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十二国記317

时间: 2020-08-30    进入日语论坛
核心提示: 正房《おもや》から出てきた子供たちと、家畜に水と餌《えさ》を与え、寝藁《ねわら》をさばいて替える。牛と山羊《やぎ》の乳
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 正房《おもや》から出てきた子供たちと、家畜に水と餌《えさ》を与え、寝藁《ねわら》をさばいて替える。牛と山羊《やぎ》の乳を搾《しぼ》る。夕仕事の間も、子供たちは楽しげに喋《しゃべ》りどおしだった。
「遅かったのねえ。さっさと戻ってくればよかったのに」
 女の子のひとりが祥瓊に言う。
「もう朱旌《たびげいにん》のひとたち、里《まち》を出てしまったわよ」
 祥瓊はむっつりと黙りこんで黙々と餌に混ぜる藁を切った。
「雪が降るとよかったのになあ」
 男の子が心底残念そうに言う。橇《そり》と馬があるとはいえ、雪道の旅は楽ではない。雪が降れば、やむまで朱旌たちは里に留まる。正直言って祥瓊もそれを期待してはいたが、雪が降れば祥瓊が今日じゅうに戻って来れなかったことも確かだった。
 朱旌《しゅせい》の連中は旅に熟達していたが、それでも冬の旅が困難でないわけはない。そもそも朱旌は春から秋にかけて各地の里を廻り、冬には大きな街に常小屋を借りてそこに落ちつくものだった。それをこの雪の中、危険を冒《おか》して冬に旅をするのは、祥瓊の父|仲韃《ちゅうたつ》が農閑期以外の興行を禁じたからだった。仲韃が斃《たお》れて、多くの朱旌は危険な冬の巡回をやめたが、いまだ冬場に旅をする朱旌もある。冬の里には楽しみがない。朱旌が来れば、里をあげての歓待になる。それを目的に無理を重ねて雪道を踏破する朱旌も決して少なくはない数残っている。
「雑劇《しばい》がおもしろかったわよねえ」
「おれ、上索《かるわざ》のほうがよかったな」
 楽しかった一日の話をうつむいて聞く。そんなもの、宮中でいくらでも見たわ、とは死んでも言えない悔《くや》しさ。
「——そういえば」
 言ったのは少女のひとりだった。
「小説《しょうせつ》で、すてきな話を聞いたのよ。慶国《けいこく》に新しい王が即位なさったんだって。まだ十六か十七くらいの、女王なんですって」
 え、と祥瓊は顔を上げた。
「すごいじゃない? 王なんて神にも等しいお方よ? 天下にたった十二の並びない地位におつきになるなんて、どんな気分がするかしら」
 そうね、と別の少女がうなずく。
「きっと着るものは絹よね。刺繍《ししゅう》に綺麗《きれい》な鳥の羽飾り。金銀も珠もほしいだけ」
「偽王《ぎおう》が起《た》って、好き放題にやってたのをやっつけたんだよな。すげえなあ」
「あら、それは雁《えん》の延王《えんおう》がご助勢なすったからよ」
「延王とお知り合いなんてすごいわよね」
「そりゃあ、きっと仲がいいんだよ、助けてくれるぐらいだもん」
「即位式はどうだったのかしら。きっとお綺麗なお姿だったんでしょうね」
 祥瓊《しょうけい》は足元をみつめていた。次第にかしましい声が遠のいていく。
 十六、七の娘。——それが王に。
 祥瓊は知っている。王宮での暮らしがどんなものか。この寒村での暮らしとどれだけの差があるか。
 ——ひどいわ。
 祥瓊は口の中でつぶやく。
 祥瓊がここでこんな暮らしをしているというのに。同じ年頃の娘が、祥瓊のなくしたいっさいのものを手に入れた。祥瓊には二度と王宮に帰る術《すべ》がない。優《やさ》しい父母を殺され、辺境の寒村に追いやられ、一生をこうやって生きていく。
 祥瓊は鋤《すき》を持った自分の手を見た。
 炎天下の労働で陽《ひ》に灼《や》け、重いものを持ち慣れたせいで節の立った手、手入れをしてくれる人もないから爪《つめ》の形も歪《ゆが》んでしまった。こんなふうに祥瓊は年老いていく。寒村の暮らしに馴染《なじ》むように身も心も荒《すさ》んで、やがては沍姆《ごぼ》のような汚らしい老婆《ろうば》になるのだ。
 その王が美しい十六のまま、王宮で暮らしている間に。
 ……ひどい。
 胸の深いところで、さらに小さな声がした。
 ……ゆるせない……。
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