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十二国記293

时间: 2020-08-30    进入日语论坛
核心提示: 妖魔の翼が西へ向かって去る。六太《ろくた》はそれが見えなくなるまで、露台《ろだい》からじっと見守っていた。 ──ろくた
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 妖魔の翼が西へ向かって去る。六太《ろくた》はそれが見えなくなるまで、露台《ろだい》からじっと見守っていた。
 ──ろくた、と更夜《こうや》は妖魔をとめた。六太は妖魔を呼んだ。
 悧角《りかく》、尚隆《しょうりゅう》を助けてくれ、と。
 けっきょくいつも、六太は尚隆の命を惜《お》しんでしまう。かつて昔もそうだった。やはり六太は逃げる人々の中から、悧角、と叫んだのだ。
 
 尚隆はふと目を開けた。頭上に薄藍《うすあい》に染まった蒼穹《そうきゅう》が広がっていた。揺れているのは、自分のせいだろうか、それとも他に理由があるのだろうか。
 ぼんやりと何度か瞬《まばた》きし、水の音を聞いた。風は海の風だ。暮れ始めた天には白く小さく星が見えて、それがゆるやかに揺れている。これは船の揺れだ、とそう思った。
 横になったまま首を横向けると、舳《へさき》に子供が座っている。尚隆が拾った子供だ。磯の岩場で倒れていたので死んでいるのだと思った。葬《ほうむ》るつもりで拾い上げると、まだ息があった。
「……なんで俺はこんなところにいる」
 尚隆はつぶやいたが、その声はひどく掠《かす》れた。
 敗走する民のために退路を守った。だが、その間を分断され、逃げていく民は村上《むらかみ》勢に包囲された。なんとか助けに行きたかったが、その場に踏みとどまることさえ難しかった。せめて弓があれば、上陸してくる村上を足止めできたのに、すでに矢がつきていた。
 三人を斬《き》り、奪った槍《やり》で二人を突いたところまでは覚えている。三人目を遅う前に運がつきた。たぶん背後から槍で突かれて、──それからどうなったのだろう。
 尚隆は顔をしかめて身体を起こした。たぶんどこかに傷があるが、それがどこだか判然としない。痛いといえば全身が疼《うず》いて、息をするのに難儀した。
「まさか……お前が助けたのか」
 六太は尚隆に問われて、ただうなずいた。最後まで迷った。だがどうしても見殺しにすることができなかった。血の臭気に巻かれて苦悶《くもん》する悧角を救命に向かわせた。──その場から攫《さら》って逃げた。
「他の連中は」
 六太はただ首を振った。せめてあれほどの血が流されていなければ。六太は諸国を放浪する間に血に酔い、小松《こまつ》の戦乱で完全に病《や》んでいる。残った人々の全てを助ける余力が残ってなかった。
「なぜ、助けた」
「おれも尚隆に助けてもらったから」
「お前は死にたくて浜に寝転《ねころ》がっていたわけではあるまい。それとも、死ぬ気だったのか」
 いや、と六太は首を振る。船端《ふなばた》に背をもたせかけた尚隆の顔をのぞきこんだ。
「お前、死ぬ気だったのか」
 尚隆は首を仰《の》け反《ぞ》らせて暮れていく空を見上げる。
「若、と呼ばれるたびに、よろしくと言われている気がした。……国をよろしく、我らをよろしく、と。──だが、守ってはやれなかった」
「お前のせいじゃないだろう?」
 国力が足りなかった。兵が圧倒的に不足していた。どうあっても勝てるはずはなく、しかも村上は和議を結ぶ気が端《はな》からなかった。
「俺のせいではないな。……しかたがなかった」
「じゃあ、しょぼくれる必要なんてないじゃないか。お前はできるだけのことをやったろう?」
「──俺は世継ぎだから城下の連中にちやほやされて育ってきたのだ」
「それは──」
「若、と呼ばれるたびに、一緒に託されたものがある。一声ごとに託されて降り積もったものを、俺は連中に返してやれなかった。……もう返す術《すべ》がない」
 尚隆は天を見上げたまま、六太のほうを見ない。反《そ》らした胸が大きく息をつくのは、傷が苦しいせいだろうか。
「……連中の願いだ。俺はそれを一身に背負っていながら、もはや下ろす術がない。生きている限りただ意味もなく背負い続けていかねばならない。……いくら脳天気な俺でもさすがに嫌気《いやけ》がさす……」
 船はただ海流に運ばれて、瀬戸内《せとうち》を漂っている。尚隆を悧角の背にすくい上げ、ただ飛翔《ひしょう》して漂流するこの小舟を見つけた。
 六太は尚隆を見つめる。この期《ご》に及んでまだ迷っている。
 尚隆の傷は深い。ああしていても相当に苦しいだろう。それとも──もっと苦しいものに蓋《ふた》されて、自分でも気づいていないのだろうか。だが、それは確実に尚隆の命を削っている。六太が迷えば迷うだけ、尚隆は不帰路《ふきじ》へ近づく。そしてきっと六太はまた見捨てられない。きっと助けるために、尚隆に死なない命を授けてしまう。──それが六太の運命だから。それともこれが雁《えん》の民意なのだろうか。
「……お前、国がほしいか」
 六太が低く訊《き》くと、尚隆は天を仰いだまま答えた。
「ほしいな」
「豊かでもなく、やせ細った国でもか」
 やっと尚隆は身体を起こした。どこかやつれた顔に、それでもいつもの笑みをはく。
「国の大小は関係ない。俺は国を継ぐべく育てられて、実際に親父から国を継いだ。国のない殿など笑い草だ。──それだけだ」
「国土が荒廃すれば、人の心も荒《すさ》む。人心は惑って、お前の言うことなど聞かないかもしれない」
「そんなものは俺の甲斐性《かいしょう》だろう」
 六太は尚隆をただ見る。
「……城をやろうか」
「お前がか?」
「国と民をやってもいい。──お前がやる気があるのなら」
「どこの国だ?」
「言ってもお前には分からない。もしもお前がそれを望むなら、お前は全部に別れを告げなければならない」
 尚隆は苦笑した。
「……別れを告げなくてはならないほどのものが、俺に残っていれば教えてもらいたい」
「二度と瀬戸内の海にも島にも戻れない」
「……ほう?」
「それでも良ければ、お前に一国をやる。──玉座《ぎょくざ》がほしいか」
 六太が見据える視線に、尚隆は静かに言葉を返した。
「……ほしい」
 六太はうなずき、舳《へさき》を離れて尚隆の足元に向かう。そこで膝《ひざ》をつき、深く頭を垂れた。
「──天命をもって主上にお迎えする。これより後、詔命《しょうめい》に背《そむ》かず、御前《ごぜん》を離れず、忠誠を誓うと誓約申しあげる」
「──六太?」
 六太は顔を上げる。尚隆を見据えた。
「国がほしいと言え。おれを臣下に迎えると。お前が期待を背負っているというなら、おれが国を背負っている」
 尚隆はただ静かに六太を見る。六太のいったい何を信じたものか、ふと笑んでうなずいた。
「──臣に迎える。ただし、必ず一国だぞ。城だけでも土地だけでも許さぬ」
 六太は首を垂《た》れ、彼の足にぬかずいて彼の望むものを与えた。
 王宮と折山《せつざん》の荒廃にさらされた国土と、──わずか三十万の雁国の民を。
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