鈴は清秀の身体を右から支える。清秀の目はいまに至るも治っていない。見えない、と言ったあの日以来、清秀の視野の右|端《はし》は欠けたままだった。
何度も足をもつれさせて転《ころ》びそうになりながら、石段を登る清秀と、それを支えきれず足を滑《すべ》らせそうになる鈴を見かねて、港の男が清秀を負《お》ぶってくれた。
息を切らせながら登った崖《がけ》、頂上から一望する広がる山野。崖のふちには細長く廬《むら》が広がっている。
——慶国《けいこく》和州《わしゅう》呉渡《ごと》。慶の北東部に広がる和州、そのさらに東の端《はし》。
男の背から降ろされて、清秀はその山野を見渡した。鈴はその手を握る。
堯天《ぎょうてん》に行こう。きっと景王が助けてくれるから。