い、妖魔がうろつくことがなくなれば、妖魔に襲われることもなくなる。そうなれば人はお前の養い親もお前自身も恐れたりはしないだろう。珍しい妖獣だと、それですむ」
 尚隆、とつぶやいて目を見開く更夜に、尚隆は笑んでみせる。
「お前は処罰せぬ。元州《げんしゅう》の諸官、全てだ。それでなくても雁《えん》は民が少ない。このうえ減らしたくはない」
「でも」
「お前の仙籍《せんせき》も剥奪《はくだつ》せぬ。十年や二十年のことではないからな。……時間をくれ。必ずお前もその養い親も、追われることない土地をやろう。それまで王宮の庭で堪《こら》えてくれ」
 更夜はそう言う男を見つめた。
「そんな世が本当に来るだろうか……?」
「そのために俺はあるのだ、更夜」
 更夜は瞬《まばた》く。長く胸の中に落ちこんだ言葉を吟味《ぎんみ》するようにしていた。
「……ではおれは、それを金剛山《こんごうさん》で待っている」
「更夜、関弓《かんきゅう》へ来い」
「ろくたがいるから、おれは黄海《こうかい》で生きていける。黄海で雁がそんな国になるのを待っている……」
 言って更夜はよりいっそう力をこめて妖魔を抱く。
「……いつまででも、待っているから……」
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