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十二国記335

时间: 2020-08-30    进入日语论坛
核心提示:「采麟《さいりん》さまは景王《けいおう》をご存じ?」 王宮の庭で鈴は日向《ひなた》に座っていた。「ああ、台輔《たいほ》、
(单词翻译:双击或拖选)
「——采麟《さいりん》さまは景王《けいおう》をご存じ?」
 王宮の庭で鈴は日向《ひなた》に座っていた。
「ああ、台輔《たいほ》、とお呼びするべきでした」
 鈴の前に座って金色の髪を陽射しにきらめかせている少女は若い。実際には二王に仕《つか》えた采麟なのだが、彼女の外見は鈴と同じかそれよりも下に見えた。いかにも線の細い、繊細そうな顔立ち。その本性《ほんせい》は麒麟《きりん》という獣《けもの》だと聞いたけれども、だとしたらなんて優美な獣なのだろう、と鈴は思う。
「……構わないの。好きに呼んでも」
 彼女はおっとりと微笑《ほほえ》む。黄姑《こうこ》ももの静かな人物だが、采麟はいっそう静かで、始終ふわりと微笑んでいる。
 ——夢みたいだ。梨耀《りよう》に怒鳴られていた日々を思うと。
「台輔は景王をご存じ?」
 いいえ、と采麟は首を振る。
「お会いになったことがないの? 采麟さまでも?」
「隣の国か、よほどおつきあいがなければ、特にお会いしたりしないの」
 ふうん、と鈴はつぶやく。十二の国に十二の王と麒麟。同胞はたったそれだけなのに、寂しくはないのだろうか。
「景王に興味があるの?」
 采麟が首を傾ける。肩をすべって落ちた金の髪が、陽射しに透《す》けて白金の色に光った。
「同じ蓬莱《ほうらい》の出身なんですって。同じ年頃の女王さまなの」
 まあ、と采麟は微笑《わら》う。黄姑が与えた字《あざな》を揺籃《ようらん》というと聞いた。本当にゆりかごのように優しげな少女だった。
「あたし、ひとりぼっちだったから……一度でいいからお会いしたい。蓬莱の話を聞かせてもらいたいんです」
「鈴は蓬莱が懐《なつ》かしいのね?」
「そりゃあ、故郷ですもん。帰りたくて帰りたくて、どれだけ泣いたか分かりません」
「こちらは……嫌い?」
 悲しげに聞かれて、鈴はあわてて首を振った。
「ええと、嫌いとかじゃなくて。……ただ、あたし、こちらのことが分からないし、言葉だって分からないし。あんまりいい目も見なかったから、なんか、辛《つら》いところだなあ……って」
「そう……」
「でも、きっと景王もそうだと思うんです。だって同じ海客《かいきゃく》だもの。だから、お互いに慰《なぐさ》めあったりできると思うんです。きっとお互いの気持ちがよく分かるから」
 言って鈴はちょっと顔を赤くした。
「お友達になれるかしら……って」
「それは……どうかしら」
 鈴はぴくんと顔を上げた。
「景王は蓬莱を懐かしく思ってはいないかもしれないわ。……ちがう?」
「それは、こちらのひとだからそう思うんですよ」
 鈴の語調はしぜん、強くなる。これに対して采麟は首を傾けた。
「こちらのひとだって、故郷を離れてしまったひとはたくさんいるわ。浮民《ふみん》のようにどこも好きじゃなくて、流浪《るろう》のまま過ごすひともいる……」
 それに、と細い首をうつむかせた。
「同じ蓬莱の生まれだから、分かりあえるものかしら……。この国にも同じ国で生まれて憎《にく》みあっているひとがいるもの……」
 鈴はいらいらと采麟《さいりん》をねめつけた。
「こちらのひとには分からないだけだわ。単に故郷が同じなのと二度と帰れない故郷が同じなのじゃ、意味が違うもの」
「そうかしら……」
 采麟が小さく溜め息を落とす。それをさらにいらいらと見やったとき、黄姑《こうこ》が正面の建物から出てきた。
「ああ——ここにいたのね」
 言って黄姑は采麟に目配せする。
「少し鈴と話をさせてちょうだいね」
 はい、とうなずき、采麟は丁寧《ていねい》な会釈《えしゃく》をして宸殿《しんでん》へと戻っていく。いずまいを正した鈴の脇《わき》に黄姑が腰をおろした。
「——梨耀《りよう》どのにお会いしましたよ」
 鈴はぴくんと身体を震わせた。安穏《あんのん》とした王宮の美しい庭。そこで梨耀の名を聞くことは、なにか汚《けが》らわしいものでも見つけてしまったような気がした。
「翠微洞《すいびどう》の下僕《しもべ》たちを、王宮の下働きに召し上げようと思います」
 鈴は煩《ほお》が紅潮していくのを感じた。——では、もう翠微洞に戻らなくてもいいのだ。この美しい王宮にいて、黄姑や采麟や——ついさっき嫌《いや》なことを言われたことは、いったん忘れることにした——、そんな優《やさ》しい人たちに囲まれていられるのだ。
 そう、天にも昇る気持ちがしたから、黄姑の次の一言は鈴を凍《こお》りつかせた。
「けれども、鈴はその中には入れません」
