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十二国記358

时间: 2020-08-30    进入日语论坛
核心提示:「蘭玉」 走廊から声をかけられて、蘭玉は顔を上げた。桂桂がぱっと立ち上がって衝立《ついたて》の向こうをのぞきこみ、すぐに
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「——蘭玉」
 走廊から声をかけられて、蘭玉は顔を上げた。桂桂がぱっと立ち上がって衝立《ついたて》の向こうをのぞきこみ、すぐに明るい声をあげて陽子の手を引いてきた。
「どうしたの?」
 訊《き》いたのは蘭玉で、遊ぶんだよね、と言ったのは桂桂である。
「少し話をしてもいいかな?」
 どうぞ、と笑って蘭玉は火鉢《ひばち》の上の土瓶《どびん》を手に取る。厨房《だいどころ》で沸かしてきたお茶をそうやって温めてあった。
「——そうか、今日はお客さまだから、授業がないのね」
 そう、と笑ってから、陽子は蘭玉の差し出した湯飲みを受け取る。
「あれは誰なんだ?」
「お客さま? 知らないわ。聞いてないもの」
 蘭玉が言うと、桂桂が袖《そで》を引っ張った。
「おねえちゃん、あのひとだよ。ほら、茶斑《ちゃまだら》の髪のひと。ぼく、あのひとから手紙をあずかったもん」
 ああ、と蘭玉はうなずいた。氏《し》を労《ろう》、と言ったと思う。黒髪に茶毛の斑の入った髪の男で、ときどき遠甫《えんほ》を訪ねてくる。どうやら誰かの使いらしいが、詳《くわ》しいことは蘭玉も知らなかった。
「労さんね。……じゃあ、あの気味悪いお客さんなんだわ」
「気味が悪い?」
「顔を隠しているのよ、いつも。ときどき遠甫を訪ねて来るの。まず労さんを使いによこすのよ。本人がやってくるのは必ず夜ね。それも遅くなってから。あのひとが来るときには遠甫が戸締まりをしなくていい、って言うから分かるの」
「どこの誰なんだ?」
「知らないわ。遠甫に訊いても絶対に教えてくれないし。……あたし、嫌《いや》なの」
 蘭玉が言うと、桂桂もうなずいた。
「——あの男が?」
「あいつ、きっと悪いやつなんだ」
 桂桂が言って、蘭玉を見る。蘭玉は軽く桂桂をたしなめた。
「そんなことを言うもんじゃないわ。——でも、遠甫はあいつが来ると、次の日、必ず沈んだ顔をするの」
「——なぜ」
「知らない。教えてくれないのよ。……それでよけいに心配なの。分かる?」
「それは——とてもよく分かる」
 
 しばらくの間、蘭玉たちと話をして、陽子は房間《へや》に戻った。ずいぶんと夜も更《ふ》けたというのに、書房《しょさい》にはまだ灯《あかり》が点《とも》っている。
「……班渠《はんきょ》」
「——ここに」
「あの男が帰ったら後をつけろ。どこに泊まっているか、調べてくれ」
 必ず宿にいるはずだ。この時間では門が閉じている。
「かしこまりまして」
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