 鈴は震えが立ち昇ってくるのを感じた。
「それ……どういう……」
「仙籍を削除したりはしません。少し下界で暮らしてごらんなさい。戸籍《こせい》を用意してあげましょう」
「どうして——あたしだけ、だめなんですか!?」
 黄姑の表情にはなんの色もない。ただ少しだけ、寂しそうな色に見えた。
「あなたは言葉が分からないのが苦しかったのでしょう? もう言葉は分かるのだから、あなたはどこででも生きていけるはず」
「洞主さまが……なにか言ったんですか」
 全身が震える。悲しみのせいか怒りのせいか、鈴にも分からなかった。
「いいえ。梨耀どのはわたくしに全てを任せてくださいましたよ」
「じゃあ、どうして……」
 黄姑は目を伏せる。
「あなたはもう少し、大人《おとな》になったほうがいいように思われるのです」
「大人って……」
 梨耀のもとに捕らえられて百年。それでなにが足りないというのだろう。
 黄姑は静かに鈴を見る。
「いきなり見ず知らずの異国に投げこまれれば辛《つら》いでしょう。言葉が通じなければ、なおさらですね。——けれども、鈴、言葉が通じるからといって、互いの考えていることが分かるというものでもないのです」
 鈴はただ呆然《ぼうぜん》と黄姑の顔を見つめた。
「なまじ言葉が通じれば、分かり合えないとき、いっそう虚《むな》しい。必要なのは相手の意を汲《す》む努力をすること、こうだと決めてかからずに、相手を受け入れてあげることなのです」
「……ひどい、そんな……」
「本当に辛かったら、そのときには戻っておいでなさい。とにかく一度、街に降りてごらんなさい。それからでも遅くないでしょう」
「そんな、あたしだけ……いまさら……っ」
 鈴は突っ伏す。期待しただけに落胆《らくたん》は深い。
 ——いいひとだと思ったのに。優《やさ》しいひとだと、そう思ったのに。このひとに仕《つか》えて暮らすなら、どんなに幸せだろうかとそう——。
 分からないのだ。故郷から流されて、右も左も分からない異国に投げこまれる苦痛がどれだけのものか。しょせんこの国に生まれて育ったひとには、鈴の悲しみは理解できはしない。
「やってみたいことがあればおっしゃい。わたくしで力になれることなら、手を貸してあげましょう」
 いまさらなにを、と唇《くちびる》を噛《か》み、鈴はふと涙に濡《ぬ》れた顔を上げた。
「景王に……会いたい」
 黄姑は首を傾ける。
「景王——?」
「あたし……お会いしてみたいんです。同じ蓬莱《ほうらい》の出身だから……」
 ああ、とつぶやいて、黄姑はわずかに眉《まゆ》をひそめた。
「同じ国の人間だもの、景王ならきっとあたしの気持ちを分かってくれる。采王《さいおう》には分からないわ。采麟《さいりん》にも分からない。この国で生まれたひとには、ぜったいに分からない。あたしがどんなに辛いかなんて」
 心からのいたわりと哀れみ。景王ならこんなひどいことはせずに、きっと鈴を助けてくれる。
 黄姑《こうこ》は少しのあいだ、考えるようにした。
「景王だって寂しいと思うんです。きっと故郷が懐《なつ》かしくて悲しいと思う。こちらのなにもかにもが分からなくて、とても辛《つら》いと思うんです。——こちらのひとには慰めてあげられないわ。同じ蓬莱《ほうらい》の人間にしか、ぜったいに分からない苦しみだもの」
「景王とは面識がないので便宜《べんぎ》ははかってあげられませんが。そう言うのなら慶《けい》まで旅ができるよう、わたくしが路銀《りょひ》と旌券《りょけん》をあげましょう」
 黄姑が言うと、鈴はぱっと顔を輝かせた。その無邪気な表情を黄姑は少し悲しく見る。
「行ってごらんなさい。……決して無益なことではないでしょうから」
「ありがとうございます!」
「ただ——これだけは覚えておいでなさい」
 黄姑は、涙に濡《ぬ》れた頬《ほお》をもう紅潮させて笑っている娘を見る。
「生きるということは、嬉《うれ》しいこと半分、辛いこと半分のものなのですよ」
「——はい?」
「人が幸せであるのは、その人が恵まれているからではなく、ただその人の心のありようが幸せだからなのです」
 鈴は黄姑がなぜこんなことを言い出したのか分からなくて、ぽかんとした。
「苦痛を忘れる努力、幸せになろうとする努力、それだけが真に人を幸せにするのですよ、蓬莱の子……」
「……はい」
 鈴はうなずく。
 ——確かに、そうだ。鈴が行《おこな》った幸せになるための闘い、その結果少なくとも梨耀《りよう》から解放されて、景王に会いにいくことができる。
「ええ、あたし、どんな逆境にも負けません」
 鈴は言って笑った。
「だって、苦労は慣れてますもん。辛抱《しんぼう》強いのには自信があるんです」
 どうしてだか、黄姑はわずかに憂《うれ》いを帯びた表情で目を伏せた。
 
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